富裕層の資産運用に特化したプライベートバンクが日本にも広がりを見せています。海外と日本のプライベートバンクには、どのような違いがあるのでしょうか。そこで今回は、プライベートバンクのメリット・デメリットとともにプライベートバンクを持つ方法について紹介します。

プライベートバンクとは何か

富裕層の資産運用に特化した、プライベートバンクとは何か
(画像=phonlamaiphoto/stock.adobe.com)

プライベートバンクとは、富裕層に対して資産管理や資産運用、保全、資産の承継などを包括的に支援してくれる金融サービスのことです。プライベートバンク発祥の地はスイスといわれており、代表的な金融機関としては、「UBSグループ」「クレディ・スイス」などが知られています。顧客は、数億円以上の資産を持つ経営者などが多く資産運用のほかにも事業承継や相続対策などの相談内容はさまざまです。

どちらかというとコンサルティング的な役割を果たすこともプライベートバンクの特徴といえるでしょう。富裕層に特化したサービスのため、海外・国内ともに審査は厳しい傾向です。

海外プライベートバンクの現状

海外プライベートバンクは、歴史のある欧州が中心です。なかでもスイスやリヒテンシュタイン、ルクセンブルグなどが高い評価を受けています。世界の個人資産の3分の1が金融大国のスイスに集中している現実を考えると、プライベートバンクでもスイスがトップランナーになるのはうなずけるのではないでしょうか。預入資産は、米国、欧州、新興国と地域によってかなり開きがあるため、「どの国でプライベートバンクを持つか」によって用意するお金が異なってきます。

運用方針は、日本のプライベートバンクが「守り」を重視するのに対し、海外のプライベートバンクは運用ノウハウに優れているため、「増やすこと」を重視する傾向です。そのあたりが富裕層の人気を集める理由と考えられます。

国内プライベートバンクの現状

国内で初めてプライベートバンクの業務を行ったのは、1986年にシティバンクが事業を立ち上げたときです。しかしシティバンクは、2004年にマネーロンダリング(資金洗浄)などの不祥事が相次ぎ、金融庁から行政処分を受け日本から撤退します。その顧客をスイスのUBSが拾う形で日本に定着し、2009年にはクレディ・スイスが一度撤退したあとの再参入を果たしました。

日本でもスイス系のプライベートバンクが存在感を示しています。日本の銀行では、2005年に日本で初めての本格的プライベートバンク会社となる「株式会社みずほプライベートウェルスマネジメント」が設立されました。2020年現在、国内でプライベートバンキング事を行っている主な金融機関は、以下の通りです。

  • みずほ銀行
  • 野村證券
  • 大和証券
  • 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
  • 三井住友銀行
  • 三菱UFJ銀行など

国内プライベートバンクの必要預入資産は、海外と同様に最低でも1億円以上ともいわれており、なかには5億~10億円以上などの金融機関もあるため、差があるのが現状です。

海外プライベートバンクのメリット・デメリット

日本の富裕層は、なぜ海外プライベートバンクを利用するのでしょうか。日本プライベートバンク協会の見解によると、海外プライベートバンクには以下の4つのメリットがあります。

  • 日本が持つリスクから逃れて地政学的な分散を図れる。日本で管理監督されている金融機関とは別の国で管理監督されている金融機関を利用できる
  • 歴史ある海外プライベートバンクは、国内プライベートバンクよりも高い水準のサービスを提供している
  • 国内の金融機関が国内当局の情報開示要求で無条件に情報が提供されるのに対し海外ではいくつかの手続きを経なければならないため、守秘性に優れている
  • 世界の富裕層が受けているサービスと同水準のサービスを受けることができる

一方で海外プライベートバンクには、言葉の壁があることがデメリットです。現地の言語に加え他国語は英語がある程度のため、日本語は副次的に利用されるにとどまっています。法的拘束力があるのは、現地の公用語である点に注意が必要です。そのため言語に不安がある場合は、日本語が話せる担当者がいるプライベートバンクを探すのもよいでしょう。

例えば「UBS」「クレディ・スイス」「バンク・オブ・シンガポール」は、日本人向けのデスクを用意しています。また海外プライートバンクは、手数料が高いこともデメリットです。プライベートバンクにすべて運用を任せる一任勘定口座では、年間残高に対して約1%の手数料が目安になります。預入資産が数億円というレベルを考えると手数料も相当な金額になりそうです。

プライベートバンクによって異なりますが、運用利回りは2~10%を目指しており、高い手数料を払っても結果的に資産が増えます。約1%の手数料はデメリットとはいえないのかもしれません。

国内プライベートバンクのメリット・デメリット

国内プライベートバンクのメリット

富裕層向けのサービスが充実していることは大きなメリットです。資産状況の整理やポートフォリオの作成だけでなく相続対策、事業承継、M&Aから不動産売買まで多岐にわたる資産運用サービスを行っています。また日本の複雑な法務や税務に対応できることも強みです。税制に関する相談に応じられるのは、日本人の税理士に限られるため、海外のプライベートバンカーに相談することはできません。

そのため相続対策など法的な対応が必要な場合は、国内プライベートバンクに依頼したほうが無難です。

国内プライベートバンクのデメリット

海外のプライベートバンクに比べて利便性が低い点はデメリットです。日本では、銀行が証券会社の機能を持っておらず株式などを取引する場合は、系列の証券会社を通す必要があります。証券取引がワンストップ・サービスではない点で見劣りすることは否めません。日本国内では、ファイアーウォール規制によって銀行・証券・信託の顧客情報を共有できないため、外資系のプライベートバンクが行う場合も同規制を受けます。

プライベートバンクを持つには

では、プライベートバンクを持つにはどうしたらよいのでしょうか。プライベートバンクは、一般的な銀行口座と異なり誰でも開設できるわけではありません。公に条件や内容を告知しているところは少ないため、プライベートバンクの担当者と直接コンタクトをとる必要があります。海外のプライベートバンキングの場合、コンタクトをとるにはすでに口座を開設している知人や関係者を介するのが一般的です。

プライベートバンカーが来日した際に行うセミナーに参加して知り合うことで口座開設するケースもあります。口座開設には、事前審査があり審査にあたっては資産状況だけでなく、資産が形成された過程も問われることも少なくありません。なぜなら海外では、マネーロンダリングの問題を特に気にするからです。審査と並行して面談も行われ、銀行の経営哲学を聞いたり基本的な運用方針が確認されたりします。

多くの書類に個人情報などを記入かつ宣誓書にサインして書類の作成作業が終わると口座番号が与えられる仕組みです。また「自分の口座に資金を振り込む」というのが一般的な手順になっています。国内のプライベートバンクでは、「UBS SuMi TRUST ウェルス・アドバイザリー」のようにWebサイトで以下のように詳細を公開している会社もあります。

【対象になる顧客】(三井住友信託銀行ウェルス・マネジメント部よりサービスの提供)

  • 金融資産1億円以上の預入
  • 投資用不動産・ローンなどの相談をする顧客

【対象となる顧客】(UBSウェルス・マネジメントよりサービスの提供)

  • 金融資産2億円以上の預入

同社の「ウェルスマネジメントサービス」では、以下のような順番でサービスを進めることが特徴です。

  • 1理解&課題分析
  • 2検討&提案
  • 3合意&実行
  • 4検証&フォロー

それぞれの段階で専門家集団が顧客ごとに最善の資産運用を行います。富裕層の資産運用に特化したプライベートバンクは、普通の金融機関にはない高度なサービスを受けられることで今後も富裕層の注目を集めそうです。

※本記事はプライベートバンクの一例を紹介しており、コストや運用成績は金融機関によって異なります。