武井利明
住宅メーカーに約20年営業職で勤務。現在は住宅専門ライターとして住まいの選び方、土地の選び方、ローンを含めた資金計画、プラン、メーカー比較、リフォームなど、幅広いテーマで多数のメディアに執筆。人気動画サイトの住宅系動画脚本なども手がける。営業マン時代に培った知識と経験を生かし、これから家を建てる方の悩みや疑問、不安を解決する記事を得意としている。

不動産投資ローンに種類があることをご存じでしょうか。それぞれのローンの特徴を知ったうえで適したものを選べばより有利な条件で借り入れが期待できるでしょう。本稿では、不動産投資ローンの主な種類や金融機関による違いなどについて解説します。

不動産投資で利用できる2つのローン

不動産投資に利用できるローンは、主にアパートローンとプロパーローンの2種類がありそれぞれに融資条件などが異なります。

アパートローンは副業で借りやすい

アパートローンは、賃貸投資目的のローンで融資は主に物件の収益性で判断されます。一般的なローンの条件は、以下の通りです。

・融資額
申込人の年収が500万円以上かつ融資額はその年収の7倍程度がひとつの目安です。年収150万円以上や年収200万円以上など、それよりも低い場合でも融資を受けられるケースもあります。不動産投資の実績が豊富であったり収益性が高く安定性も優れる物件と認められたりすれば年収の10倍近い融資を受けられることもあります。

・融資期間
融資期間は、最長で35年程度の比較的長期なローンを組むことが可能です。収益性が高ければさらに長く融資する金融機関もあります。

・金利
金利は2~3%台が多い傾向ですが金融機関によって金利差が大きいため、借り入れする際は複数の銀行をしっかりと比較しましょう。また保証料や団体信用生命保険料を金利に上乗せする金融機関もあり注意が必要です。

・自己資金
自己資金は、物件の収益性が一定の基準を満たせば最小限で済みますが仲介手数料や登記費用、融資諸費用などは、自己資金で用意しなければならない金融機関もあります。この場合は、総資金の1~2割ほどの現金が必要です。

プロパーローンは事業性融資

プロパーローンとは、アパートローンや通常の住宅ローンのような保証会社の保証を付けないローンです。金融機関が独自で貸し出すことから「独自貸し」などとも呼ばれます。保証会社は、借入時に保証料を支払うことで万一返済が困難になったときに銀行に代位弁済してくれる法人です。しかしプロパーローンは保証を付けないため保証料がかかりません。

その代わり他のローンに比べて金利が高めです。融資手数料が高額な金融機関もあり利息も含めた諸費用がアパートローンより多くなる可能性があり、借り入れのハードルが高いローンです。実際に利用するのは、他の借り入れもある事業者や何らかの理由で通常のローンが利用できない人となるでしょう。

すでに複数の不動産投資を行っており事業化も視野に入れているなら金融機関へ相談しても良いかもしれません。しかし本業があり副業で不動産投資を行うならアパートローンを利用したほうが良いでしょう。

住宅ローンは自分の住居用なので使えない

一般の住宅ローンは、金利が低く設定されているため、「投資物件の購入に利用できないか」と考える人もいるのではないでしょうか。しかし住宅ローンは、本人かその家族が居住するための融資のため、賃貸物件購入には利用できません。万一賃貸物件ということを隠して利用しても賃貸に出していることが判明すると期限の利益を喪失します。

その結果「融資の一括返済を求められる」「虚偽の申告(詐欺)として訴えられる」といったこともあるので注意が必要です。

金融機関による不動産投資ローンの違い

金融機関の種類によって不動産投資ローンにも違いがあります。おおまかな特徴を紹介しますのでより良い条件の金融機関選びに役立ててください。

・都市銀行
都市銀行は、全国や世界中に支店を持つ比較的規模の大きな銀行です。不動産投資ローンの金利は、低めですが物件の収益性や事業計画全体に対する審査は厳しい傾向があります。

・地方銀行
地方銀行は、特定の都道府県やその近隣に展開している中規模の金融機関です。都市銀行に比べて審査は比較的融通がきき金利も低めですが銀行の営業エリア内にある物件でないと借り入れができません。

