不動産投資をするために必須となる資格はありません。資格がなくても不動産投資は始められます。しかし、不動産の知識を体系的に学習するにあたって、不動産投資に関連する資格の勉強をするのは効率的です。

取得した資格が不動産投資に役立つこともあるので、本記事では不動産投資に関連する7つの資格を紹介します。

不動産投資において資格を取得する2つのメリット

不動産投資において資格を取得するメリットは、以下の2つがあげられます。

1.不動産投資に関する知識が身につく
2.交渉の際に有利に働く可能性がある

それぞれ解説していきます。

1.不動産投資に関する知識が身につく

不動産投資に関連する資格を取得するには、不動産に対する深い理解が必要です。資格取得のために勉強を続ければ、自然に不動産投資の知識が身につきます。資格試験に合格できれば、不動産投資に関する知識を十分に身につけた証明になるでしょう。

2.交渉の際に有利に働く可能性がある

不動産投資には金融機関、売り主、管理会社などさまざまな人が関わります。交渉の際に資格を持っていると信頼性が高いと判断され、交渉が有利に進む可能性があります。とくに金融機関と融資額の交渉を有利に進められれば、希望する融資を受けることにもつながります。

資格の勉強で得られた知識があれば、相手の話の真偽を見極めることにもつながるので、資格がない人と比較して交渉を有利に進めやすいです。

不動産投資に関連する7つの資格

不動産投資に関連する具体的な7つの資格を紹介していきます。

1.宅地建物取引士(宅建)
2.ファイナンシャルプランナー(FP)
3.不動産実務検定(J-REC公認不動産コンサルタント)
4.賃貸不動産経営管理士
5.公認ホームインスペクター
6.マンション管理士
7.不動産鑑定士

それぞれ詳しく紹介します。

1.宅地建物取引士(宅建)

宅地建物取引士は不動産取引に関する国家資格で宅建とも略されます。宅建業法や民法などが出題範囲で、民法は不動産取引で発生する法的なトラブルに対処するために必要な知識です。

合格率は過去10年間で約15?18%と低いです。宅建資格は建築会社、金融機関、不動産管理会社などの就職にも有利に働きやすく、宅地建物取引士の業務も可能になるため合格率に見合って不動産業界で評価されやすい資格でもあります。

難関な試験であるため、将来的に不動産投資関係の企業に就職したいと考えている方以外は必ずしも合格を目指すのではなく、試験範囲を勉強して不動産取引に関する知識を身につけることが重要です。

2.ファイナンシャルプランナー(FP)

FPは不動産投資を含む資産運用の知識や、税金などの金融リテラシーを身につけられます。国家資格の1級~3級FP技能士、民間資格のAFP、CFPがありますが、AFP資格取得には2級FP技能士の取得が必要です。よって、初心者は3級FP技能士資格の取得を目指すのがいいでしょう。

合格率は過去3年間で3級が70%程度、2級が40%程度です。不動産投資に必要な金融リテラシーを身につけていれば3級資格は取得しやすく、2級は3級よりも難関ではありますが宅建と比較すると取得しやすいです。

ただし、FP資格の試験範囲には不動産が含まれますが、出題範囲が幅広いので不動産投資の知識を身につける勉強としてFP資格は効率的ではないかもしれません。それでも不動産投資以外の資産運用や税金の基本的な知識が身につくので、総合的な知識を身につけるのに適した資格といえます。

3.不動産実務検定(J-REC公認不動産コンサルタント)

不動産実務検定は、J-REC(一般財団法人日本不動産コミュニティー)が運営する不動産投資における実践的な知識を学べる資格です。技能検定には2級認定と1級認定があり、どちらからでも取得できます。2級認定では賃貸管理運営について問われ、1級認定では土地活用に関する知識が問われます。

1級、2級のどちらも合格し、マスター認定を受けるとJ-REC公認不動産コンサルタントを名乗ることができます。マスター認定では不動産運用設計、建築プランニング、相続対策などの総合的な不動産コンサルティングが問われます

検定試験を受けるだけでなく、認定講座を受講してから試験を受けることもできるので、不動産投資について勉強をするためのサポート体制が整っています。合格率は講座の受講者が1級、2級どちらも70%程度で、検定試験のみの場合は1級資格のみ50%程度に低下しています。

4.賃貸不動産経営管理士

賃貸不動産経営管理士は、賃貸不動産の業務全般に関わる知識が問われます。購入した物件に入居者が入ったあとの管理や対応が学べるのもこの資格です。

近年需要が高まっている資格でもあり、受験者数が増加しています。そのため、創設時の2013年には合格率が80%以上であったのにも関わらず、2020年には29.8%まで減少しています。

賃貸不動産経営管理士資格を有する人は、賃貸住宅管理の業務をおこなうことが可能です。賃貸住宅の管理業務は、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が2020年6月12日に可決成立したことにより、賃貸住宅管理業務の登録が義務づけられたので、今後の需要に期待できます。また、賃貸不動産の運用に必要な知識を学べるので、実用的になりやすい資格といえるでしょう。

5.公認ホームインスペクター(住宅診断士)

公認ホームインスペクターは住宅診断士とも呼ばれ、住宅の欠陥や、修繕に関する知識が得られる資格です。中古住宅の欠陥を見抜けるようになるので、中古住宅の目利きに役立ちます。2019年の合格者は214名、合格率は27.3%なっています。

中古物件への投資に興味がある方は役に立ちやすいですが、新築物件に投資する場合でも長期間運用する中で発生する欠陥とその修繕費用が分かるので、有資格者に診断してもらうよりも費用が浮きやすいメリットもあります。

6.マンション管理士

マンション管理士は、マンション管理組合の運営や、マンション構造における技術的な問題について知識を有することを証明する資格です。類似した資格に管理業務主任者がありますが、マンションオーナーを目指す方はマンション管理士が適しています。

合格率は2020年で8.6%非常に低く、今回紹介した不動産投資関連の資格の中でも最も合格率が低い資格です。しかし、資格を取得することができれば、マンションオーナーの立場から管理会社に不利な運用がなされないか判断しやすくなります。

7.不動産鑑定士

不動産鑑定士は不動産の鑑定評価に関する国家資格です。不動産の経済的価値を把握できるようになることで、物件の選定に役立ちやすいです。

合格率をみれば過去5年間で30%程度ですが、受験者数が2,000名を切っているので合格率はあまり参考になりません。資格の取得には不動産の鑑定理論に加えて、民法、経済学、会計学の知識が必要になるため、不動産投資関連の資格でも最難関になります。

必ずしも資格取得を目指すのではなく、勉強をするのであれば不動産の鑑定に関連する論点のみを抑えるのもよいでしょう。

不動産投資において資格は必要ではないが役立つことがある

不動産投資において専門性が必要な場面では専門家に相談できるので、必ずしも資格は必要ではありません。専門家に相談する場合はコストがかかりますが、それでも専門性を身につけるために必要な時間と比較すると、専門家に相談するほうがコストを削減できるでしょう。

しかし、自身の不動産投資に必要な知識が求められる資格取得を目指すことで、知識を得られるので勉強自体に意味があります。必ずしも役に立つとは限りませんが、学んできた知識を生かせることもあるので、初心者の方は資格取得を目指した不動産投資の勉強も検討してみましょう。