区分マンションへの投資を検討している人が物件選びと同じくらいに気にするのは「銀行の審査に通過できるかどうか」ということでしょう。不動産投資の利回りを高めるためには「いかに多くの金額の融資を引き出すことができるのか」という点が重要になります。本記事では、新築区分マンション投資で銀行からの融資を受けやすくするポイントと、審査に通る物件の見分け方について解説します。
区分マンションの審査が厳しい2つの理由
区分マンションの投資資金の融資審査は、甘くはありません。なぜなら区分マンションは、一棟マンションと比較して空室リスクが高く、土地を評価することができないからです。区分マンションの投資資金において融資審査が厳しい2つの理由を確認しておきましょう。
空室リスクが高い
区分マンションの融資審査が厳しい理由の一つが「空室リスク」です。一棟マンションであれば複数の部屋が空室になっても他の部屋からの家賃収入が見込めるため、借入金の返済が見込めます。しかし区分マンションの場合は、空室になると家賃収入は完全にゼロになるため、借入金の返済ができなくなる可能性が高いとみなされる場合もあるのです。
複数の入居者から家賃収入を得られる一棟マンションと比較して、区分マンションは空室リスクが非常に高いため、審査は厳しくなります。
土地を評価できない
区分マンションは、土地を評価することができません。借入金でマンションを購入した場合、金融機関は当該マンションを保全のため担保にとります。区分マンションの場合には、共有部を担保に取ることができないため、金融機関が担保に取るのは建物の一部分のみです。一方、一棟マンションは建物だけでなく建物の土地まで担保に取ることができます。
そのため土地まで担保評価ができる一棟マンションのほうが担保評価額としては高くなる傾向です。一棟マンションと比較して区分マンションは、担保評価額が低くなることから、融資審査は厳しい傾向にあります。
区分マンション投資の融資審査で確認される5つのポイント
区分マンションの投資資金を金融機関から借りる際の審査の重要ポイントは、以下の5つです。
2.勤務先
3.金融資産
4.借入状況
5.物件の収益と評価額
基本的に融資審査では「万が一家賃収入が入ってこなくなっても返済することができるか」という点が重視される傾向です。区分マンション投資資金の審査のポイントを詳しく解説していきます。
1.申込者の収入
空室リスクの高い区分マンション投資では、申込者の収入が非常に重要になります。なぜなら万が一マンションから家賃収入が入らなくなった場合は、申込者の収入から購入費のローンを返済しなければならないからです。そのため申込者の収入が低く「家賃収入がなければ返済できない」と判断された場合には、審査通過は難しくなるでしょう。
2.勤務先
高収入で安定した勤務先のほうが融資審査で有利になります。マンションの投資資金は、長期間かけて返済していくため、収入の安定性が大切です。融資審査で有利になる勤務先の順位は以下のようになります。
2位:公務員や上場企業会社員
3位:中堅企業会社員
4位:中小企業経営者
5位:個人事業主
このほか、すでに不動産投資家として一定程度の家賃収入を上げている実績のある人も融資審査で有利になります。
3.金融資産
万が一家賃収入が入ってこなかったときに「ローンを返済するだけの資金があるか」についても審査で確認されます。そのため預金などの金融資産が多い人のほうが融資審査としては有利です。すでにたくさん預金している金融機関へ申し込むことで審査通過率は高くなるでしょう。
4.借入状況
審査では、個人信用情報をチェックするため、申込者の借入状況はすべて確認されます。できるかぎり借入金が少ないほうが審査では有利です。「家賃収入がなくなった場合、借入金が多いから返済できない」と判断されないよう、不動産投資を行う前に返済するなどして借り入れは少なくしておきましょう。
5.物件の収益と評価額
収益力と評価額が高い物件であればあるほど審査では有利です。
・評価額が高い:万が一返済に滞ってデフォルト(債務不履行)した場合も売却によって完済が見込める
優良物件ほど審査が有利になるため、物件選びは慎重に行いましょう。
審査に通過するための3つのコツ
区分マンション投資資金を借りる場合の審査通過率を上げるコツは、主に以下の3つです。
2.他社の借り入れを完済する
3.12月・3月に申し込む