・信用金庫
信用金庫は、特定の市町村やその周辺地域に展開する金融機関です。融資エリアは限られますが不動産投資ローンに積極的な信用金庫もあります。ただし金利は都市銀行に比べると高めです。

・不動産会社のあっせんローン
購入する物件を仲介する不動産会社があっせんする投資ローンもあり物件購入と融資手続きが一つの窓口で済む点はメリットです。不動産会社ごとに金利や細かな条件が異なるため、購入前に確認しておくようにしましょう。

金利タイプの違い

ローンの金利には、変動型と固定期間選択型の2種類があります。

・変動型
半年に1度など決まった時期に金利の見直しが行われそれに応じて支払う利息も増減します。ただし多くの金融機関で金利が上昇しても支払額の見直しは5年ごとさらにそれまでの支払額の1.25倍までというルールを設けている傾向です。これは支払額が急増して返済が苦しくなることを防ぐためですが利息が増えた分だけ返済額の元金部分を減らして調整しています。

そのため返済期間が終わっても元金が返済しきれない可能性があるため、注意が必要です。

・固定期間選択型
3年や5年など選んだ期間は金利が変わらず返済額も変わらない金利タイプです。固定期間が終わった後は「再び固定期間を選ぶか」「変動金利型に切り替えるか」を選択します。固定期間選択型のほうが安心感はありますが金利は変動型のほうが低くなっているため、どちらを選ぶか悩むところです。物件を購入する仲介会社とよく相談しながら決めるようにしましょう。

支払い方法の違い

ローン返済の支払い方法には、元金均等返済と元利均等返済があります。

・元金均等返済
借入金額を返済期間で割りそれに借入残高に対する利息を上乗せして支払います。そのため返済開始当初は返済額が多めとなるのが特徴です。しかし借入残高が減るにつれて返済額も少なくなっていきます。また元利均等返済よりも元金の減りが早いため、金利が同じ場合は利息を含めた総返済額が少なくなります。

・元利均等返済
借入額と利息の合計を返済回数で割り毎月の返済額を均等にする返済方法です。利息が変わらなければ毎月の返済額(元金+利息)が一定なので長期の収支計画を立てやすいメリットがあります。ただし支払い開始当初の支払額の内訳は、利息の割合が大きいため、返済を重ねてもなかなか元金が減りにくいことはデメリットです。

投資物件の収支で考えれば総返済額の少ない元金均等返済が有利です。しかし支払い開始当初の返済額が高めなので「家賃収入で余力を持って支払えるか」が判断のポイントとなるでしょう。

より多くの額を借りるためのポイント

ローンの融資額は、物件の評価や収益性、申込人の属性などで総合的に判断される傾向です。しかしその中でも特に融資額決定に影響が大きいと考えられる2つのポイントがあります。

収益性の高い物件である

より多くの額を融資してもらうには「長く安定した収益が見込める物件」といったことが重要です。例えば都心のように人口が極端に減ることが考えにくく安定した賃貸需要の期待できる物件が有利となります。築年数が浅くても人口が減少している市区町村で空室が続いているような物件では、十分な融資が受けられない可能性もあるでしょう。

より多くの金額を借りたいのであれば収益性の高い物件という条件は必須です。

本人の属性が高い

融資を申し込む本人の属性もより多くの金額を借りるためのポイントの一つです。属性とは、職業や勤務先、年収、勤続年数などから判断される返済能力のこと。一般的に属性が高ければ多くの金額を貸しても返済が滞りにくいと金融機関は考えます。例えば医師のような高収入で安定した職業の人や上場企業に長く勤めている人であれば一時的な空室で家賃収入が減っても返済が滞る可能性は低いでしょう。

属性の高い人は、より多くの融資を受けることが期待できるため、物件の選択肢が広がります。

ローンの種類を知って賢い選択を

不動産投資で利用できるローンには、アパートローンとプロパーローンがあります。しかし副業で行う場合は、アパートローンが借りやすく金利面でも有利です。ただし金融機関ごとに金利や返済期間、審査の厳しさなどが異なるため、実際に借り入れする際はローンの取り扱い実績が豊富な仲介会社からアドバイスを受けながら借入先を決めるほうが安心です。

複数の不動産投資ローンをしっかりと比較しより有利な条件で借り入れできるようにしましょう。