(画像:「スノーピーク」アウトドア用品メーカーの枠に収まらない孤高の戦略)

スノーピークといえばハイエンドなアウトドア・ブランドとして知られています。しかし実際には、アウトドア用品メーカーの枠に収まらない「自然×人×テクノロジー」を融合した独創的なコンテンツ提案企業です。同社は、どのように日本の社員研修やオフィス提案で変革を起こそうとしているのでしょうか。今回は、スノーピークの活動の中からビジネスソリューションズ事業をクローズアップします。

スノーピークが「アウトドア界のApple」と称される意味

はじめにスノーピークのアウトドア・ブランドとしてのポジションを確認していきます。スノーピークの立ち位置を言葉で表すと「先進」「斬新」「革新」の3要素となるでしょう。同社は「アウトドア界のApple」と称されることもあります。なぜなら以下のような共通点があるからです。

1. 高価格の正価販売を基本とする(※イベントやアパレルを除く)
2. 革新的なツールを開発し続ける
3. (ツールを通して)新たな価値を提案する
4. 富裕層のファンが多い

例えば上記2では、地面を焦がすことなくたき火を楽しめる「焚火台」やテント内で炭火が使える仕様の「ラウンジシェル」をはじめこれまでなかったアイテムを数多くリリースしています。


(画像=スノーピーク公式「ニュースリリース」)

上記3では、SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)で移動しながらオートキャンプを楽しむスタイルを1980年代後半から日本で広めて定着。4においては、スノーピークの前社長(現会長)山井太氏が著書の中で「熱狂度の高いスノーピークファンには以下の傾向がある」と分析しています。

・ 所得水準が高い
・ 都市部に住んでいる
・ 30~40代が多い

(参照:山井太著『スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営』)

スノーピークにとって社員研修やオフィス提案も重要なカテゴリ

上記の特徴だけでもスノーピークが他メーカーと一線を画すアウトドア・ブランドということが理解できるのではないでしょうか。スノーピークは、アウトドア用品メーカーのイメージが強い傾向です。しかし実際には、アパレルやキャンプフィールドの運営など計7事業を展開しています。この事業の一つが今回取り上げる社員研修やオフィス提案の「ビジネスソリューションズ事業」です。


(画像=スノーピークビジネスソリューションズ「ニュースリリース(PR TIMES)」)

ビジネスソリューションズ事業は、計7事業の中でアウトドア、アパレルに次ぐ3番目の売上を誇っています。(2020年時点)つまりスノーピークにとって社員研修やオフィス提案は、主要業務の一つなのです。

事業カテゴリ 2020年 前年比
アウトドア 131億5,000万円 +21億3,000万円
アパレル 21億円 +2億5,000万円
ビジネスソリューションズ 7億3,000万円 +8,000万円
キャンプフィールド 2億5,000万円 ±0
Snow Peak EAT 2億2,000万円 +1億4,000万円
地方創生コンサルティング 1億8,000万円 -6,000万円
アーバンアウトドア 1億8,000万円 +1,000万円

「出所:株式会社スノーピーク「ビジネスレポート 2020.1/1~12/31」

ビジネスに自然を足すと、発想が広がる、働きやすくなる

では、先進的なアウトドア・ブランド「スノーピーク(※)」が提案する社員研修やオフィス提案などのビジネスソリューションズ事業の中身はどのようなものでしょうか。

※ビジネスソリューションズ事業は、スノーピークの子会社「スノーピークビジネスソリューションズ」が提供しています。

まず同社では、ビジネスソリューションズ事業のミッションについて「自然とテクノロジーを融合させることで人間らしく働く人を増やすことで真に豊かな世界を創る」と解説しています。具体的な提供コンテンツは、以下の通りです。

研修×アウトドア:なぜ、アウトドアの環境で社内研修が必要か


(画像=スノーピーク公式「ニュースリリース」)

