丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

富裕層の資産を管理・運用するプライベートバンクが日本でも浸透しつつあります。日本ではスイス系のプライベートバンクが存在感を示していますが、その代表が世界最大のプライベートバンクであるUBSです。日本でどのようなサービスを展開しているのでしょうか。UBSの特色や日本のプライベートバンクとの違い、ウェルス・マネジメントの内容などを解説しながら日本で口座を持つ方法を紹介します。

1.そもそもプライベートバンクとは何か

プライベートバンクとは、一定額以上の資産を保有する富裕層を対象にした金融サービスです。預け入れた金融資産を顧客専属の運用パートナーが資産運用して増やしていきます。プライベートバンク発祥の地はスイスといわれています。スイスにはUBS、クレディ・スイス、ジュリアスベア、ロンバー・オディエ、ピクテなど世界的なプライベートバンクが多く存在します。

スイスと並んで盛んなのが米国です。主に以下のような大手金融機関がプライベートバンク事業を行っています。

■ モルガン・スタンレー
■ バンクオブアメリカ
■ JPモルガン
■ シティ
■ ゴールドマン・サックスなど

日本でも近年プライベートバンク事業に進出する金融機関が増え、メガバンクや大手証券会社などが富裕層を対象にサービスを展開しています。マスリテール層(富裕層未満の顧客)を対象にした金融機関は一般的な株や投資信託、債券などの売買を中心にしていますが、プライベートバンクは富裕層を対象にし、顧客ごとにオーダーメイドされた金融商品やサービスを提供しています。

具体的な商品としては発行数が限られている私募仕組債や、優先出資証券などが提供されます。プライベートバンクでは顧客ごとに専任の運用担当者が付くため、取引一任勘定による資産運用も行っています。普通銀行では提供されない金融商品や取引方法で資産運用できるのがプライベートバンクの大きな特徴といえます。

2.UBSは世界トップクラスのプライベートバンク

ADV Ratingsに掲載されているデータによると、UBSは世界のプライベート・バンキング運用資産残高で首位に立っています。プライベート・バンキングとはプライベートバンク(金融機関)が提供する富裕層向けの金融サービスを指します。「UBSグローバル・ウェルス・マネジメント」はAUM(運用資産)別のランキングで2位以下を大きく引き離しています。

また純利益や新規純資産を考慮した全体のランキングでもUBSがトップにランクされており、世界最大のプライベートバンクとしての地位を保っています。両方のランキングを総合すると、スイスと米国がプライベートバンクで強みを持っていることが分かります。

▽プライベート・バンキング運用資産残高上位10行2020

順位 銀行名 国名 運用資産残高
1 UBSグローバル・ウェルス・マネジメント スイス 2兆5,900億米ドル
2 エドワード・ジョーンズ・インベストメンツ 米国 1兆305億米ドル
3 クレディ・スイス・プライベートバンキング&ウェルス・マネジメント スイス 1兆250億米ドル
4 モルガンスタンレー・ウェルス・マネジメント 米国 1兆236億米ドル
5 バンクオブアメリカ・グローバル・ウェルス・アンド・インベストメント・マネジメント 米国 1兆220億米ドル
6 JPモルガンプライベートバンキング 米国 6,770億米ドル
7 ゴールドマンサックス・プライベート・ウェルス・マネジメント 米国 5,580億米ドル
8 チャールズ・シュワブ 米国 5,063億米ドル
9 シティプライベートバンク 米国 5,000億米ドル
10 BNPパリバ・ウェルス・マネジメント フランス 4,240億米ドル
出典:Top Wealth Management Firms(ADV RATINGS) ※以下同

▽プライベート・バンキング全体ランキング上位10行2020

2020順位 2019順位 2018順位 銀行名 国名
1 1 1 UBS スイス
2 2 3 クレディ・スイス スイス
3 3 2 JPモルガン 米国
6 4 7 BNPパリバ フランス
4 5 5 シティ 米国
8 6 11 サンタンデール スペイン
5 7 4 ジュリアスベア スイス
7 8 6 ピクテ スイス
10 9 9 ゴールドマン・サックス 米国
9 10 8 HSBC イギリス

3.UBSとはどんな企業か

UBSは、1998年にスイス3大銀行のスイス・ユニオン銀行とスイス銀行が合併して発足しました。スイスのチューリッヒおよびバーゼルに本拠を置くスイス最大手の銀行であり、金融持ち株会社としても世界有数の規模を誇ります。前身のスイス・ユニオン銀行は1862年にヴィンタートゥール銀行という行名で設立されました。

その後1912年にトッゲンブルガー銀行と合併し、スイス・ユニオン銀行が正式に誕生します。その後1998年にスイス銀行と合併し、現在のUBSグループに至っています。日本での事業展開は、1966年に東京に駐在員事務所を設立したのが始まりです。1972年には東京支店を、1986年には大阪に駐在員事務所を開設し、日本進出を本格化させていきます。

