転勤などで自宅マンションをしばらく使わない場合、賃貸に出して家賃収入を得ることを考えている方もいるかもしれません。自宅を居住用から賃貸用へ転用するには、どのような準備をすればいいのでしょうか。今回は、自宅マンションを居住用から賃貸用へ転用するときの手続きや費用、注意点について詳しく解説します。

自宅マンションを居住用から賃貸用へ転用するための準備

自宅マンションを居住用から賃貸用へ転用する場合に必要な準備をまとめました。

・ 金融機関に相談する(住宅ローンが残っている場合)
・ 賃貸借契約の種類を選ぶ
・ 賃貸管理会社を選ぶ
・ 収支計画を立てる
・ 確定申告について検討する

自宅マンションを貸し出す際にかかる費用や税金を把握して収支計画を立てたうえで手続きを進めることが大切です。住宅ローンが残っている場合、原則として賃貸に出すことはできません。ただし金融機関が「やむを得ない事情がある」と判断すれば認めてもらえる可能性もあります。まずは、金融機関に相談するといいでしょう。

賃貸借契約は「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類

自宅マンションを賃貸に出す際は、入居希望者と賃貸借契約を締結します。賃貸借契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。

普通借家契約と定期借家契約の違い

普通借家契約とは、契約更新が可能な賃貸借契約のことです。一般的に2年契約で2年ごとに契約が更新されます。普通借家契約では、正当な事由がない限りオーナーから契約更新を拒絶できません。一方、定期借家契約は、契約期間が満了すると契約が終了する賃貸借契約です。例えば契約期間が3年であれば入居者は原則として3年で退去しなくてはなりません。

再契約すれば契約期間満了後も住み続けられますが、オーナーの意向で再契約できないケースもあります。

普通借家契約と定期借家契約はどちらを選ぶ?

自宅マンションを賃貸に出す場合は、普通借家契約と定期借家契約のどちらかを選ぶ必要があります。契約を更新して住み続けられるため、普通借家契約のほうが入居者を見つけやすいでしょう。しかし普通借家契約にしてしまうと将来賃貸する自宅へ戻る予定の場合、希望する時期に入居者が退去してくれないことも考えられます。

定期借家契約であれば契約期間が満了すれば退去となるため、期間限定で貸し出すことが可能です。例えば3年後に転勤が終了して自宅に戻る予定なら定期借家の契約期間を3年に設定すれば転勤終了後は再び自宅で生活することができます。ただし定期借家契約は入居者を見つけにくく家賃を高めに設定するのが難しい点はデメリットです。

メリット・デメリットを比較して不動産会社のアドバイスも参考にしながら普通借家契約と定期借家契約のどちらを選ぶか検討しましょう。

賃貸管理について

自宅マンションを賃貸に出す場合は、入居者募集や入居者の審査、賃貸契約の手続き、家賃の回収、退去時のリフォーム、クレーム対応などさまざまな業務が発生します。ただしこれらの業務はすべて賃貸管理会社に委託することが可能です。自分で管理(自主管理)を行えば費用を抑えることができますが専門知識や経験がないと難しいため、賃貸管理会社に任せるのが無難でしょう。

賃貸管理の種類

賃貸管理を委託する場合、「集金代行」と「サブリース」の2つの選択肢があります。

・ 集金代行とは
賃貸管理会社がオーナーの代わりに賃貸借契約や家賃の回収といった賃貸管理業務を行うサービスです。集金代行を利用すれば自宅マンションを賃貸に出しても時間や手間はかかりません。一般的には、家賃の5%程度の費用がかかります。

・ サブリースとは
サブリース会社が収益不動産を一括して借り上げて入居希望者に転貸する仕組みです。賃貸管理業務も一括して任せることができ空室期間中も所定の家賃が保証されます。ただし保証賃料は、相場の80~90%程度です。また中途解約すると違約金が発生するケースもあります。

自宅マンションを賃貸用へ転用する場合、基本的には集金代行を利用するといいでしょう。立地や空室リスクによってはサブリースを検討してもいいかもしれません。ただしサブリースは契約後のトラブルも多発しています。金融庁や消費者庁、国土交通省からも注意喚起の通達が出ているため、利用を検討する場合はどんなトラブルが多いのかをあらかじめ確認しておきましょう。

