マンション投資は、長期にわたって家賃収入を得られることが魅力ですが修繕やメンテナンスが適切に行われないとマンションの資産価値が下がってしまいます。最悪の場合、建物管理が限界化する恐れもあるため、マンション投資を始める前に「限界マンション」について理解しておくことが大切です。今回は、限界マンションが生まれる理由と不動産投資家にできる限界マンション対策について解説します。

限界マンションとは?

限界マンションとは、建物の維持管理が困難となったマンションのことです。具体的には、以下のような状態のマンションを指します。

・ 空室が増加して建物管理ができない
・ 住人が減少して治安が悪化している
・ 修繕やメンテナンスが行われず廃墟のようになっている
・ 建物が寿命を迎えて崩壊の恐れがある

適切に管理されていれば築年数が古くてもマンションは問題なく稼働できます。しかしマンションは実物資産のため、定期的に修繕やメンテナンスが行われなければ劣化を免れることはできません。建物の状態が悪化すると資産価値が下がって空室率が上昇し最終的には限界マンションとなるリスクがあります。日本は、人口減少に伴い空き家が社会問題化しておりマンションも例外ではありません。

マンションの空き家の現状

総務省統計局が5年ごとに行っている「平成30年住宅・土地統計調査」によると2018年時点における全国の空き家は846万戸(空き家率13.6%)でした。空き家数は、年々増加傾向で1988年は394万戸(空き家率9.4%)でしたが2018年までの30年間で452万戸(114.7%)の増加となっています。空き家の内訳(建て方別)は、以下の通りです。

・ 一戸建:317万戸(37.5%)
・ 長屋建:50万戸(5.9%)
・ 共同住宅:475万戸(56.2%)

2013年以降は増加幅が縮小しているものの、共同住宅は全体の半分以上を占めておりマンションの空き家も深刻化していることが分かります。

参考:総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 結果の概要」
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/g_gaiyou.pdf

マンション寿命と築年数

鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションの場合、法定耐用年数は47年です。法定耐用年数は、あくまでも税務上減価償却費を計算するための年数で実際のマンションにおける寿命年数を意味しているわけではありません。そのため建物管理の状態によっては、築47年を超えても問題なく稼働できるマンションも多い傾向です。

例えばマンションのRC造(コンクリート)に関する研究では「鉄筋コンクリート造建物の物理的寿命は100年以上」と推定している研究結果もあります。近年は、中古マンションを購入してリフォームやリノベーションを行う方も増加していますが、マンションは築年数が古くなるほど資産価値が減少して空室が増える傾向です。

特に築年数が30年を超えるマンションは、限界マンションとならないように注意が必要となります。

限界マンションが生まれる5つの理由

限界マンションが生まれる主な理由は、以下の5つです。

築年数の経過による建物の劣化

マンションは、実物資産のため、築年数の経過とともに建物が劣化していきます。例えば外壁のタイルにひびが入ってしまうと雨漏りなどの被害が出る可能性があるでしょう。またエレベーターなどの設備も定期的に点検してメンテナンスを行わなければ安全に使うことはできません。修繕やメンテナンスが実施されないと劣化は早く進んでしまうため、限界マンションとなる可能性が高まってしまいます。

しかし適切に管理を行うことでマンション寿命を延ばすことは可能です。

居住者・所有者の減少

居住者や所有者の減少も限界マンションとなる原因の一つです。空室が増えると資産価値が減少したりスラム化したりすることで治安も悪化しやすくなります。マンションの買い手や入居者がさらに減っていく悪循環に陥ると最終的には限界マンションとなってしまいかねません。

修繕積立金の不足

マンションは、建物を良好な状態に保つために10~15年に1回の頻度で大規模修繕工事を行うのが一般的です。大規模修繕工事にかかる費用は、所有者が毎月支払う修繕積立金でまかなわれます。しかし所有者が減って修繕積立金が少なくなると工事費用の準備ができなくなる可能性もあるでしょう。積立金不足で適切な修繕を行うことができず建物が劣化して限界マンションとなるケースもあります。

修繕積立金の不足を解消するには、修繕積立金の値上げが必要です。しかし値上げが実施されると住居費の負担が増え収益物件としても利回りが下がるため、さらに空室が増加する可能性があります。

管理組合の機能不全

マンションの建物や設備などの共用部分は、管理組合が修繕計画などを策定して管理しているため、管理組合が機能しないと建物や設備が安全に保たれず劣化していく恐れがあります。投資目的の所有者が多いマンションの場合、遠方に住んでいて管理組合の総会に出席できない所有者も少なくありません。また組合活動に関心がない所有者も多く同じ人が長期にわたって理事長を務めるケースもあります。

管理組合が機能しないと建物管理会社と連携できなくなり限界マンションとなるリスクが高まってしまうでしょう。

マンションの建て替えが難しい

築年数が経過してマンション寿命が短くなった場合、通常は建て替えの話が出てきます。しかしマンションの建て替えを実施するには、区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成が必要です。さらに所有者は、建て替え費用を負担する必要があります。建て替えの間は、仮住まいが必要になるため、引っ越し費用や賃貸物件の家賃などもかかる点もマンションの住人にとってはデメリットです。

そのため経済的な余裕がない人は、費用を負担するのが難しいでしょう。特に高齢者が多いマンションの場合、5分の4以上の賛成を得ることは簡単ではありません。

不動産投資家にできる限界マンション対策は?

不動産投資家にできる限界マンション対策は、以下の通りです。

物管理が良好な物件を選ぶ

投資用マンションを購入するときは、物件価格や利回りだけに注目する方が多いのではないでしょうか。しかし長期にわたって安定した収入を得るには、建物の管理が良好な物件を選ぶことが重要です。適切に管理されているマンションであれば築年数が経過しても問題なく稼働できます。管理組合の総会資料や修繕積立金の残高、大規模修繕工事の履歴・計画などを確認することも大切です。

不動産投資を検討する際は、「建物管理に問題ないか」についてしっかりと確認したうえで物件を購入しましょう。

築古マンションには投資しない

築古マンションは、物件価格が安く利回りも高い傾向のため、収益物件として魅力を感じる人もいるでしょう。しかしマンションは、築年数が経過するほど建物が劣化しやすく限界マンションとなるリスクも高まります。家賃収入を目的に長期所有するなら築古マンションは避けたほうが無難です。築30年超のマンションへの投資は避けできれば築10年前後の築浅マンションを中心に探すといいでしょう。

築浅であっても建物管理の状況はしっかりと確認することが大切です。

築年数が古くならないうちに売却を検討する

所有中のマンションが限界化してしまうと売却したくても買主を見つけるのが難しくなります。家賃収入が目的であっても築年数が古くならないうちに売却を検討することが大切です。一般的にマンションの資産価値は築20年で新築の70%、築30年で新築の半分程度に下落しその後は下落ペースが緩やかになります。マンション価格の相場を確認しながら築30年を目安に売却を検討するといいでしょう。

まとめ

日本では、全国的に空き家が社会問題化しており建物の維持管理が困難な限界マンションも増えています。マンション投資を行う場合は、所有中のマンションが限界化することを事前に避けなくてはなりません。築古物件は、限界マンションとなるリスクが高まるため、家賃収入が目的であれば築浅物件への投資を検討しましょう。