音楽大学に通う学生にとって自宅で楽器を演奏できないことは、大きなハンデとなりかねません。そこで最近注目されているのが、音大生をはじめ楽器を演奏するユーザーの需要を取り込める「防音マンション」です。区分所有マンションであっても防音設備を施すことはできます。しかしどのようなリフォームが必要で費用はどれくらいかかるのでしょうか。

マンションで多い騒音トラブル

音大生の需要を取り込める、防音マンションのメリット
(画像=Pixel-Shot/stock.adobe.com)

マンションのトラブルで多いのが「騒音」の問題です。国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」によると2018年度の居住者間のマナーをめぐるトラブル内容で最も多かったのは「生活音」(38.0%)でした。この調査は5年ごとに行われていますが、ほかのトラブルがすべて2013年度より減ったのに対して生活音だけは前年度(34.3%)から増加しました。

いかに騒音の問題が居住者にとって悩みになっているかが理解できるのではないでしょうか。

楽器演奏の騒音は意外に大きい

マンションの騒音で代表的なのが楽器演奏です。まず環境基本法第16条第1項の規定に基づく環境基準を確認しておきましょう。この基準は、生活環境を保全し人の健康に資する上で望ましいとされる数値を示しています。その数値は、都道府県知事(市の区域内については市長)が指定する地域ごとに以下の表のように定められています。

地域の類型 基準値
昼間 夜間
療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域 50デシベル以下 40デシベル以下
専ら住居の用に供される地域

主として住居の用に供される地域

55デシベル以下 45デシベル以下
相当数の住居とあわせて商業、工業等の用に供される地域 60デシベル以下 50デシベル以下

※参考:環境省「騒音に係る環境基準の評価マニュアル」

楽器専門Webサイト「カナデルームMAGAZINE」の調べによると、ホルンの音量(約110デシベル)が隣の部屋に聞こえる音量は、RC造マンションで60デシベル、木造住宅で75デシベルとなっています。では、楽器を演奏するとどの程度の音量になるのでしょうか。防音工事業者「サイレントデザイン」の調査による主な楽器の音量は以下の通りです。

音量 楽器名 生活音で該当するレベル
130デシベル 生ドラム、パーカッション、コンガ 落雷、聴覚器官にダメージが大きいレベル
120デシベル テナーサックス ジェット機200メートル、新幹線鉄橋、F1コース
110デシベル アルトサックス、ピアノ、金管楽器 ジェット機600メートル、自動車の警笛
100デシベル ファゴット、ハープ 地下の構内、地下繁華街の音、犬の声
90デシベル クラリネット、フルート、ヴァイオリン 地下鉄車中、パチンコ店内、滝の音
85デシベル フォークギター、オーボエ、チェロ 大型トラックのモーター音
80デシベル クラシックギター ボーリング場、機械工場の音、大型道路

※参考:サイレントデザイン「ピアノ・楽器・生活音の大きさと防音室」

すべての楽器が環境基準の数値を大きく超えています。そのため音大生が大学から帰宅する夕方以降に楽器を弾くのは難しいマンションもあるでしょう。そこで音楽大学があるエリアで需要が多いのが防音マンションです。

防音マンションとは何か

防音マンションとは、建物の構造や設備の防音性を高めたマンションのことで一般的には楽器演奏も可能です。防音マンションには、大きく分けて以下の3つのタイプがあります。

楽器演奏可の防音マンション

「ピアノ可」という物件はありますが、専用の防音室がない場合があります。一般的な防音対策しかとっていないため、ピアノを弾ける時間帯が制限されている物件も少なくありません。楽器の種類も「ギター、ピアノのみ可」など特に音の大きいドラムやサックスなどは弾けないケースもあり、楽器によって可不が分かれることが予想されます。

防音性能が高い24時間楽器演奏可能マンション

24時間楽器演奏が可能な、防音室を備えたマンションもあります。楽器演奏の自由度が高いことから、音楽大学の近くにあれば確実に音大生の需要を取り込めそうです。

共用の防音室がある防音マンション

各戸ではなく共用の防音室を備えたマンションもあります。管理人室で予約して使用する形にすれば各戸に備えるよりも低いコストで楽器演奏可のマンションにすることが可能です。

