丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

金(ゴールド)は、不動産と並ぶ現物資産で相場の上昇が続いています。世界的な金利低下や先行き不透明な経済状況から現物資産の金に世界のマネーが流入しているのが大きな要因です。この流れに乗って金へ投資するにはどのような方法があるでしょうか。代表的な4つの投資方法について紹介します。

金相場の上昇が続いている

金相場は、年次ベースで1999年の917円を底に一貫して上昇を続け、2020年に7,063円の史上最高値を付けています(田中貴金属工業の取引価格)。21年にわたり下値を切り上げながら上昇を続けていることは、現物資産としての金の強さを証明する動きといえるでしょう。金相場が強いのは、以下のような3つの理由が考えられます。

金の希少性

金の埋蔵量には限りがあり、これまでに採掘された金の量は「オリンピック競技用プール3.8杯分(約18万トン)でしかない」といわれています。同時に残っている埋蔵量も少なくなっているため、希少性が増しているのです。

リスクヘッジ資産として世界中のマネーが金に流れている

地政学リスクに対しては、昔から「有事の金」といわれているように国際的な緊張感が高まる出来事があると、安全資産の金が買われる傾向です。またインフレリスクにも強く紙幣の価値が下がるとモノの代表格である金の価格が上昇します。

世界的な金利低下

金は、債券のように金利が付かないため、所有しているだけではインカムゲインが発生しません。そのため一般的には金利が上昇すると金融資産に資金が流れることから、金の価格は下落するといわれています。ところがゼロ金利に近いような金融情勢から金のデメリット部分がなくなり、相対的に金の魅力が増していると考えられます。

では、金に投資する具体的な方法について見てみましょう。

投資法1:趣味にもなる金貨購入

昔からある金のオーソドックスな投資方法がインゴッド(金地金)での購入です。しかし金地金の状態で自宅に保管すると盗難リスクがあります。一方で銀行の貸金庫や貴金属店の保管サービスを利用すれば安全性は高まりますが、管理コストがかかってしまう点がデメリットです。そこで自宅で保管が容易な商品として人気があるのが「金貨」。

金貨は、コイン収集の一環としてコレクション用のアルバムなどに収めれば目立たずに保管することが可能です。金貨なら500グラム未満の金地金にかかるバーチャージのような手数料がありません。金貨の代表的な銘柄として「メープルリーフ金貨」という名前は聞いたことがあるでしょう。金貨を購入できる単位は「1オンス」「2分の1オンス」「4分の1オンス」「10分の1オンス」の4種類です。

田中貴金属工業の取引におけるメープルリーフ金貨の価格は以下の表のようになっています。購入した店頭小売価格を買取価格が上回るようになれば売却して利益を得ることも可能です。売りと買いの価格には、ある程度の開きがあるため、短期間で利益をあげるのは難しいでしょう。金貨の収集を楽しみながら長期的な視点で値上がりを待つ投資スタンスが適した商品といえそうです。

▽金貨価格表(田中貴金属工業 2021年2月2日午前9時30分公表時点)

コイン名称 サイズ 店頭小売価格(税込み) 店頭買取価格(税込み)
ウィーン金貨ハーモニー
メイプルリーフ金貨
1オンス
2分の1オンス
4分の1オンス
10分の1オンス
22万9,057円
11万6,710円
6万379円
2万4,724円
20万7,841円
10万3,717円
5万1,464円
2万632円

出典:田中貴金属工業

投資法2:着実に増やす純金積立

毎月決まった金額を投資したい場合に便利なのが「純金積立」です。積立金額は自由に設定できます。毎月同じ金額を購入するため、金価格が高いときには少なく購入し安いときには多く購入することが可能です。これは「ドルコスト平均法」を応用した投資法で、結果的に平均購入単価を抑えることができます。

毎回購入するタイミングを気にしなくてよいため、手軽な投資法といえるでしょう。購入代金は、金融機関の口座から引き落とされるため、1度設定すればあとは自動で着実に金資産を増やすことができます。

投資法3:株と同じように購入できる金ETF

株式投資を行っている人が投資しやすいのが「金ETF(上場投資信託)」です。金ETFとは、金価格に連動して価額が変動する投資信託のことをいいます。東京証券取引所に上場しており注文方法は個別株と同じなので非常に簡単です。株式と違うのは売買単位で、株式が100株単位なのに対し金ETFは1口または10口が購入単位です。

代表的な銘柄である「NEXT FUNDS金価格連動型上場投信」の商品概要を見てみましょう。

【金ETF銘柄の一例】
・ 商品名 1328 NEXT FUNDS金価格連動型上場投信
・ 売買単位 10口
・ 1口価額 4,970円(2021年2月1日終値)
・ 信託報酬 0.5%(税抜き)
・ 純資産総額 66億2,000万円(2021年2月1日現在)

売買単位が10口のため、4万9,700円から購入できます。金の保管料などはかかりませんが、売買手数料と信託報酬がかかります。現物よりは少ないコストで取引できるのがメリットです。

投資法4 レバレッジ取引ができる金先物

金は、先物取引を行うこともできます。先物取引の魅力は、少ない資金で大きな金額を動かせるレバレッジ取引が可能なことです。価格は1グラム何円で表示され倍率1,000倍の1キログラム1枚の単位で取引されます。例えば金相場が1グラム6,000円の場合、1枚購入すると600万円のポジションを持つことになるわけです。

差し入れる証拠金は、定期的に見直しが行われ2020年8月3日現在で24万円です。24万円の証拠金で600万円の取引をする場合は600万円÷24万円で25倍のレバレッジを効かせた計算になります。「金先物取引」は、大阪取引所で行われており決済期限は最長1年後の偶数月です。例えば6,000円の価格の金を今後値上がり確実と見込んで1枚60万円で購入したとします。

1年後の満期日に7,000円に値上がりしていた場合は(7,000円-6,000円)×1,000=100万円の利益です。逆に5,000円に値下がりした場合は100万円の損失となります。一定以上の損失を防げる「ロスカット制度」があるため、投資額が大きい場合は利用すると安心して取引できるでしょう。

金投資商品の購入場所は?

最後に金関連商品の購入場所や購入方法についてまとめておきます。

金貨

購入できる場所は多く貴金属店や百貨店、鉱山会社、商品取引会社、通信販売などで購入できます。ただし取り扱っている銘柄は購入場所によって異なる場合があるため、事前にホームページで確認するとよいでしょう。

純金積立

証券会社や鉱山会社、商品取引会社などで申し込むことが可能です。購入には手数料や会社によっては年会費がかかります。積立金額は1,000~3,000円程度から設定できます。

金ETF

証券会社で購入できます。証券コードが付いているため、国内株式と同じ要領で注文することが可能です。

金先物取引

証券会社や商品先物会社などで行うことが可能です。普通の先物取引のほかに10分の1の資金で取引できる「金ミニ」もあります。証券会社の場合、取引を始めるには先物・オプション取引の専用口座を開設することが必要です。

金への4つの投資方法について見てきましたがコロナ禍で先行き不透明な経済状況の中、現物資産の金の価格上昇はまだ続くことが予想されます。不動産投資に加えて分散投資として金をポートフォリオに組み込むのも選択肢の一つといえそうです。