「不確実で変化の激しい社会」への対応力を高められる
そもそもなぜアウトドアの環境で社員研修をする必要があるのでしょうか。社内メンバーでキャンプをするなら研修ではなく社内レクリエーションでもよいのではないでしょうか。この点についてスノーピークでは「キャンプ生活は人間の思い通りにならないものなのでアウトドア研修によって不確実で変化の激しいこれからの社会への対応力を高められる」と解説しています。

たしかにキャンプ生活は思い通りにならないことの宝庫です。天候や地形、さらにはアウトドアに不慣れな人にとっては作業自体にも四苦八苦してしまうでしょう。なお同社ではアウトドア研修で得られる効果として以下の6つを定義しています。

キャンプワークを基本に各社の研修目的に合わせてアレンジ
これまでの社員研修と一線を画すスノーピークのアウトドア研修の基本プランは、以下の内容から構成されます。

1. テント設営
2. アウトドア会議(メインコンテンツ)
3. チーム全員で食事の用意?後片付け
4. 焚火トーク

アウトドア会議は、メインコンテンツとなっており従来の会議とは異なる環境で会議を行うことで発想が広がりやすくなったりコミュニケーションがとりやすくなったりすることが期待できます。焚火トークは、焚火を囲むことで本音を語りやすい効果が得られるでしょう。この基本プランをベースにしながらそれぞれの会社の研修目的に合わせてコンテンツ化するのがスノーピークのアウトドア研修の流れです。

[研修目的例]
・ チームビルディング研修
・ クリエイティビティワーク研修
・ ビジョンシェアリング研修
・ 管理職マネージメント研修
・ 共創ファシリテート

ちなみに費用例としては、新入社員研修の場合、参加人数は10名から予算は1人あたり4万円~の設定になっています。

アウトドア研修の一例:ドトールコーヒー
一例としては、全国にコーヒーショップを展開するドトールコーヒーが経営層向けのアウトドア研修を実施しています。なおこの研修では、以下の3つの目的が設定されました。

・ 新しいものを生み出していけるリーダーシップを磨くこと
・ DNAを次世代へ引き継いでいくこと
・ 役割や部署を超えた、新たな関係を再構築するきっかけをつくること

ドトールコーヒーの人事部長は、社内研修後に以下のように語っています。

「キャンプで思考の幅を広げることができたのは大成功でした。 また、普段接点が少なかったメンバー同士をつなげられたのは、とても大きかったと感じています」
引用:スノーピーク公式サイト「導入企業事例」

オフィス×アウトドア:なぜ、オフィスにキャンプ用品が必要か


(画像=株式会社 3eee「プレスリリース(PR TIMES)」)

スノーピークでは、オフィスの一角や会社の敷地などにテントやテーブル&チェアなどのアウトドア用品を置く「キャンピングオフィス」を提案しています。オフィスとアウトドアを融合させることで新しいアイデアを生み出したり社員の心をリラックスさせたりする効果があるそうです。もともとスノーピークは、社員が心地よく働けるオフィス環境を追求してきた企業。

そのノウハウを転用したのが「キャンピングオフィス」といえるでしょう。例えばスノーピーク本社のオフィス空間は、いたるところに自社のアウトドア用品がレイアウトされているのが特徴です。敷地には、なんとアウトドアができるキャンプフィールドがあります。またかなり早い段階から社員が自由な席で仕事ができるフリーアドレス制度を採用。

そのほかにもオフィス内にストレッチマシンや置いたり社員専用のフィットネスルームを完備したりしています。

スノーピークは次の日本発のグローバルブランドになれるか

スノーピークは、今回紹介した「ビジネスソリューションズ事業」以外でも自社の強みを活かしながら「自然×人×テクノロジー」をテーマにしたコンテンツを提供しています。例えば自治体などを支援する「地方創生コンサルティング」など。国内では、アウトドア用品やアパレル、ビジネスソリューション、地方創生コンサルなど多角的に展開し海外展開も着実に進めているのが現在のスノーピークです。

アウトドア用品メーカーの枠におさまりきらない同社は、売上・営業利益ともに右肩上がりの躍進が続いています。

今後、スノーピークがソニーやユニクロ、任天堂のような日本発のグローバルブランドになれるのかに注目したいところです。