2050年に東京の高齢化や人口減が顕著になると聞き、不動産投資に不安を抱いている人がいるかもしれません。東京に限らず今後の日本全体の人口減少は明白で、経済をはじめさまざまな面の不安要素になっています。本記事では、2050年を見据えて東京での不動産投資をどう考えるべきか、詳しく解説します。

2050年東京の高齢化と人口減の見通し

話題になっている2050年の東京の姿ですが、東京都はどのように見通しているのでしょうか。都が示しているデータをもとに検証してみます。

2050年の東京は3人に1人が65歳以上

2020年9月に東京都が発表した東京都の高齢者人口は、2020年9月15日現在の推計で311万1,000人と過去最高を更新しています。高齢化率(人口に占める高齢者の割合)は23.3%で4.3人に1人が65歳以上です。

一方で将来の高齢化率は、東京都政策企画局の2016年人口推計によると2050年に32.9%となり、3人に1人が65歳以上と推計しています。

2014年の前回推計では同じ割合の高齢化率になるのを2040年と推計しており、2050年とした今回の推計は10年後ろ倒しになっています。これは若い世代を中心に社会増(転入者数が転出者数を上回る状態)がしばらく続くと見込んだためです。

不動産投資の面で考えればこの社会増が、具体的にどの地域で進むか見極めて物件を選ぶことが重要になります。

東京の人口増は2025年がピーク

同じ資料では東京の人口は2025年に1,398万人のピークを迎え、その後は減少に転じると推計しています。2014年の前回推計では、人口のピークは2020年に1,336万人としていました。しかしこちらも5年ですが後ろ倒しになり、しかもピーク人口は増えています。

今後日本の高齢化と人口減少は確実に進行し、この傾向は東京でも避けられないことです。しかしこれらの推計を見ると以前よりそのタイミングが先へとずれています。つまり東京の人口は長期的には減少するものの、人口流入が予想以上に多く減少に転じる時期を先送りになっていると考えられます。

東京都区部の落ち込みは緩やか

人口の推移を地域別に見ると区部(23区)は2030年、多摩・島しょ地域は2020年がピークと推測されています。しかも区部は前回調査からピークが10年も後ろ倒しされており、多摩・島しょ地域の5年後ろ倒しよりも大幅に先送りになっています。

また人口の減少具合も区部とそれ以外で違いがあります。多摩・島しょ地域は2020年のピーク時426万人から、2050年に367万人と86.2%に減少すると予測されています。しかし区部は2030年に979万人のピークから、2050年に906万人と92.5%への減少に留まります。

地域によって人口が減少に転じるピークや落ち込みが異なり、区部は社会増の度合いが大きくブレーキがかかると考えられます。東京都ということで一括りに見てしまいがちですが、地域によって人口の変動に大きな違いがあります。

この点は今後の不動産投資の対象を考えるうえで、非常に重要なポイントになります。

2040年まで人口が増える3区とは

東京都による2017年の区市町村別人口の予測では、千代田区、中央区、港区の3区は人口ピーク時期が2040年であり、それまで人口は増加するとしています。続いて江東区が2035年に、文京区、台東区、品川区、渋谷区、板橋区が2030年にピークを迎えると推測しています。

仮に千代田区などの3区に投資物件を構えれば、2040年までは人口減少の影響は受けにくいと言えます。また、他の区部のピーク後の減少を見ると、この3区は2040年以降も緩やかに減少すると予想できるでしょう。

一方で最も早くピークを迎えるのは、足立区、葛飾区、江戸川区の3区で2020年となっています。同じ区部でもピークを迎える時期が20年も開きがあるのです。この点からも投資する地域をしっかりと選ぶことが大切であるとわかります。

東京以外の投資先は考えにくい

東京都全体の人口減少はまだ先ですが、一部を除いた多くの地域ではすでに始まっています。総務省統計局の2019年人口推計によると、都道府県別の人口増減率で前年比プラスなのは、多い順に東京都、沖縄県、埼玉県、神奈川県、愛知県、滋賀県、千葉県の7都県のみです。

他の道府県はすべて増減率がマイナスとなっており、さらに東京都は前年比+0.71%と2位沖縄県の+0.39%を大きく引き離しています。今後、東京都以上の人口増加率となる地域が現れるのは考えにくく、不動産投資先としては今後も東京都が最も有利と言えそうです。

家族類型ではワンルームが有利

東京都の人口推計資料では世帯数の推移も予測しており、東京都の世帯数は2030年から35年にかけて708万世帯とピークを迎えます。その後減少に転じ2050年には671万世帯になると見込まれています。

また不動産投資の面で注目しておきたいのが家族類型ごとの割合です。全世帯数に占める1人暮らしの単独世帯割合が、2015年時点の47.3%から2050年には48.1%へと増加します。逆に夫婦と子供からなるいわゆるファミリー世帯は23.4%から20.2%へと減少します。

現在も不動産投資をする部屋の種類では、東京都の単独世帯数の多さからワンルームがファミリー向けより有利とされています。2050年においても単独世帯数の割合が増えることを考えると、今後も投資対象としてはワンルームが堅実と考えられます。

高齢者単独世帯の増加

もう1つ家族類型で注目しておきたいのが、高齢者単独世帯の増加です。2015年時点では65歳以上の単独世帯は単独世帯全体の25.0%ですが、2050年には36.8%で119万世帯と大きく増加します。今後はこうした世帯の需要に応える賃貸物件が増えることが予想され、ますますワンルームの必要性が高まるでしょう。

こうした時代の変化を的確に捉えた投資を行えば、収益拡大のチャンスにつながる可能性もあります。例えば高所得者層の高齢者向けワンルームなど、独自性を持つ物件があれば大きな注目を集めるかもしれません。東京の2050年に向けての変化は必ずしも悪い面ばかりではないと言えそうです。

若者の転入も継続する

さらに国土交通省に設置される「国土の長期展望専門委員会」の資料では、2050年も東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)への一極集中は継続する見込みとしています。つまり東京だけを見れば人口は減少しますが、日本全体で見れば現在も2050年も東京圏に人が集まることに変わりがないわけです。

また東京圏への転入超過数の9割超を10代後半から20代の若者が占めていることも伝えています。主な目的は進学や就職であり、今後もこの流れが続く可能性は高いと考えられます。

2050年へ向けて東京の人口減少は進むとしても転入の大半は若い世代であり、この点でも今後さらにワンルーム物件への投資が有利になると言えそうです。

2050年までに資産形成を進めるべき

2050年までおよそ30年の間に、しっかり資産形成をしておけるかがその先の未来を左右します。確かにこれから日本全体で高齢化や人口減は進みますが、その影響が東京の不動産市況に現れるのはまだ先です。そのときまでにしっかりと将来の備えを進めておくことが大切です。

東京都では少なくとも2040年までは人口が増えると予想される地域があり、またワンルーム需要がますます高まることが期待されます。それらを考慮して物件を選べば今後も堅実な収益が見込めるのではないでしょうか。

将来を安心して迎えるための資産形成という不動産投資本来の目的を忘れず、今できることでしっかりと準備をしていきましょう。

東京の不動産に関するよくある質問

Q.地方と東京のワンルームマンションの利回りの差はどれくらいですか?
・ 東京都心 約4%
・ 札幌 6%
・ 名古屋 5.4%
・ 大阪 5.2%
・ 福岡 5.5%

Q.東京23区の中で「都心5区」とはどこですか?
千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区です。

Q.東京で不動産投資を成功させるには?
まずは、東京でも人口減少の緩やかなエリアを選び、そのエリアでの賃貸ニーズの高い物件を選ぶことです。