八木チエ
株式会社エワルエージェント 代表取締役|宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーなどの資格を持ち、中立的な立場で不動産投資に関連する情報をお届けします。書籍、メディアなどに記事掲載の実績多数。

不労所得とは、労働の直接的な対価として得る資金や報酬以外の所得のことです。1日中多忙な日本のビジネスパーソンにとって不労所得でもう一つの収入源を手に入れることは、生活に余裕をもたらすうえで大きなアドバンテージとなります。そこで今回は、不動産投資で不労所得を得る仕組みに関してメリットや注意点などを解説します。

不労所得を不動産投資で得る仕組み

「不動産投資で不労所得を得る」とは、どのような仕組みにより成り立っているのでしょうか。計算方法や経費の考え方をあわせて解説します。

不動産投資の不労所得とは

不動産投資で得られる不労所得には「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類があります。インカムゲインとは、賃貸経営で家賃収入を得る方法です。一方キャピタルゲインとは、取得した物件を購入価格よりも高値で売却しその差額を不労所得とする方法を指します。バブル後の日本では、不動産価格の変動は安定傾向のため、キャピタルゲインよりもインカムゲインを主眼においた不動産取引が一般的です。

収益物件は、必ずしもアパートやマンションなどの居住用物件だけではありません。駐車場やコインランドリーなど定期収入を得るうえでさまざまな不動産投資先もあります。

不動産投資における不労所得の計算方法

投資マンションを購入した場合、不労所得は以下の通り計算できます。

不動産収入=物件価格×表面利回り

表面利回りとは「物件価格に対してどのくらいの家賃収入が得られるか」という表面的な収益性を示す数値です。例えば3,500万円の物件の表面利回りが年5%の場合、年間で得られる家賃収入は以下のように概算できます。

3,500万円(物件価格)×5%(表面利回り)=175万円(年間家賃収入)

つまり単純計算すると毎月約14万6,000円の家賃収入を得られる試算となります。ただし表面利回りの計算方法は、物件が常に満室の状態を想定しているものです。そのため空室が生じた際には得られる収益がその分少なくなります。

不動産投資における経費とは

不動産投資では、収益だけでなく「運用で必要な経費がどれくらいか」の把握も重要です。例えば不動産投資における代表的な経費として以下のような項目が挙げられます。

・ ローンの金利
・ 保険料
・ 管理会社への管理委託料
・ 管理費や修繕費
・ 仲介手数料や広告宣伝費など入居づけのための費用
・ 固定資産税や不動産取得税などの税金
・ 建物部分の減価償却費

家賃収入からこれらの必要経費を差し引いた手残り現金がキャッシュフローです。物件を所有して家賃収入を得ていてもすべてが手元に残るわけではない点にご注意ください。

不動産投資の特徴

不動産投資以外にも株式やFX、仮想通貨など多種多様な投資手法があります。不動産投資と他の投資手法との大きな違いは「リターン元」です。不動産投資は、毎月入ってくる家賃収入がリターンとなるのに対し株式投資やFX、仮想通貨などは値上がり益や現物取引、先物取引としての差額が投資利益となります。

また不動産投資は、株やFXと違って物件を購入し人に貸して家賃が発生する点も異なります。そのため家賃収入を安定的に得るためには、物件を購入して終わりではなく継続的な入居者の確保が重要です。株式投資では、株式市場を通して売買を行い仕入れ値よりも高値で株を売却することで利益を出す方法を行う人が多くいます(保有して配当などを得る運用方法もあります)。

しかし不動産投資は購入後もその物件が安定的に利益を生み出すように管理運営する点で異なります。

不労所得を不動産投資で得るメリットと注意点

不労所得を不動産投資で得るには、どのようなメリットや注意点があるのでしょうか。

メリット

不動産投資のメリットは、事前に綿密な投資戦略を立てることで安定的かつ継続的な不労所得が得られる点です。投資の元手となる資金を金融機関から融資を受けて、経費や返済を差し引いたキャッシュフローが黒字となれば本業での収入以外に家賃収入としての副収入が得られます。また不動産投資は、不動産所得が赤字の場合、損益通算により本業の所得を圧縮し支払った所得税や住民税の還付を受けることが可能です。

そのため節税効果が期待できる点が特徴的です。そのほか不動産での相続のほうが現金よりも相続税評価額を下げられるため、相続税の節税効果も期待できます。

注意点

一方、不動産投資には注意すべき点もあります。例えば物件を取得しても入居者がいないと家賃収入はゼロになる点です。また空室にならなくても家賃の支払いが滞ると、家賃収入は途絶えてしまいます。空室リスク軽減の対策としては、入居づけに強い管理会社をパートナーにすることや需要の高い立地選びなどがポイントです。

