T.S.MarketingLAB
不動産ポータルサイト運営企業でマーケティングを担当していた経験を活かし、不動産市況・業界動向・エンドユーザーのトレンドについて、各種メディアでライターとして情報発信を行うほか、不動産会社のコンサル・業務課題ソリューションなども手掛ける。
不動産投資の成否は「物件選びがすべて」といっても過言ではありません。利回りだけで物件を選定した結果、「空室率が想定外に高くなってしまった」「修繕で思った以上の出費があった」といった理由で投資を失敗することはよくある話です。一方で「物件を目利きする力」「マーケットのニーズを汲み取るマーケティング力」といった能力があれば掘り出し物件を見つけることができるかもしれません。
この記事では、株式会社東京カンテイの調査「眺望の価値を可視化する」から都心タワーマンションの眺望の価値に関する調査結果を紹介します。あわせて動産会社のマーケティング力という観点から投資物件の選び方についても解説します。
株式会社(株)東京カンテイ「眺望の価値を可視化する」概要
・ 集計対象 東京23区に所在するタワーマンション(最高回数20階以上)424棟(建築中を含む) ・ 集計単位 |
株式会社東京カンテイ「眺望の価値を可視化する」調査結果
東京23区内新築タワーマンションの開口部別坪単価
以下の表は、東京23区内のタワーマンションの平均坪単価を各物件の開口部の向き別にまとめたものです。
東京23区内のタワーマンションで「東西南北」を主開口部に持つ物件の平均坪単価
南向き | 東向き | 西向き | 北向き | |
東京23区平均 | 342万8,000円 | 329万6,000円 | 322万9,000円 | 315万3,000円 |
南向き=100 | 100 | 96.1 | 94.2 | 92 |
引用:株式会社東京カンテイ「眺望の価値を可視化する」
南向きの物件の平均坪単価が最も高い傾向です。最も安い北向きと比較すると平均約8%の差があります。
都心のランドマーク「東京タワービュー」の価値
港区三田のタワーマンションのケース
では、眺望のよい物件の住戸価格はどのようになっているのでしょうか。以下の表は、東京都港区三田に所在する36階建てタワーマンションの分譲時の平均坪単価を階ごと・開口部の向きごとに比較したものです。
北東側に東京タワーがあるマンション(港区三田)の平均坪単価比較(一部を抜粋)
階層 | 南向き | 東向き | 西向き | 北向き |
33階 | 100 | 103.6 | 122.4 | 90.8 |
32階 | 100 | 非分譲 | 139.5 | 103.6 |
31階 | 100 | 非分譲 | 139.3 | 103.7 |
30階 | 100 | 119.2 | 102.9 | 101 |
29階 | 100 | 119.5 | 103.1 | 101.2 |
28階 | 100 | 119.4 | 103.5 | 101.7 |
全体(4階~36階) | 100 | 111.3 | 101.5 | 100 |
備考 | 各階の南向きを100として比較 | 東京タワービュー | 31階以上で東京タワーの一部が見える | 東京タワービュー |
引用:株式会社東京カンテイ「眺望の価値を可視化する」
当物件は、北東側に東京タワーが位置し直線距離で約700メートル程度の至近な距離に所在しているため、東京タワービューを間近で楽しむことができる物件です。そのため東・西・北向きのいずれの住戸も南向きと同じもしくは上回る平均坪単価となっています。特に西向きは、東京タワーを望むことができる31階を境に価格が大きく上昇しているのが特徴です。
全体で見ても南向きと北向きの価格が同水準で東京タワービューの価値が住戸の値付けに色濃く反映されていることが分かる結果といえるでしょう。
品川区東五反田のタワーマンションのケース
東京タワーから少し離れたタワーマンションの価格と東京タワービューの相関について見てみましょう。以下の表は、東京都品川区東五反田に所在する44階建てタワーマンションの分譲時の平均坪単価を階ごと・開口部の向きごとに比較したものです。
北側に東京タワーがあるマンション(品川区東五反田)の平均坪単価比較(一部を抜粋)
階層 | 南向き | 北向き |
