武岡太朗
T.S.MarketingLAB
不動産ポータルサイト運営企業でマーケティングを担当していた経験を活かし、不動産市況・業界動向・エンドユーザーのトレンドについて、各種メディアでライターとして情報発信を行うほか、不動産会社のコンサル・業務課題ソリューションなども手掛ける。

前回の記事「『3C分析』を活用した投資戦略立案の方法?Part1?」では、3CのうちCustomer(市場・顧客)の分析について解説しました。part2の今回は、Competitor(競合物件)とCompany(オーナー自身および所有物件)の分析およびペルソナの設定について解説します。競合物件の把握と比較、自社物件やオーナー様ご自身の強みを把握・理解を図りそれらを踏まえたペルソナの設定によってマーケティング戦略を構築していきます。

Competior分析(競合物件を分析して差別化を検討する)

Customer分析によって投資する不動産物件のエリアが決定したら、次は当該エリアのCompetior分析(競合物件)について考えていきましょう。具体的には、所在地周辺で競合となりうる物件のリストアップ、それぞれの物件の築年数・設備/仕様・駅徒歩分数・専有面積・家賃などを投資する物件と比較し優位・劣位を見極めます。

競合物件との比較は、まずは自分で不動産ポータルサイトなどを活用して調べてみましょう。例えばsuumoやHome’sなどの不動産ポータルサイトで投資する物件の周辺で入居者を募集している物件の一覧を見ることができます。ポータルサイトによっては、当該エリアの間取り別の賃料水準の推移を公開していることもあるため、参考にすると良いでしょう。

また不動産投資会社の営業パーソンにヒアリングすることも重要です。ポータルサイトで調べておいた情報を営業パーソンに確認することで力量を測ることができます。さらに不動産会社には自社で扱った物件データに加えて他の不動産会社が扱った物件のデータも保有している場合もあるため、提供してもらうようにしましょう。

時間と予算がある場合は、実際に物件所在地へ足を運んでみることがおすすめです。自分が実際に住む物件を探す観点で物件周辺を歩いてみましょう。例えば「周辺にスーパーやコンビニはあるか」「どういった人が住んでいる街なのか」などを確認することが大切です。また周辺の競合物件の立地や外観などを確認し比較することで購入を検討している物件を客観的に評価することができます。

その際、現地周辺に建設中の物件が多いようであれば注意が必要です。周辺に多数の賃貸物件が建設予定となると過当競争による入居率低下のリスクが高まるため「周辺にどのような建物が建設予定か」についてしっかりと把握しておきましょう。ただし大規模再開発などで人口の流入が期待できる場合は話が別です。

Company分析(物件・自分の強みを最大限に活かす)

3C分析の最後は、Companyです。「物件の強みを何に見出すか」「それらをどのように活かしていくか」などについて考えることが必要です。例えば家賃や初期費用は周辺の相場と比較してどうか、設備・仕様(セキュリティ、水回り、インターネット環境など)は競合物件と比較して優劣を見極めます。

「オーナーが持っているアセットを活かす」という観点では「Company=自分」と考えることも必要です。オーナーの属性・職業・経験・趣味などのプロフィールを一度整理し「投資戦略においてどこに強みを見出すことができるか」を検討してみましょう。例えば都心在住で立地の良さを仕事やプライベートにフル活用している人は、自分の経験を入居のターゲットとなる人にあてはめると考えやすいです。

他にも「ペットを飼っている」「インテリアにこだわりがある」という人は、それぞれに自分の興味・関心事や不満に思っていることを所有される物件に反映させることも有効です。ただし自分の物件が競合物件に劣っているからといって必ずしも不利になるわけではありません。賃料重視のユーザーは、駅から遠い物件であっても検討対象とするケースもあります。

また閑静な住環境を望むユーザーは、周辺に商業施設が充実していることをそれほど重視しません。Companyの分析では、物件とオーナーの強みを発揮して競合物件との差異化を図っていくことがポイントです。しかし次の項目で設定する「ペルソナ」との兼ね合いで強豪に対して劣位だからといって必ずしも不利になるわけではないことも覚えておきましょう。

ペルソナの設定

「Customer」「Competitor」「Company」の分析が済んだらその結果を踏まえてどういった人物像(ペルソナ)をターゲットとするかについて具体化していきましょう。ペルソナは、ターゲットの人物像をできるだけ詳細に設定することで「マーケティング戦略の対象にどのようにアプローチしていくか」の戦略策定につながっていきます。

3C分析の結果に基づき所有する物件の入居者の属性、職業、性別、年齢、趣味など想定する顧客の人物像を具体的にイメージしていきます。例えば都心のオフィスに通勤する30代独身男性でIT企業勤務(コロナ禍で在宅勤務)をペルソナとして考えてみましょう。自宅が職場となるため「無償でWi-Fiを提供する」「静かに仕事ができる」といった点をアピールすることは有効です。

また「外出を避けて密を避ける」という意味では、都心物件なので「デリバリーできる飲食店の選択肢が豊富」「宅配ボックスの設置による非対面での受け取りができる」なども有効な訴求ポイントとなります。3C分析およびペルソナを設定することによって所有する物件の強み・競合の動向・入居者を知り周辺物件との差異化によって効果的な施策を講じることが期待できるでしょう。

まとめ

ここまで「3C分析」を活用した投資戦略立案の方法?Part2?としてCompetitor(競合物件)とCompany(オーナー自身および所有物件)の分析およびペルソナの設定について解説しました。ポイントを以下にまとめます。Competior(競合物件)の分析は、以下の3つが有効です。

* 不動産ポータルサイト
* 不動産投資会社の営業パーソンへの確認
* 物件現地の見学など

競合分析で把握したいポイントは以下の4つです。

* 家賃設定の水準
* 初期費用(敷金、礼金、フリーレント)
* 設備(セキュリティ、水回り、インターネット環境など)
* 競合物件の有無

また以下の2点についても押さえておきましょう。

* Company(所有物件、オーナーご自身)の分析は、物件・オーナーの強みの把握と整理が重要
* 3C分析の結果を踏まえて入居者のペルソナを設定しそのペルソナに対してどのようなマーケティング戦略を打つか検討する

3C分析については、さまざまな企業がビジネスの現場で活用しているフレームワークのため、書籍などでさまざまな成功事例が紹介されています。まずはそういった成功事例を参考に自分が所有したり所有を検討したりする物件に当てはめて検証してみましょう。不動産投資は、投資ですがどちらかというとビジネス的な側面があります。

3C分析を上手に活用して競合物件との差異化による効率的な投資を実現しましょう。