賃貸管理会社の選び方

集金代行の場合、賃貸管理会社によって対応可能なエリアや物件種類が異なります。まずは、インターネットを利用して賃貸管理会社を調べてみましょう。賃貸管理会社を選ぶ際は、創業年や管理物件の入居率などの実績を確認して複数社比較することが大切です。

自宅を賃貸に出すときにかかる費用

自宅マンションを賃貸に出すときにかかる主な5つの費用をまとめました。

・ 管理費・修繕積立金
・ 賃貸管理の委託費用
・ 固定資産税
・ 火災保険料・地震保険料
・ リフォーム代

家賃収入でこれらの費用をまかなえるような収支計画を立てる必要があります。空室期間中は、家賃収入を得られません。また設備の故障などで急にまとまった費用が発生する可能性もあります。一定の利益を確保できるように空室リスクや修繕費用も考慮して家賃を設定しましょう。

自宅を賃貸に出すときの税金について

自宅マンションを賃貸に出して家賃収入を得た場合は、不動産所得として確定申告が必要です。不動産所得は、以下の算式で求められます。

不動産所得=総収入金額-必要経費

総収入金額は、家賃のほかに共益費や更新料、必要経費は固定資産税や減価償却費などが含まれます。不動産所得は、総合課税に該当し給与所得などと合算(損益通算)して所得税・住民税を計算することが必要です。自分で確定申告を行うのが難しい場合は、税理士に依頼することもできます。

住宅ローンが残っている場合は要注意

住宅ローンが残っている自宅マンションは、原則借り入れしている金融機関からの承諾を得ないと賃貸用へ転用はできません。なぜなら住宅ローンの資金使途は、利用者本人が住む物件の購入や増改築に限定されているからです。金融機関に相談せずに賃貸に出すと契約違反となり最悪な場合は残債の一括返済を求められるリスクがあります。

ただし転勤や家族の介護などが理由の場合、金融機関によっては「やむを得ない事情」として賃貸用への転用が認められる可能性もあるため、まずは金融機関に相談してみましょう。

不動産投資ローンへの借り換えを検討する

住宅ローンが残っているマンションは、不動産投資ローンへ借り換えすることで賃貸用への転用が可能となります。ただし住宅ローンに比べると不動産投資ローンの適用金利は高く、借り換えの際にはさまざまな手数料が必要です。不動産投資ローンへの借り換えでかかる主な費用には以下のようなものがあります。

・ 一括繰り上げ返済手数料
・ 事務手数料
・ 印紙税
・ 抵当権に関する費用
・ 団体信用生命保険料など

手数料の金額は、残債や金融機関によって変わってきます。事前に手数料の金額を確認したうえで賃貸用へ転用すべきか判断しましょう。

住宅ローン控除は利用できなくなる

住宅ローンが残っている自宅マンションを賃貸用へ転用すると住宅ローン控除が利用できなくなる点にも注意が必要です。住宅ローン控除は「居住用であること」が適用要件となるため、賃貸に出すと控除を受けられなくなります。住宅ローン控除による減税額が大きい場合、賃貸に出すとかえって不利にある可能性もあるため、注意しましょう。

売却も選択肢の一つ

自宅マンションをしばらく使わない場合は、売却することも選択肢の一つです。賃貸用へ転用すれば家賃収入を得られますが費用もかかるため、必ず利益を得られるとは限りません。売却代金で住宅ローンを完済し残ったお金を頭金にしてタイミングの良い時期に新居を購入する方法もあります。売却を検討する場合は、不動産会社に査定を依頼してみましょう。

自宅マンションを賃貸に出す場合は不動産会社に相談しよう

自宅マンションをしばらく使わない場合、賃貸用へ転用すれば家賃収入を得られる可能性があります。しかし不動産投資に関する知識や経験がないと何から手を付けたらよいか分からないかもしれません。自宅を賃貸に出すことを考えている場合、まずは不動産会社に相談してみましょう。