44階 | 100 | 92.8 |
43階 | 100 | 115.2 |
42階 | 100 | 100 |
41階 | 100 | 100 |
40階 | 100 | 100 |
全体(4~44階) | 100 | 94 |
備考 | 各階の南向きを100として比較 | 東京タワービュー |
引用:株式会社東京カンテイ「眺望の価値を可視化する」
当物件は、北北東に東京タワーが位置し直線距離で約4キロメートルの場所に所在する物件です。低層階は、物件の北側に16階建てのビルが隣接している関係で北側の価格は下落しています。しかし高層階では、南向きと北向きはほぼ同じ価格水準です。東京タワービューによる価格の上昇幅は、中には15ポイントほど上回る物件もありますが港区三田の物件ほどの差はありません。
港区台場のタワーマンションのケース
最後にお台場に所在する「東京タワー+レインボーブリッジビュー」の物件について見てみましょう。以下の表は、東京都港区台場に所在する33階建てタワーマンションの分譲時の平均坪単価を階ごと・開口部の向きごとに比較したものです。
北西側に東京タワー、西側にレインボーブリッジがあるマンション(港区台場)の平均坪単価比較(一部を抜粋)
階層 | 南向き | 西向き | 北向き |
30階 | 100 | 121.1 | 109.8 |
29階 | 100 | 120.8 | 109.5 |
28階 | 100 | 120.5 | 109.2 |
27階 | 100 | 120.1 | 108.8 |
26階 | 100 | 124.6 | 106.1 |
25階 | 100 | 123.7 | 104 |
全体(2~33階) | 100 | 110.2 | 97.2 |
備考 | 各階の南向きを100として比較 | 東京タワー+レインボーブリッジビュー | 東京タワービュー |
引用:(株)東京カンテイ「眺望の価値を可視化する」
当物件は、北西に東京タワーが位置し直線距離約4.5キロメートルの場所に立地。レインボーブリッジは、西に位置し直線距離約1.5キロメートル離れた場所にあります。また距離は大分離れますが北にはスカイツリーを望むことも可能です。東京タワーが北西、レインボーブリッジが西側にあるため、西向きの住戸の価格が上昇しており中には南向き住戸よりも20ポイント程度上回る住戸もあります。
全体でも西向きが10ポイントほど上回る結果です。南西側には、13階建てのビルがあるため、その分は差し引きされるものの東京23区の価格差(西向きは南向きに比べて-5.8ポイント)を加味すると価格差は大きいといえるでしょう。
「眺望の価値を可視化する」レポートのまとめ
ここまで株式会社東京カンテイが行った「眺望の価値を可視化する」について特筆点を取り上げてきました。ポイントは以下の通りです。
・ 東京タワービューのマンションにおいては、向きにかかわらず10~25%程度(住戸によっては最大40%程度)の価格の上乗せ(プレミア)がある
・ 都心物件においては「南向きの日当たり」よりも「東京タワービュー」「レインボーブリッジビュー」といった都心の眺望に価値を見出す消費者が一定数存在する
不動産投資物件を選ぶ際のポイント
投資物件の選び方は、不動産会社から候補物件(複数)を紹介してもらいその中から絞り込んでいく方法が一般的です。その際には、不動産会社から良い物件(候補)を紹介してもらうことがポイントとなります。そのため不動産会社(=担当者)の提案力が自分に合っているものかについてしっかりと見極めることが重要です。
提案力の高い不動産会社とは、具体的にどういった会社を指すのでしょうか。例えばオーナーとのコミュニケーションを通じて課題やニーズの把握、費用対効果の検証などを通じて納得感のある提案を行うことができるマーケティング力がある会社です。今回紹介した「眺望の価値を可視化する」は、東京タワービューの希少性を顧客における価値として可視化した不動産マーケティングの好例といえます。
マーケティングは、誰も気づいていない価値の発見・可視化することが重要です。オーナーが気づいていない価値を見出しその価値によって課題・ニーズを解決できるかどうかを不動産会社の相談会やセミナーでしっかりと見極めるようにしましょう。