1988年に前身のスイス・ユニオン銀行が東京証券取引所に上場し、1998年から2010年までは現在のUBSが上場していました。主な事業内容は、グローバル・ウェルス・マネジメント、パーソナル&コーポレート・バンキング、インベストメント・バンク、アセット・マネジメントの4つの部門で構成されています。

ところで、スイスはなぜ金融大国といわれるほど世界金融の中心地になったのでしょうか。1つはスイスが永世中立国であり、世界保健機関(WHO)や国際オリンピック委員会(IOC)など多くの国際機関が本部を置き、政治的に安定していることがあげられます。紛争が起こる心配がないのは資産家にとって大きな安心感があるでしょう。

もう1つは1805年創業のピクテなど200年以上の歴史を持つプライベートバンクがあり、富裕層の資産保全・資産運用に関して高いブランド力を有する金融機関が多いことです。そのなかでもトップレベルのプライベートバンクとして君臨しているのがUBSなのです。

4.日本のプライベートバンクとの違いは

UBSと日本のプライベートバンクには、主に3つの違いがあります。

最低預入資産の水準

日本のプライベートバンクでは、預かり資産1億円以上から受け付ける会社があるのに対しUBSは2億円以上必要です。最低預入資産だけで判断すれば日本のプライベートバンクのほうが利用しやすくなっています。ただし日本のプライベートバンクがすべて海外の会社より必要預入資産が低いわけではなく20億円以上必要な会社もあります。

スイスのプライベートバンクでは、クレディ・スイスが5億円以上、ロンバー・オディエが3億円以上必要なことを考えるとUBSは比較的ハードルが低いといえそうです。いずれにしても数千万円程度の資産では、口座開設は難しいと考えたほうがよいでしょう。

税制や法務に関する対応

日本のプライベートバンクは、相続対策や事業承継対策、税金対策などに強く事業経営者にとっては利便性が高いといえるでしょう。各国の税制は、毎年のように変わるため、UBSなど海外のプライベートバンクの場合、日本の税金対策などの相談に対応できない場合があります。税制や法律で困ったことがあった場合に利便性が低くなる点はデメリットです。

ただし海外のUBSではなく日本で展開している「UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント」では、財務コンサルティングに関しても相談することができます。

言語の問題

海外のプライベートバンクの場合は、契約書や説明書面の記載が英語となる可能性が高くなります。UBSのような大手であれば日本語に対応できるスタッフがいるかもしれませんがそれでも日本国内に口座を持つ場合と比較すると不安な面があることは否めません。そのため英語に精通している方以外は、UBSの日本法人で口座を開設したほうが無難でしょう。

5.最近よく聞くウェルス・マネジメントとは

では、日本法人におけるUBSのサービス内容を見てみましょう。プライベートバンクやプライベート・バンキングに代わって最近よく聞くのが「ウェルス・マネジメント」という言葉です。UBS もウェルス・マネジメント事業に力を入れています。UBSと三井住友信託銀行が提携しているUBS SuMi TRUSTウェルス・アドバイザリーによると、ウェルス・マネジメントとは「金融資産のみならず家族、事業などといった富裕層が感じるすべてを資産ととらえ、豊かな人生を包括的にサポートする」サービスを言います。単に資産を守り増やすために富裕層が利用するプライベートバンクから一歩先へ踏み出すサービスと同社ではとらえています。

同社のサービスはUBSと三井住友信託銀行の得意分野を組み合わせた内容になっています。UBSは株式、債券などの資本市場商品と投資信託などの運用ソリューションを提供します。一方の三井住友信託銀行は信託サービスや不動産部門を担当し、銀行商品は両行が得意とする商品をそれぞれ提供します。国際分野を得意とするUBSと、国内分野を得意とする三井住友信託銀行の優れたサービスを両方利用できるのは、富裕層にとってかなり魅力的といってよいでしょう。

6.法人も利用価値が高いウェルス・マネジメント

ウェルス・マネジメントは法人にとっても利用価値が高いサービスです。三井住友信託銀行が担当する分野に、「事業承継コンサルティング」「不動産コンサルティング」があるため、事業承継やM&A、不動産売買についても相談することができます。三井住友信託銀行にあるウェルス・マネジメント部にはリレーションシップ・マネージャーという部門があり、企業財務コンサルタント、財務コンサルタント、不動産スペシャリスト、ローンスペシャリストなどが在籍しています。さらに、外部パートナーとして弁護士、税理士もいるので、法人業務のあらゆる相談をカバーできそうです。

資産運用の面ではUBSの銀行商品、UBS証券の証券商品を利用することができます。「UBSのグローバルネットワーク」「UBSインベストメント・バンク」「UBSアセット・マネジメント」など海外と同水準のサービスを利用できることは法人の資産運用にも大きな魅力となるでしょう。

