不労所得の投資先として太陽光発電に関心を持つ人もいるのではないでしょうか。しかし発電した電気の買取価格は年々下がっているため、「投資に値しない」という意見も見かけます。はたして今後も太陽光発電は不労所得になるのか、その基本的な仕組みとともに解説します。

太陽光発電の仕組みと投資方法

太陽光発電による投資の仕組みは、太陽光パネルで発電した電力を電力会社に売電して収益を得ます。太陽光発電の規模が10キロワット未満のものは、主に住宅の屋根などに設置し自家消費を主な目的としており投資用の太陽光発電は10キロワット以上の規模で行うのが一般的です。

1キロワットアワーあたり買取価格

電力の買取制度が始まった2009年以降、太陽光発電の普及とともに買取価格は徐々に下がり現在は以下のようになっています。

250キロワット以上 50キロワット以上250キロワット未満 10キロワット以上50キロワット未満 10キロワット未満
2020年度 入札制度により決定 12円 13円 21円
2021年度 入札制度により決定 11円 12円 19円
2022年度 入札制度により決定 10円 11円 17円
調達期間 20年間 10年間

太陽光発電の3つのメリット

太陽光発電の投資上のメリットは、主に以下の3つが考えられます。

国が買取価格を保証している

太陽光発電の電力における買取価格は「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」によって国が定めています。「太陽光発電が安定した投資」といわれる理由は、国や電力会社が破綻しない限り保証されると考えられているからです。

景気や社会情勢などの影響を受けにくい

エネルギー源が太陽光という自然のエネルギーのため、景気や社会情勢などの影響を受けにくい傾向です。他の投資のように市場動向に気を配り変化への対策を講じる必要も比較的少なく済みます。

維持管理に手がかからない

投資向けの太陽光発電の維持管理は、基本的に管理会社に委託するケースが多い傾向です。この点は、不動産賃貸投資と同様で本業を持ち副業で投資したい方に人気がある理由になっています。

太陽光発電の3つのリスク

一方で太陽光発電には、主に以下の3つのリスクが考えられます。

災害や故障による発電停止のリスク

太陽光発電設備が故障などで発電しなくなれば復旧まで売電収入が途絶えてしまいます。特に人里離れた場所にある太陽光発電は、修理に時間がかかることも予想され大きな収益損失につながる恐れもあるでしょう。そのため設備の保証や管理委託の修理対応などをしっかりと確認することが必要です。また大雪や台風、洪水など災害で設備が破損した際も発電が止まるため、収益を失います。

これらのリスクを踏まえると太陽光発電設備用の損害保険に加入することが必須です。

日照時間低下のリスク

近年の地球温暖化の影響で気候が変化し日照時間が短くなれば発電の収益計画が悪化する恐れがあります。また周囲に大きな日陰を作る建物などができた場合も太陽光パネルが光を受ける時間が減ってしまう可能性があるでしょう。以前のようにパネルの一部に日陰がかかっただけで広範囲のパネルが発電しなくなる製品は減りましたが日照時間自体が減れば発電量の低下は避けられません。

初期投資回収を遅らせてしまう可能性もあり固定価格の買取期間が決まっている太陽光発電では大きなロスとなります。

買取期間終了後のリスク

価格固定期間が終了した後に電力の買取先があるか不明瞭というリスクもあります。また固定期間以降も発電を継続するなら保険料や管理委託費、固定資産税など諸経費がかかるため、買取先がいるだけでなく収益がプラスになる単価となることも必要です。主に住宅用で用いられる10キロワット未満の買取制度では、固定期間終了後に東京電力をはじめ新電力と呼ばれる事業者が買取を行っています。

しかし単価は10円前後と決して高いものとはいえません。投資用の10キロワット以上では、買取期間終了後の単価はもちろん買取先も未知数です。

太陽光発電投資の始め方

すでに遊休地などを所有している場合は、太陽光発電の販売業者と商談して発電施設を建設すれば投資を始められます。しかし個人で新たに土地を購入し太陽光発電を建設して投資を始める方はあまり多くありません。なぜなら太陽光発電に適した土地を用意するには「日照条件の良い広い土地を見つける」「地権者と交渉する」「そのうえで造成する」といった手間や費用がかかるからです。