審査に通過しやすくなる3つのコツについて詳しく解説していきます。
1.自己資金を増やして借入額を最小にする
できるかぎり自己資金を増やして金融機関側から見て有利となる状況で申し込むようにしましょう。自己資金が増えれば増えるほど金融機関にとって融資額よりも担保評価額のほうが大きくなり金融機関にとって有利な条件で融資を実行することができます。例えば1億円の物件を自己資金ありと自己資金なしで購入した場合を考えてみましょう。
<自己資金あり・なしの保全割合の比較>
購入物件 (担保評価額) |
自己資金 | 借入額 | 保全割合 (担保評価額÷借入額×100) |
---|---|---|---|
1億円 | 0円 | 1億円 | 100% |
1億円 | 3,000万円 | 7,000万円 | 143% |
1億円 | 5,000万円 | 5,000万円 | 200% |
自己資金が多ければ多いほど金融機関は借入額に対して多くの担保を取ることができるため、金融機関にとってのリスクは低くなります。できるかぎり多くの自己資金を用意することで審査通過の可能性が高くなるでしょう。
2.他社の借り入れを完済する
基本的に住宅ローンと不動産投資ローン以外の借り入れは事前に完済したほうが賢明です。カードローンなどの無担保ローンは審査で不利になり、借り入れがあるだけで審査に落通らないケースもあります。
・カードローン
・フリーローン
・クレジットカードのキャッシング
これらの使い道自由で無担保のローンは、区分マンション投資資金の借り入れを申し込む前に完済したほうがよいでしょう。
3.年末・年度末に申し込む
金融機関にとって融資をしたいタイミングで申し込むのも重要です。12月の年末や3月の年度末は、金融機関の担当者はノルマに追われ「融資残高を確保したい」と考えています。そのためできるかぎり金融機関側が多くの融資残高を確保したいタイミングで申し込んでみるとよいでしょう。1件あたりの金額が大きくなる不動産投資ローンは金融機関にとって魅力的です。
普段であれば審査に落とされてしまうような案件でも、12月や3月であれば審査に通過できる可能性があるかもしれません。
審査に通りやすい物件とは?銀行が評価する4つのポイント
区分マンションを購入する際に銀行が評価する物件には、以下の4つの共通点があります。
2.築年数が浅い
3.部屋の広さと間取りの需要
4.実質利回りが高い
審査に通りやすい物件の4つの特徴を詳しく解説していきます。
1.好立地の物件
物件が好立地であればあるほど審査で有利です。
・駅近物件
これらの条件を満たしている物件はニーズが高い傾向にあるため、審査で確実にプラスになります。
2.築年数が浅い
築年数が浅い物件も以下のような理由で審査ではプラスになります。
・売却しやすい
・空室リスクが少ない
築年数が浅いと価値が下がりにくく、入居者も入りやすいので審査では有利とされます。
3.部屋の広さと間取りの需要
部屋の広さや間取りも審査に関係します。
・間取りが人気(ウォークインクローゼットがついているなど)
広い物件や間取りが人気の物件は、入居者が入りやすいので審査にはプラスです。一方、2Kや3Kなどの古い間取りの物件は、入居者が入りにくいので審査では不利になる可能性もあります。また占有面積が広ければ担保評価額が大きくなるため、審査では基本的に有利になるでしょう。
4.実質利回りが高い
実質利回りとは「(家賃収入?経費)÷不動産価格×100」で計算する不動産投資の実質的な利益率です。実質利回りが高い物件ほど収益力の高い物件となり、返済も容易になるので審査には有利です。実質利回りを高くするためには、以下の2つの方法があります。
・不動産価格と比較して管理費や修繕費が安い
つまり「お買い得」な物件ほど審査には有利になります。できるかぎり実質利回りの高い優良物件を探しましょう。
融資審査に通過しやすい状況をつくり出す
区分マンション投資の資金を借りる際に審査で重視されるポイントは以下の5つです。
・勤務先
・金融資産
・借入状況
・物件の収益と評価額
これらの条件に合致した人が優良物件の購入を希望するのであれば、審査に通過できる可能性は高くなるでしょう。
区分マンションは一棟マンションよりも審査が厳しくなる傾向ですが、ポイントをしっかりと押さえておけばハードルは決して高くありません。融資審査に通過しやすい状況を自分で作りながら優良物件を探しましょう。