丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

先行き不透明な時代において、入居者が決まっていない状況の新築マンションへの投資は未知数です。中古マンションは、盛業中かつすでにコミュニティができあがっているため、空室リスクは低く安全性が高いといえるでしょう。本記事では、土地の担保価値が高く銀行融資が受けやすい中古マンション1棟投資に注目してみます。

先行き不透明な時代に有効な、中古マンション1棟投資

新型コロナウイルスは、不動産市場にも大きな影響を与えています。三鬼商事株式会社の調査によると、2021年1月の東京ビジネス地区のオフィス空室率は4.82で前月より0.33ポイント悪化。感染が拡大する前の2020年1月が1.53%だったので、影響の大きさが分かります。テレワークの普及や東京都心以外への分散などが原因と考えられますが、コロナ禍で先行き不透明な状況は当分続きそうです。

不況下でもあり賃料の高い新築マンションの需要が減退する可能性があることを考えると、所有地にマンションを建設しての新築マンション1棟投資はリスクが大きいといえるでしょう。そこで注目したいのが中古マンション1棟投資です。オフィス空室率の悪化とは逆に、分譲マンションの賃料は安定的に推移しています。

株式会社東京カンテイの「市況レポート」によると、2021年1月の首都圏分譲マンション賃料は1平方メートルあたり3,198円で前月比+0.9%と微増でした。2020年1月の賃料が1平方メートルあたり2,874円であったため、コロナ前よりもむしろ上昇しているのは意外と感じる人もいるのではないでしょうか。しかしオフィスと違い、居住用不動産には削減するという要素がありません。

需要が一定していることから不況の影響を受けにくいのが要因と考えられます。中古マンション1棟投資には心強いデータです。

1棟マンションは銀行融資が受けやすい

中古マンションとはいえ、1棟の購入資金を自己資金だけで賄うのは難しいでしょう。そのため銀行融資が必要になります。マンション1棟所有であれば土地の担保価値が高いため、銀行融資が受けやすい傾向にあります。建物は築年数の経過にしたがって価値が下がっていく傾向にありますが、土地の価値は築年数の影響を受けません。

そのため審査を通しやすくするには、好立地の物件を選ぶことが重要です。必要な頭金は金融機関によって異なりますが、最低、物件価格の10%必要なケースが目立ちます。なぜなら、銀行は土地の担保価値を中心に評価し建物の価値は評価されにくいため、担保価値が購入資金に満たない場合があるからです。そこで、用意した自己資金を頭金に充てられれば、融資が通る可能性が高くなります。

マンションとアパートの比較では、銀行融資ではマンションのほうが有利になるといわれています。なぜならマンションはアパートに比べて駅に近い物件が多く、立地条件がよいからです。賃料の下落もアパートに比べマンションのほうが緩やかな傾向があります。構造上の問題では、アパートは木造が多く法定耐用年数が22年なのに対してRC造のマンションは47年と長いことも有利なポイントです。

融資の金利もマンションのほうが低い傾向のため、総合的に判断すると1棟投資ならマンションのほうが有利といえるでしょう。

中古マンション1棟投資のメリット

中古マンション1棟投資には、主に以下の3つのメリットがあります。

盛業中かどうかを確認できる

新築マンションの場合は「どの程度の入居者が見込めるか」についてある程度の予測はできますが、フタを開けてみなければ分からない部分もあります。その点、中古は稼働しているため、事前に入居状況を確認して購入することが可能です。マンション全体のコミュニティもできあがっているため、管理の状況を現地で確認できることも安心感があります。

稼働の状況は表札からも分かりますが、仲介する不動産会社に聞けば入居者の状況は教えてくれるはずです。

空室リスクが少ない

次に空室リスクが少ないことも大きなメリットです。区分所有の場合は、空室が出れば賃料収入はゼロになります。しかし1棟所有では、10戸のうち1戸空室が出ても影響は10分の1です。すべてが空室になることは考えにくいため、収入を絶たれることがない点で安心といえるでしょう。また区分所有の場合は同一マンション内の物件と価格競争が起きますが、1棟所有であればその心配もありません。

大規模修繕をオーナーの判断で行える

物件が老朽化した場合、大規模修繕をオーナーの判断で自由に行うことができることもメリットの一つです。区分所有では、居住者における5分の4(80%)以上の賛成が必要で、下回ると大規模修繕を行うことができず老朽化が進むリスクがあります。経営の自由度が高いことも1棟所有の大きなメリットで、不動産管理会社もオーナーの判断で変えることができます。

中古マンション1棟投資のデメリット

主に以下の点がデメリットと考えられます。

・ 空室が増えた場合のキャッシュフローが心配
・ 修繕費がかかる時期が新築よりも早く来る

中古マンション1棟投資におけるデメリットは「1棟物件は価格も高いため、キャッシュフローに不安が生じること」です。順調に入居者を確保できれば毎月の家賃からローンを返済することができますが、空室が増えるとローンの返済額が家賃収入を上回るリスクがあります。あらかじめ「どの程度の空室まで許容できるか」についてしっかりとシミュレーションしてから購入することが大事です。

さらに中古マンションは築年数の経過により、修繕箇所が次第に増えてきます。新築マンションに比べると「修繕費がかかる時期が早く来る」という点もデメリットです。大規模修繕の可能性も考慮し毎月の家賃収入からきちんと修繕積立金を積み上げておく必要があります。

中古マンション1棟の収益はどれくらい?

では中古マンション1棟を経営した場合、どれくらいの収益が見込めるのでしょうか。実際に盛業している物件を例に見てみましょう。インターネットで売り出している物件から東京都心5区の新宿区にある物件の収支例は以下の通りです。

【物件収益例】
所在地 東京都新宿区高田馬場
総戸数 3階建てマンション 9戸
築年数 4年
販売価格 2億3,500万円
年間収入 1,228万5,000円
表面利回り 5.22%

この収益例は、満室を想定した表面利回りです。そこでローン支払額と諸経費を差し引いた実質利回りを計算してみましょう。高額な物件のため、頭金を20%(4,700万円)入れて1億8,800万円のローンを返済期間30年、金利2.0%で組んだものとして計算すると以下のようになります。

年間収入 1,228万5,000円
年間ローン返済額 833万8,620円
年間諸経費 60万円
実質利回り 1.42%

実質利回りは1.42%と低めですが、年間で約335万円の手取り収益が期待できます。注目すべきは毎月のローン返済を行ったうえでその金額が残ることです。物件は、ローンの支払いが終わると純資産になり売却して現金化することもできるため、ローンの返済は貯金をしているのと同じと考えることもできます。

1棟投資の魅力は、ローンの返済が終わったあとに残る資産額の大きさです。もちろんローンが完済する30年後となれば物件の価値は下がります。仮に30%減額しても1億6,450万円程度の価格で売れる可能性はあります。頭金の4,700万円を差し引いても1億円以上残るのは十分な成果といってよいでしょう。個人も企業も厳しい状況に置かれていますが、コロナがおさまるまでには相当な期間を要する覚悟が必要です。

不透明な状況下における賃料の下落が少ないマンション経営は、リスクが低い数少ない事業の一つといえます。資産としても大きくなる中古マンション1棟投資は、コロナ禍で先行き不透明な時代には適した投資方法といってよいでしょう。