武井利明
住宅メーカーに約20年営業職で勤務。現在は住宅専門ライターとして住まいの選び方、土地の選び方、ローンを含めた資金計画、プラン、メーカー比較、リフォームなど、幅広いテーマで多数のメディアに執筆。人気動画サイトの住宅系動画脚本なども手がける。営業マン時代に培った知識と経験を生かし、これから家を建てる方の悩みや疑問、不安を解決する記事を得意としている。

海外不動産投資の広告は、豪華なイメージのものが多い傾向ですが投資としては安心なのでしょうか。もちろん投資となるため100%安全なものはありませんがその実態が不透明に感じる人も多いかもしれません。そこで本記事では、海外不動産投資が注目される理由とリスクについて解説します。

海外不動産投資が注目される理由

海外不動産投資が注目される理由は、主に以下の2つが考えられます。

・ 不動産市場が活況の地域へ投資できる
・ 投資先のリスク分散ができる

まずは、それぞれのメリットと注意点を解説します。

不動産市場が活況の地域へ投資できる

海外の不動産投資が注目される理由は、地価が上昇していたり人口が増加していたりするなど不動産市場が活発な国や地域へ投資できる点です。日本で不動産投資をする際により多くの収益を求め東京をターゲットとするのと同様でより高い利益を求める投資であれば当然の流れといえます。特に東南アジア諸国のように経済的発展が著しいエリアでは大きなリターンが期待できるでしょう。

しかし後述するように国が異なることでのリスクもありそれらを十分に理解したうえで投資する必要があります。

投資先のリスク分散ができる

投資先のリスク分散ができることも海外不動産投資が注目される大きな理由です。一つの投資先に資金を集中していると、その投資先の状況がダイレクトに投資家の資産運用に影響してしまいます。例えば大手企業の工場の従業員をターゲットとした賃貸物件に集中投資してれいば、工場の撤退によって一気に収益が失われる可能性もあるのです。

こうした事態を避けるためには、一つの投資先に偏るのではなく経済的に連動しにくいエリアに投資することが大切になります。リスクが分散されることで安定した資産運用を目指せるでしょう。日本の不動産市場が低迷している場合でも損失を最小限にできるのが海外不動産投資のメリットです。

海外不動産投資が行われている主な国や地域

実際に海外の不動産投資先として活発に投資が行われている国や地域を紹介します。

米国

米国は海外不動産投資先として安定した国の一つといえるでしょう。なぜなら米ドルが世界の基軸通過となっていたり経済状況が比較的良好であったりする点があるからです。株式や投資信託の投資を行っている人は、米国株式と日本株式をあわせ持つ人もいるでしょうがそれと同様のリスク分散対象の代表格といって良いでしょう。

また現地の日系企業や従業員を相手にする不動産仲介業者も多くそこを介して不動産投資ができることも有利な点です。現地の言葉が堪能で商習慣も理解している仲介業者は、海外不動産投資を行ううえで不可欠な存在ですが、米国であれば頼る先に困ることは少ないでしょう。地価はすでに高めで将来的に大きな収益を見込めるわけではありません。

しかし投資するうえでの環境が整った米国不動産は安心できる海外投資先の一つです。

英国

英国も米国と並び経済的な安定度が高く、リスク分散が目的の投資先として検討する価値がある国です。英国内では、ロンドンが経済の中心ですが、地価が高騰し利回りが低く必要な資金も多いため、英国第2の都市であるバーミンガムなどが投資先として検討されることもあります。ただし2020年末でEUを離脱し、今後の経済状況が不透明な部分は懸念材料の一つです。

これから不動産投資を行うのであれば、しばらく景気の動向を見てからのほうが良いかもしれません。

東南アジア

東南アジアのタイやベトナム、マレーシアなどは経済成長が活発で海外不動産投資先としてよく紹介され、実際に投資している日本人も多い傾向です。しかし東南アジアの不動産投資では「首都とそれ以外の地域の経済格差が大きい」という注意点があります。しかもその首都の中でも地域差が大きいため、単純に「首都」というだけで物件を選んでしまうのは早計です。

またこれから都市開発が進むことを見込み、先行投資を誘うケースも見られますが、思ったように発展せず収益が上がらない可能性もあります。さらに投資物件の供給過剰が起きていたり国によって不動産売買の手続きや海外送金のハードルが高かったりするなど、急速な経済発展のしわ寄せが見られる場合もあるのです。