7.日本でUBSに口座を持つ方法

日本でUBSに口座を持つ方法を紹介します。UBSウェルス・マネジメントの口座開設案内によると、次のような手順で口座開設やその後のサポートが行われます。

1. 面談
はじめにクライアント・アドバイザリーがUBSウェルス・マネジメントの哲学やサービス提供についての考えを説明します。
1. カウンセリング・ヒアリング
顧客とその家族がどのような悩みや将来設計を持っているか、事業オーナーであれば事業についてどのような展望を考えているかなどをヒアリングします。
1. ポートフォリオの提案と合意
ヒアリングで聞いた顧客の課題を解決するために、内外の金融商品やサービスを組み合わせ、専用のポートフォリオを提案します。
1. プランの見直し
取引開始後、顧客を取り巻く環境の変化や世界の経済情勢の動きを見ながら、運用プランをアップデートします。
1. 多様なニーズに応える
運用期間中もクライアント・アドバイザリーが資産面以外にもさまざまな要望を聞きます。要望に関してウェルス・マネジメント部門やUBSグループと連携し解決策を提案します。

口座開設の問い合わせ先は、UBS SuMi TRUSTウェルス・アドバイザリー株式会社となります。開設のための条件は、最低預かり資産2億円以上となっています。したがって、富裕層以外が口座を持つことは困難です。

出典:UBSウェルス・マネジメント公式サイト
口座開設のご案内 | UBS 日本

富裕層や法人にとって魅力的なプライベートバンクですが、世界最大のプライベートバンクであるUBSを知ることによって国内銀行のプライベートバンクと比較することができます。上記プライベートバンキングトップテン2位のモルガン・スタンレーが三菱UFJ銀行と提携している三菱UFJモルガン・スタンレー証券でもプライベートバンクサービスを行っています。ほかにもさまざまな金融機関がプライベートバンクサービスを実施しているので、サービス内容を慎重に比較して自分にあったプライベートバンクを見つけてはいかがでしょうか。

8.プライベートバンク「UBS」に関するQ&A

最後にプライベートバンク「UBS」に関する疑問点をQ&A形式で確認しておきましょう。

Q1:UBSってどんな会社?

UBSは、スイスのチューリッヒに本店を置くスイス最大の銀行であり、世界有数の金融持ち株会社です。プライベート・バンキング部門を持っており、同部門の預かり資産で世界1位にランクされています。主な事業内容は、以下の4部門です。

グローバル・ウェルス・マネジメント:富裕層に対する事業承継、資本政策、資産運用アドバイスを含めた総合的な金融商品・サービスの提供や、金融資産の管理代行を行う事業分門
パーソナル&コーポレート・バンキング:スイス国内の個人・法人などの顧客にさまざまな金融商品やサービスを提供する事業部門
インベストメント・バンク:投資銀行業務、証券業務を行う事業部門
アセット・マネジメント:株式、債券、通貨、ヘッジファンド、不動産などを対象にした資産運用サービスを機関投資家や個人富裕層を中心に提供する事業部門

「ユーロマネー」誌が選出するプライベートバンクランキングで長期間にわたって1位に選出されていることから安心して資産運用を任せられる会社といえるでしょう。スイスのUBSに口座を持つことはハードルが高いです。しかし日本法人の「UBSウェルス・マネジメント」に口座を持つことで上記の事業内容に近い水準のサービスを受けることができます。

Q2:日本でUBSの口座を持てる条件とは?

一般的な銀行のように窓口に行けば誰でも口座を開設できるわけではありません。基本的条件として預入資産2億円以上が必要です。口座開設から2年経過後に預かり資産合計額が2億円に満たない場合は、口座管理手数料がかかる場合があります。また口座開設にあたっては資産運用・管理方針に対する面談が行われ運用担当者と話し合い運用方針で合意することが条件です。

口座は、UBS銀行東京支店またはUBS証券で開設することができ両社がそれぞれ個別にウェルス・マネジメント業務を提供しています。2020年1月から三井住友トラストグループと協業し2021年8月から「UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント」でもウェルス・マネジメントサービスを開始しました。法人の口座開設もできますが事業に関する決済を目的とした口座の利用や融資は行っていません。

Q3:ウェルス・マネジメントって何?

ウェルス・マネジメントとは、富裕層が資産運用に利用する特別な銀行であるプライベートバンクを一歩進め資産運用以外にも家族や事業など富裕層の人生にかかわるあらゆる分野をサポートするサービスです。売れ筋商品や人気のサービスを提供するのではなく顧客一人ひとりの解決すべき課題や目標とするゴールに向けて最適なサービスを提供するオーダーメイドのソリューション(解決法)といえます。

個人だけでなく法人も利用が可能で信託機能を活用した資産・事業承継、不動産の売買や有効活用、M&A(企業の合併・買収)、ファイナンス(資金調達)などの相談も可能です。ウェルス・マネジメントでは、一般的に「専任担当者制」を採用しています。なぜなら富裕層の人生をサポートするサービスにおいては、一人の担当者が顧客について深く理解し信頼関係を築く必要があるからです。

家族にかかわる相談を受けることもあり相続があった場合に同じ担当者が引き続き担当するケースもあります。

※本記事はUBSの特色やサービス内容を紹介するものであり、口座開設を推奨するものではありません。参考程度にお考えください。