防音マンションのメリット

防音マンションのメリットは、部屋全体に防音設備を施している場合、防音性が極めて高いことです。マンションでは、楽器演奏以外でも構造上の問題で生活音が壁や床を伝わって響く場合があります。防音マンションでは、個別に響く「固体音」も構造に工夫を凝らすことで音を伝わりにくくすることが可能です。

マンションのトラブルで最も多い騒音問題のリスクを回避できることは、オーナーにとって大きなメリットになるでしょう。防音マンションでは、逆に外から聞こえる音も遮音してくれるメリットがあります。楽器演奏ができるだけでなく「静かに暮らせる」という点も物件の大きな魅力の一つです。防音マンションは、鉄筋コンクリートで造られている物件が多いため、耐震・耐火の点でも安心できるでしょう。

防音マンションのデメリット

防音マンションのデメリットは、防音設備にするコストがかなり高額となることです。コストがかかっている分、一般の物件よりは高めの家賃に設定しなければなりません。防音マンションは、音楽大学や音楽専門学校のあるエリアに多いため、一般の物件に比べて需要が限られることもデメリットです。楽器を演奏しない人にとっては、家賃が割高に感じるかもしれません。

また防音設備を施したとしてもまったく無音になるわけではなく、わずかな音の漏れは聞こえます。

防音マンションにするための費用はどれくらい?

では、防音マンションにするにはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。防音工事専門Webサイト「マンション防音工事見積ナビ」によると防音マンションにするには、以下のような工事が必要です(工法・費用などは業者により異なる場合があります)。

  • 防振ゴム重量床:最適な防振性を持った床を作る工法
  • 防振根太:根太とは床板を受ける横木のことで防振ゴム重量床よりは安価
  • 防音下地材:防湿遮音シートや遮音下地パネルなどを使って行う壁の防音対策
  • 防音換気口:防音効果のある換気口に交換
  • 防音ガラス:2枚以上のガラスで特殊中間膜を挟み込んだ合わせガラス
  • 二重サッシ:現在ある窓の内側にもう1枚窓をつけて二重サッシにする
  • 遮音カーテン:窓に遮音カーテンをつける

マンション防音工事費用の相場は、以下の表の通りです。

楽器名 4.5畳 6畳 8畳 10畳
ピアノ室 180万~230万円 200万~250万円 230万~300万円 270万~380万円
ドラム室 200万~280万円 250万~350万円 350万~450万円 380万~600万円

※参考:「マンション防音工事見積ナビ」

上記は、部屋全体のリフォームの例ですが、もう少し安い費用で防音マンションにする方法として防音室を設置する方法もあります。防音室とは、部屋の一部に防音加工を施したボックス型の演奏専用部屋を設置する防音システムです。最大手ヤマハの「アビテックス」の例では、部屋の計上に合わせて広さや音場を設計できる「自由設計」と手軽に設置できて移設も可能な「定型タイプ」があります。

設置するための費用は、以下のA~Cのようなシミュレーションによって金額が変わります。

楽器 種類 階層 広さ タイプ 時間 価格(税抜き)
A アップライトピアノ マンション 2階以上 6畳 定型タイプ 夜9時まで使用 150万円
B グランドピアノ~C3 マンション 1階 8畳 定型タイプ 夜9時まで使用 175万円
C グランドピアノ~C3 マンション 1階 8畳 自由設計 夜9時まで使用 393万3,000円

アップライトピアノよりもグランドピアノのほうが価格は高い傾向です。また同じ大きさのグランドピアノでも自由設計にすると定型タイプの倍以上の費用がかかります。防音マンションは、音楽大学があるエリアであれば確実に需要が見込めるでしょう。しかし、ここまで確認したようにかなりの費用がかかります。

リフォーム後の家賃を想定しながら費用対効果を考えて、納得できれば導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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