海外不動産投資の中では、短期的に高い収益が見込める地域ですが十分にその国の特徴を理解したうえで投資するようにしましょう。

海外不動産投資の3つのリスク

海外不動産投資には、以下に紹介する3つのリスクがあります。国内の不動産投資とは勝手が異なる部分も多く、十分に情報を収集し投資先の国に精通した仲介業者と相談しながら進めることが重要です。

為替変動による損失

海外との取引のため、為替変動によって当初から見込んでいた利益が大きく減ってしまうリスクがあります。例えば年間で5万米ドルの家賃収入を見込んでいた場合、換算レートが1米ドル110円であれば年間550万円の家賃収入です。しかし円高となり1米ドルが100円になってしまえば年間500万円となり50万円も家賃収入が減ってしまいます。

一方で物件売却の観点では、例えば50万米ドルで物件が売れたとしてもレートが1米ドル110円であれば5,500万円、1米ドル100円であれば5,000万円となり高額な売買なために差額も大きくなりがちです。こうした点が海外不動産投資の収益が不安定とされる要因となり為替リスクを十分に理解したうえで投資する必要があります。

物件管理が難しい

物件管理は、現地の管理会社に全面的に委託することになります。しかし修繕を依頼してもスムーズに手配されなかったり家賃滞納を積極的に督促されなかったりするなど不動産管理に対する取り組みが日本と大きく異なるケースも少なくありません。また「言葉の問題で意思疎通が十分にできない」「問い合わせのレスポンスが遅い」など基本的なコミュニケーションの問題も発生します。

これらの点から日本と同様の丁寧な物件管理は難しく知らぬ間に物件に大きなトラブルが発生してしまうリスクもあるのです。手数料がかかっても現地の商習慣などを熟知した仲介会社を通じて物件管理を行うべきでしょう。

融資が利用しにくい

海外不動産投資への融資を行っている金融機関は、非常に限られ金利は高めになっています。また国内に所有している不動産を担保にすることが条件であったり購入する相手国が限定されていたりするなど国内の不動産投資ローンと比べ非常に利用しにくい状況です。現実的には「必要な資金を自己資金で用意する」「不足分を融資で調達する」といった資金計画になります。

途中の維持費も含めある程度の資金力がないと海外不動産投資は難しいかもしれません。

海外不動産投資に適した人とは

紹介してきた通り国内の不動産投資とはかなり勝手が違う海外不動産投資ですがはたしてどのような人が適しているのでしょうか。

購入や維持費を自己資金で用意できる人

借入先が少なくしかも融資条件も厳しいため、直接物件購入できるだけの自己資金がある人が海外不動産投資には適しています。仮に購入時に融資を利用しても運営中の税金や管理委託の手数料、物件の修繕費用などの維持費は現金で支払うため、やはり一定の資金力は必要です。

投資先の国や地域の事情に精通している人

海外不動産投資を行うには、投資先の国や地域特有の不動産事情や商習慣をある程度理解していることが求められます。この理解が浅いと物件管理や取引でのトラブルが発生しやすくなり大きな損失を引き起こす恐れも否めません。できる限りその国や地域の事情に精通した投資先を選びもし理解が不十分ならコミュニケーション力と現地の事情に明るい仲介業者に協力してもらう必要があります。

永住権取得やリゾート地での自己利用を目的とする人

海外不動産投資は、リスク分散のメリットがあるものの利回りが特別高いわけではなく運営の手間やリスクを考えると優れた投資とはいえない一面もあります。国によって異なりますが一定額以上の投資をすることで得られる永住権を目的としたりリゾート地であれば自己利用のために取得したりするなど投資以外の目的もあったほうが手間やコストをかけて海外不動産を所有する意味があるといえるでしょう。

海外不動産投資は投資以外の価値次第

海外不動産投資は経済的な発展があり人口も多い国や地域であればリスク分散の意味で投資する価値はあるかもしれません。ただしコミュニケーションの難しさや商習慣の違いからトラブルになることも考えられ実際に投資するにはある程度資金力が必要などハードルの高さがあります。現実的には、投資の収益を期待するよりもプラスアルファの価値をその不動産に見いだせるかで判断が分かれそうです。

物件のある国や地域に魅力を感じるかなど収益以外のメリットも十分に考慮したうえで投資すべきか考えるようにしてみましょう。