大西 勝士
フリーランスの金融ライター(AFP、2級FP技能士)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。

マンション経営では、物件の取得費用をはじめさまざまな初期費用がかかります。また物件を取得して終わりではなく維持費や売却費用も必要です。安定した利益を得るためにマンション経営でかかるコストについて確認しておきましょう。

マンション経営で必要な初期費用

マンション経営でかかる主な初期費用は、以下の通りです。

物件の取得費用

投資用マンションを取得するための費用です。物件価格は、立地や築年数などマンションの状態に左右されます。地方の中古マンションであれば数百万円程度で購入できる物件もありますが、都内の築浅物件の場合は2,000万~3,000万円程度かかることも少なくありません。ただしマンション経営では、一般的な投資と異なり金融機関の融資が利用できるため、まとまった手元資金を用意せずに購入することも可能です。

仲介手数料

不動産会社の仲介で物件を購入する場合は、仲介手数料がかかります。宅地建物取引業法により仲介手数料には上限が定められており400万円を超える物件は「売買価格×3%+6万円+消費税」です。例えば物件価格が2,000万円の場合は、仲介手数料(税込み)は72万6,000円(2,000万円×3%+6万円+消費税6万6,000円)となります。

ただし不動産会社が売主で仲介取引ではない場合は、仲介手数料はかかりません。

不動産取得税

不動産取得税は、不動産を取得したときに1回のみ課税される税金です。税額は、取得した不動産の価格(課税標準額)に一定の税率を掛けて計算されます。購入時に支払うのではなく購入してから半年~1年後に納付書が届くため、納税資金を準備しておくことが必要です。

登記費用

登記費用は、購入した投資用マンションにかかる登録免許税や登記手続きを委任した司法書士への報酬です。ワンルームマンションの場合は、10万円程度が目安となります。また融資を利用して購入する場合は、抵当権を設定する費用もかかるため、物件購入前に不動産会社へ「登記費用がいくらかかるか」について確認しておきましょう。

印紙税

物件を取得する際は、契約金額に応じて不動産売買契約書に収入印紙を添付する必要があります。例えば物件価格が「1,000万円超5,000万円以下」の場合、軽減措置後の金額で印紙税は1万円です(2022年3月31日まで)。また融資を利用する場合は、金銭消費貸借契約書にも収入印紙が必要です。借入金額が「1,000万円超5,000万円以下」の場合、印紙税額は2万円となります。

事務手数料、ローン保証料

融資を利用する場合は、金融機関の事務手数料や保証会社の保証料がかかる場合があります。事務手数料はローンを組むにあたって金融機関に支払う手数料、保証料は返済が困難となった場合に備えて保証会社に支払うものです。手数料体系は金融機関によって異なるため、契約前に確認しておきましょう。

火災保険料、地震保険料

マンション経営では、火災や地震などで建物が損壊するリスクに備えて保険に加入する必要があります。火災保険のみでは、地震が原因の火災が補償対象外となるため、必ず地震保険にも加入しておきましょう。国が基準としている地震保険は単体では加入できないため、火災保険とセットで加入します。ワンルームマンションの場合、保険料は年間1万円程度が目安です。なお、民間の保険としては、地震保険単体で加入できるものもあります。

その他費用

マンション経営では、以下の費用も初期費用に含まれます。

* 印鑑証明書などの発行手数料
* マンション経営の知識を身につけるための書籍代
* 不動産会社や物件の調査費用(交通費など)

マンション経営にかかる維持費

マンション経営でかかる物件購入後の主な維持費は、以下の通りです。

管理費・修繕積立金

マンションは、建物管理会社に支払う管理費と大規模修繕工事などに備える修繕積立金を毎月支払う必要があります。管理費・修繕積立金の金額は利回りに影響するため、物件購入前に金額を確認しておきましょう。修繕積立金が不足している物件は、将来値上がりする可能性があるので注意が必要です。

賃貸管理費用

入居者募集や契約手続き、家賃の回収、原状回復、クレーム対応などの賃貸管理を依頼するための費用です。自主管理にすれば費用を抑えることができますが、時間と手間がかかるため賃貸管理会社に依頼するのが一般的といえるでしょう。料金体系は会社によって異なりますが、家賃の5%程度が目安となります。

ローン返済(元本と利息)

金融機関の融資を利用して物件を購入する場合は、借入金額に応じて毎月ローンの返済が生じます。ただし返済額のうち経費に計上できるのは利息のみです。元本部分は経費とはならない点に注意しましょう。マンション経営では、家賃収入からローン返済を行うため、毎月のキャッシュフローがマイナスとならないような収支計画を立てることが大切です。

固定資産税・都市計画税

固定資産税は、不動産の所有者に課税される税金です。毎年1月1日現在の所有者が納税義務者となり市街化区域内に所在する物件については都市計画税も課税されます。固定資産税・都市計画税の税額は、物件購入前に不動産会社に確認しておきましょう。

所得税、住民税

マンション経営で利益(不動産所得)が生じた場合は、所得税・住民税が課税されます。不動産所得は、総合課税の対象となるため、事業所得や給与所得などと合計して税額を計算することが必要です。所得税率は5~45%で所得金額が大きくなるほど税率も上がる仕組みとなっています。住民税率(所得割)は一律10%です。

その他費用

マンション経営では、退去が発生したときの原状回復費用、次の入居者を募集するための費用(賃貸管理費用に含まれるケースもある)などもかかります。また築年数が経過した物件は、資産価値の向上や空室リスク軽減のためにリフォームが必要になるケースもあるでしょう。

マンション売却でかかる費用

マンション経営は、家賃収入を得られるのが魅力ですが利益を確保するには売却について検討しておくことも大切です。マンション売却でかかる主な費用は以下の通りです。

仲介手数料(仲介で売却する場合)

投資用マンションの売却方法は「買取」と「仲介」の2つがあります。買取は、不動産会社に買い取ってもらう方法、仲介は不動産会社に買い手を見つけてもらう方法です。仲介の場合は、仲介手数料がかかります。仲介手数料の上限は、購入時と同じく「売買価格×3%+6万円+消費税」(売却金額が400万円超の場合)です。

抵当権抹消登記の費用

ローンが残っている投資用マンションを売却する場合は、抵当権抹消登記を行う必要があります。抵当権を抹消する際は、登録免許税と手続きを委任する司法書士への報酬がかかり相場は3万円程度です。

印紙税

投資用マンションを売却するときは、不動産売買契約書に添付する収入印紙が必要です。印紙税額は、物件を購入するときと同額で、売却金額が「500万円超1,000万円以下」なら5,000円、「1,000万円超5,000万円以下」の場合は1万円です(どちらも軽減後の金額。2022年3月31日まで)。

譲渡所得税

投資用マンションの売却金額が帳簿価額を上回り譲渡所得が生じる場合は、譲渡所得税(所得税・住民税)がかかります。税率は、売却した年の1月1日現在で所有期間が5年以下の場合は39%(短期譲渡所得)、5年を超える場合は20%(長期譲渡所得)です。(復興所得税を含まず)物件の所有期間によって税率が異なるため、注意しておきましょう。

譲渡所得税の負担を抑えたい場合は、所有期間が5年を超えてから売却を検討するのが賢明です。

マンション経営をはじめる前にコストについて知っておこう

マンション経営では、さまざまな初期費用・維持費がかかり売却時にも費用がかかります。安定した利益を確保するには、しっかりとした収支計画を立てたうえで物件を購入することが大切です。マンション経営をはじめる前にコストについて理解を深めておきましょう。