そのため土地を所有していない方が太陽光発電投資を始める場合、すでに発電施設が建築済みで稼働している中古物件を購入するケースが多くなっています。

不動産投資との比較

投資面で考えると太陽光発電と不動産投資にはどのような違いがあるでしょうか。

初期費用
中古市場の相場は、太陽光発電は50キロワット前後のパネル容量で2,000万円前後の物件が多く見られます。これは、都心の中古区分ワンルームマンションに近い初期費用です。また購入にローンが利用できることも共通点です。

安定性
太陽光発電の電力売却先は電力会社のため、支払いが滞ることは考えにくいでしょう。また国が価格を保証している点も大きな安心材料です。そのため不動産投資の空室や家賃滞納のリスクと比べると安定性は高いといえます。

維持管理
太陽光発電も不動産投資も維持管理を委託すれば手間がかからないのは同じです。しかし太陽光発電の一般的な管理費は、年20万円前後、故障や災害被害を随時見守る遠隔監視システムを導入するとプラス年10万円程度が必要となります。合計すると年間収益の20%程度の管理委託料となるでしょう。発電施設の規模によってはさらに高額になる可能性もあります。

そのため不動産投資の管理委託料相場となる家賃の5%程度と比べるとかなり高額です。

故障や災害被害からの復旧

規模の大きな投資用の太陽光発電は、日照条件の良さや土地代の安さなどから地方の人の少ない立地に設置されることがあります。そのため自然災害による被害に遭っても管理会社や修理業者がすぐに対応できず発電がしばらく止まる可能性も否めません。この点は、特に都心にある不動産建物のトラブルのほうが迅速に復旧できると考えられます。

初期投資が回収できるのか

太陽光発電の販売業者サイトでは、「15~16年程度で初期投資が回収できる」としているシミュレーションが多い傾向です。初期投資回収後は、売電がプラス収益となり発電規模によっても異なりますが買取固定期間終了までに数百万円~1,000万円近い収入を見込む物件もあります。しかし太陽光発電にはシミュレーションには現れない将来の撤去や処分のリスクが潜んでいます。

固定期間終了後は太陽光パネルを撤去

太陽光発電を設置した土地を買取固定期間で借りている場合、期間終了後は土地をもとの状態にして返却する契約が一般的です。当然パネルなどの撤去費用がかかりますが多くの太陽光発電の収支シミュレーションは、この費用を含めていません。自己所有の土地であったり借地契約を更新したりすれば買取固定期間が終わった後も発電を続けることは可能です。

しかし前述したように「期間終了後の電力の買取先が不明瞭」といった問題があります。また太陽光パネルは寿命が25~30年といわれており結局は固定期間が終わって間もなく撤去費用がかかる可能性がある点は懸念材料の一つです。

太陽光パネルの撤去・処分コストの問題

自己所有の土地なら寿命が尽きた太陽光パネルをそのまま放置すれば良いと思うかもしれません。ところがパネルは、種類によって鉛やセレン、カドミウムなどの有害物質が含まれています。これが流出すれば環境破壊の懸念があり周辺住民から苦情が寄せられる恐れもあるのです。太陽光発電の販売業者のサイトでは、以下のような意見もあります。

・ パネルはリサイクル可能で有価買取される
・ 処分費はほとんどかからない

しかしこれから役目を終えた廃パネルが大量に発生するため、買取されずに産業廃棄物として高額な処分費がかかる可能性もあるでしょう。国でも寿命を迎えた太陽光パネルが処分されずに放置されたり不法投棄されたりすること懸念しています。そのため今後は源泉徴収的に電力の買取価格から撤去・処分費用の積立金を徴収する施策も検討されています。

太陽光は将来の処分まで責任を持つ投資

資産寿命の長い不動産の建物なら収益化後に売却するという出口戦略が取れます。しかし寿命の短い太陽光発電では、収支の分岐点となる15~16年を過ぎてからの売却は難しく撤去・処分費の負担を想定しなければなりません。たしかに手間がかからない点で太陽光発電は不労所得になり得ます。しかし見通しの立てにくい十数年先の最終処分まで責任を持つことを承知して行う投資といえるでしょう。