大西 勝士
フリーランスの金融ライター(AFP、2級FP技能士)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。

オーナーチェンジ物件は、不動産投資初心者でも投資しやすい物件です。オーナーチェンジ物件には、多くのメリットがある一方でデメリットや注意点もあります。物件を購入してから後悔することがないようにその特徴を理解しておくことが大切です。今回は、オーナーチェンジ物件のメリット・デメリット、注意点について詳しく解説します。

オーナーチェンジ物件とは

オーナーチェンジ物件とは、すでに入居者がいる投資用不動産のことです。入居者との賃貸借契約がそのまま新しいオーナーに引き継がれるため「オーナーチェンジ」と呼ばれます。オーナーチェンジ物件は、購入後すぐに家賃収入を得られるのが魅力です。不動産投資では、退去が発生し新たな入居者を募集する場合、リフォーム費用が必要となります。

また入居者を探すための営業活動や契約手続きなど時間や手間もかかりがちです。しかしオーナーチェンジ物件であればこれらの費用や時間を節約できるメリットがあります。

オーナーが投資用不動産を売却する理由

投資用不動産のオーナーは、なぜ家賃収入を得られる物件を売却するのでしょうか。売却理由は、オーナーによって異なりますが主な理由を3つ紹介します。

まとまったお金が必要になった

子どもの教育費やマイホーム購入の頭金など急にまとまったお金が必要になって売却するケースです。手元資金でお金が足りない場合は、所有不動産を売却すればまとまった資金を準備することができます。病気やケガになどで退職し収入が減少したことでローン返済が厳しくなり物件を手放さざるを得ないケースも考えられるでしょう。

所有物件の入れ替え

複数の物件を所有する不動産オーナーの場合、ポートフォリオを見直して物件の入れ替えを行うことがあります。例えば賃貸経営を安定化させるために築年数の古い物件を売却し売却代金を新たな物件購入の頭金として使うケースです。例えば今は問題なく家賃収入を得ることができたとしても長期的には物件を入れ替えたほうが有利と判断して所有物件を売却することがあります。

修繕積立金の値上げ

所有中の投資用マンションで修繕積立金が値上がりし所有を続けることに不安を感じて売却するケースです。マンションを健全な状態に保つには、定期的な修繕やメンテナンスが欠かせません。しかし修繕積立金が不足すると必要な修繕を実施できず資産価値が下がる恐れがあります。そのため修繕積立金の値上げ実施や積立金不足が分かった段階で物件を手放すオーナーもいるのです。

オーナーチェンジ物件のメリット

オーナーチェンジ物件に投資する主なメリットは、以下の4つです。

購入後すぐに家賃収入を得られる

オーナーチェンジ物件は、購入後すぐに家賃収入を得られるのが最大のメリットです。不動産投資は、入居者がいなければ収入を得られないため、経営が成り立ちません。しかしオーナーチェンジ物件であればすでに入居者がおり投資を始めてすぐに家賃が入ってくるため、初心者でも安心して購入できます。

収支計画を立てやすい

不動産投資を始めるときは、収支計画を立てたうえで物件を購入すべきか判断する必要があります。空室の物件を購入する場合、家賃収入がはっきりしないため、正確な収支計画を立てるのは難しいでしょう。すぐに家賃収入を得られるオーナーチェンジ物件であれは、現在の家賃をもとに収支計画を立てることができます。

融資を受けやすい

投資用不動産は、物件価格が高額になるため、金融機関の融資を利用して購入するのが一般的です。不動産投資ローンでは、購入予定者の属性(年収、職業、勤続年数など)だけでなく物件の収益性も評価されます。オーナーチェンジ物件は、購入後すぐに家賃収入を得ることができ収益性が高い物件と判断されるため、融資が受けやすい傾向です。

契約内容が引き継がれる

オーナーチェンジ物件は、前オーナーと入居者との賃貸借契約がそのまま引き継がれます。入居者を審査したり家賃などの契約内容を検討したりする必要がないため、手間がかかりません。また前オーナーが実施した修繕や設備の交換などもそのまま引き継げるため、修繕費が節約できる可能性があります。

オーナーチェンジ物件のデメリット

一方でオーナーチェンジ物件には、以下の2つのようなデメリットもあります。

購入時に室内を確認できない

オーナーチェンジ物件は、すでに入居者がいるため、購入時に室内を確認できません。実際に確認できるのは、建物の外観や共用部分のみです。そのため間取りや内装、設備は写真で判断することになります。また室内の状態によっては、入居者が退去するときに高額のリフォーム費用がかかる可能性があることもデメリットです。

退去後に家賃が下がる可能性がある

現在の家賃が相場よりも高い場合は、家賃が入居者の退去後に下がる可能性があります。特に入居期間が長く築年数が古い物件の場合、入居時の家賃がそのまま維持されていると退去後は家賃が大幅に下がるかもしれません。オーナーチェンジ物件を購入する際は、入居期間や相場家賃を確認したうえで購入判断を行いましょう。

オーナーチェンジ物件を購入する際の注意点

オーナーチェンジ物件を購入する際は、以下の4つの注意点についてチェックしましょう。

現地確認を行う

オーナーチェンジ物件であっても現地確認をしたうえで購入判断することが大切です。最寄り駅からの距離や周辺環境、共有部分の管理状況などは、実際に現地に行ってみると不動産会社からの説明と異なる場合があります。投資用不動産は投資額が大きいため、購入してから後悔しないように必ず現地確認を行いましょう。

建物管理の状況を確認する

オーナーチェンジ物件を購入するときは、建物管理の状況を確認することも重要なポイントです。現在の賃貸借契約をそのまま引き継げるからといって優良物件とは限りません。物件の所有者は、建物管理の状況に不安を感じて売却を決めた可能性もあります。そのため重要事項説明書などで修繕履歴や修繕積立金の残高などをチェックしておきましょう。

特に修繕積立金が不足して借入金がある物件は、十分な修繕やメンテナンスを行えなくなるリスクがあるため、注意が必要です。

賃貸管理会社の変更を検討する

オーナーチェンジ物件は、状況に応じて賃貸管理会社の変更を検討しましょう。賃貸管理会社によって費用やサービス内容は大きく異なります。不動産投資において定期的に退去が発生することを避けることはできません。しかし入居者募集に強い賃貸管理会社であれば空室期間を短縮して収益への影響を抑えることが可能です。

問題がなければそのままでも問題ありませんが不安がある場合は賃貸管理会社の変更を検討するといいでしょう。

敷金の取り扱いに注意する

オーナーチェンジ物件を購入するときは、入居者から預かっている敷金の取り扱いを確認しておきましょう。賃貸物件のオーナーが変わる場合、通常、敷金は新オーナーに引き継がれます。しかし契約時に確認しておかないと敷金がうまく引き継がれず退去時に新オーナーが負担する費用が増えてしまう可能性があるので注意が必要です。

オーナーチェンジ物件の特徴を知って不動産投資を成功させよう

オーナーチェンジ物件は、購入後すぐに家賃収入を得られるため、初心者でも投資しやすい物件といえるでしょう。ただし「購入前に室内を確認できない」「退去後に家賃が下がる可能性がある」といったデメリットもあります。オーナーチェンジ物件を購入する際は、物件や入居者の状況を自分で確認したうえで購入の判断を行いましょう。