さらに建物は、築年数とともに家賃が下落する傾向にあります。家賃が下落するとキャッシュフローも低下するため、当初の投資計画よりも収益性が下がる可能性に注意が必要です。なお家賃下落を防ぐには、定期的なリフォームがポイントです。日ごろからリフォーム費用を積み立てることで必要なときに設備の交換やリフォームなどができる状態にすると家賃が下がりにくく、物件価値を維持できます。

ビジネスパーソンが不動産投資で不労所得を得ている事例

例えばビジネスパーソンが都心で中古マンションを購入しさらに収入を安定化させるために買い増しをした場合、賃料収入を月20万円以上、キャッシュフローは黒字にすることも可能です。基本的に都心の物件であれば賃貸ニーズが高く空室になりにくいといわれています。そのため人気のあるエリアの物件を購入することができれば空室リスクを下げることが期待できるでしょう。

また物件の管理を管理会社に依頼すれば、忙しいビジネスパーソンでも手間をかけずに安定した収入が期待できます。

不動産投資で不労所得を得る際のポイント

不動産投資で不労所得を得る際のポイントを4つ解説します。

信頼できる不動産業者とつながりを持つ

不動産投資で安定的に収益をあげるには、不動産運用の管理をきちんと行えているかがポイントです。不動産投資の経験が少ない方の場合、優秀な不動産管理会社を見つけることでほとんどの作業を委託できるため安心です。信頼できる不動産業者は、実績や経験に基づいたアドバイスが豊富な傾向にあります。

まずは、信頼できる不動産業者とつながりを持つことで投資を長期的かつ安定的に軌道にのせることが期待できるでしょう。

必要な出費を明確にする

不動産投資をスタートする際は、自身が投資に充てられる資金を洗い出すことがポイントです。「どのくらいの資金を用意できるか」が明確になれば自身で購入する予算の上限や融資の必要性なども分かります。投資用資金を準備する際には、突発的な修繕や設備の必要性などの予期せぬ出金にも対応できるようにしましょう。

手元の投資資金を確保する

不動産投資は、融資を活用して物件の購入ができます。さらに入居者からの家賃を返済に充てることができるため、少ない自己資金でもスタートできる投資商品です。しかし上述したように不動産投資は突発的な修繕や空室になったときの返済など運営していくうえでさまざまなお金がかかる可能性もあります。

そのため、万が一の出費に備えて、生活費とは別にある程度の投資資金を手元に確保しておくことは重要です。

長期的な運用を目指す

長期運用によるインカムゲインを目的にするのが主流な不動産投資では、目先の利益にとらわれずに長く安定した運営を目指すことポイントです。将来の展望や動向を把握し「いかに長く安定して収益をあげられるか」を第一に考えて運用してください。不動産の将来性については、個人では把握しきれないことも多いため、信頼できる不動産業者に相談し最新の知識や情報を得るようにしましょう。

不動産投資に向いている人

不動産投資に向いている人の3つの傾向を解説します。

与信力の高い人

不動産物件の購入には、何千万円や何億円という大きなお金が必要なため、多くの場合は金融機関から借り入れるのが一般的です。しかし金融機関からの与信力が低く融資の審査に落ちてしまうと物件の入手は困難となります。与信力は、金融機関によっても異なりますが借り入れをする本人の収入や勤務先、勤続年数や貯蓄額などによって総合的に判断される傾向です。

金融機関との提携が多い不動産投資会社ならば状況によっては有利に融資を受けることも期待できます。

綿密な投資計画を立てられる人

不動産投資は、長期運用が主流となる投資のため、中長期的な見方をもって綿密な投資計画を立てなければなりません。投資中には、修繕や空室対策などさまざまな出費がある可能性も考慮して細かく配慮しながらのシミュレーションすることが必要です。

情報収集能力の高い人

よい物件や立地の情報は、表立って出回っているものばかりではないため、不動産投資では特に情報収集が重要といわれています。無数の情報から最適な情報を取捨選択するには、普段から多くの物件情報を自分で取りに行く姿勢が大切です。業者と密にコミュニケーションをとることでオフラインでしか知れないような優良物件の情報を入手できるケースもあります。

まとめ

今回は、不動産投資で不労所得を得るための基本的な仕組みについて解説しました。不労所得を得るうえで代表的な投資方法とされる不動産投資は、株式やFXなどの他の投資手法とは異なる特徴があります。長期運用を主眼とし物件購入後も長期的かつ安定的な投資運営ができるかどうかが重要です。本記事で紹介した内容をぜひ自身の投資戦略にお役立てください。