八木チエ
株式会社エワルエージェント 代表取締役|宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーなどの資格を持ち、中立的な立場で不動産投資に関連する情報をお届けします。書籍、メディアなどに記事掲載の実績多数。

女性に向いている投資先として、不動産投資が注目を集めています。しかし、FXや仮想通貨などさまざまな投資先があるなかで、不動産はなぜ女性にとって魅力的な投資先なのでしょうか。今回は、女性こそ不動産投資をすべき理由について、メリットや注意点などを交えて解説します。不動産投資に興味のある女性はぜひご一読ください。

女性の不動産投資が注目を集める社会背景

まず、女性にとって不動産投資が魅力的な投資先と考えられている社会背景を解説します。

女性の生涯未婚率の上昇と晩婚化

不動産投資が女性に注目を集めている一因として、女性の生涯未婚率の高さが挙げられます。国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集2021年度版」によると、50歳の時点で未婚の女性は2015年には約14.1%でした。女性の経済力アップや自立心の向上もあって、晩婚化も進んでいます。未婚率は年々上昇傾向にあり、この流れは今後も続くと考えられます。

女性の賃金増加

医師やエグゼクティブ職などに携わる女性のなかには、自分の財力だけで十分生活できるほどの経済力をもつ人も少なくありません。職場での男女平等も少しずつ進み、女性を管理職や重要なポストに積極的に据えようとする会社も増え始めています。マネーリテラシーの高い女性は、労働の対価としての収入だけでなく、不動産収益という不労所得からもう1つの収益を得たいと考えています。

女性の平均寿命の長さ

日本女性の平均寿命はかなり長いため、安心して老後を暮らすための資金として不動産への投資が選ばれています。厚生労働省の「令和元年簡易生命表の概況」によると、女性の平均寿命は87.45歳です。男性の平均寿命81.41歳より約6歳長く生きるわけです。平均寿命が長いことは、その分だけ老後資金が必要という意味です。平均寿命は年々増加傾向にあり、今後も女性にとって長生きリスクへの備えは必須といえるでしょう。

女性が不動産投資で得られるメリット

女性が不動産投資を始めると得られるメリットを解説します。

女性の感性を生かせる

人口の減少が続く日本で安定した不動産経営をするには、他物件との差別化がマストです。そして、競合物件との差別化をするうえで、女性の視点や心配りが大きな強みとなるケースがあります。

ライフイベントやライフプランの変化に対応しやすい

不動産投資は、ライフプランの変化にも柔軟に対応できます。女性のなかには、結婚や出産などを機に、ライフスタイルに大きな変化が起こる人もいます。住んでいる場所や就業の状況に関係なく自分のペースで投資ができる分、自分の時間を確保しにくい女性でも継続しやすい投資先といえます。

公庫の融資で女性優遇制度を活用できる

日本政策金融公庫には「女性、若者/シニア起業家支援資金」があります。不動産投資を事業として行えば、女性が低金利で公庫から融資を受けられる優遇制度を活用できます。公庫での創業融資は返済期間が短い点には注意ですが、30代の社会人になると銀行からの信用力も高まる年代となるため、不動産投資を比較的有利にスタートできる傾向にあります。

老後の年金不足問題に備えられる

不動産投資は年金不足問題にも有効です。年金制度に過度に頼るのは心配な人も、20代や30代といった早期に不動産投資をスタートし、老後までにローン完済を実現できれば、その後は家賃収入がそのまま私的年金となります。投資物件に住めば家賃を支払わずに自分で住み続けることも可能です。

手間がかからず仕事と両立して続けられる

不動産投資はほとんど手間ひまがかからないため、仕事や家事、育児などで忙しい女性も両立して続けやすい投資先です。株やFXを個人で行うのと異なり、不動産投資は管理業務を委託できます。

ミドルリスク・ロングリターン

不動産投資はミドルリスク・ロングリターンの投資なため、一貫して慎重な価値判断が可能とされている女性に向いている投資先です。不動産の投資リスクは、FXや仮想通貨などほかの投資先とは違い中間的なポジションにあり、価値が急激に下落するリスクは低い傾向にあります。

小さな元手で大きな資産を残せる

不動産の購入には大きな資金が必要ですが、ローンを活用すれば自己資金だけでは購入できないような物件への投資も可能です。購入した不動産から毎月の家賃を得られますし、高く売却ができれば利益を得ることもできます。不動産を資産として、子どもや親族に相続させるうえでも有益です。現状では小さな資金であっても、ローンをうまく活用できれば大きな資産を残すことにつながります。

不動産投資で失敗を避けるためのポイント

不動産投資はメリットだけでなくリスク対策も重要です。失敗を避けるための主な3つのポイントを見ていきましょう。

将来的なニーズを見据えた立地選定

初めて不動産投資をする方は、まず東京の都心5区(千代田・中央・港・渋谷・新宿)にある、駅から徒歩圏内の区分マンションへの物件を検討してみましょう。都心5区のエリアは入居ニーズが高く、安定した家賃収入を見込める物件が多いため、将来的を見据えた立地選定が可能です。

いくら収益性の高い物件でも、空室が続けば利益はゼロ(ローン返済や維持コストも加味するとマイナス)です。いきなりリスクの高い立地の物件に投資したり、投資の手を広げすぎたりするのではなく、慣れてきたらさらに収益性の高い物件を狙っていく戦略も1つの方法です。

投資に対する高い意識をもつ

不動産の運営管理は外部に委託できますが、オーナーとしての責任は物件所有者(投資者)にあることを忘れないようにしましょう。不動産業者によっては、不動産の知識や管理に疎いことをいいことに不誠実な対応をするところもあります。継続して安定的な収益を得るためにも、まずは投資者自身が投資に対する高い意識をもち、できるだけ管理や運営を不動産会社に任せっきりにしないことがポイントです。

信頼できる担当者と組む

不動産投資初心者の人にとって、物件や立地選びと同様に信頼できる担当者と組めるかが成功のカギを握ります。「どのような立地のどの物件を選ぶか」「家賃はどのくらいに設定するか」は、不動産投資の入口戦略です。そして「購入後にどう管理運用するか」「最終的に物件をどうやって売却するか」という出口戦略も重要になります。

女性が不動産投資をする際の注意点

女性が不動産投資をする際に、特に注意すべき点はあるのでしょうか。主な3つのポイントを見ていきましょう。

物件の見た目にこだわりすぎない

女性は不動産投資において、物件のスペックや見た目を重視しがちな傾向にあります。確かにスペックや見た目も大切ですが、こだわりすぎはいけません。利回りや費用対効果を無視して進めると、結果として経営が苦しくなる可能性があります。長期的な投資を見据え、全体を俯瞰的に見ながら必要な箇所にメリハリをもって費用を投じましょう。

可能なら繰上げ返済をする

ローン返済は、返済期間が長くなるほど支払い利息も大きくなります。したがって、本業でボーナスが入った際や生活に余裕がある際にはできるだけ繰上げ返済をしましょう。繰上げ返済をすれば、結果として支払う必要のあった利息を大幅に抑えることが期待されます。ローンの繰上げ返済により支払い利息のムダを抑え、効率的な不動産投資を実現しましょう。

独身女性は融資を受けにくい場合がある

女性の社会進出や賃金上昇が進んでいる半面、独身女性は生活が不安定で収入に不安が残ると金融機関から判断され、融資を受けにくい場合があります。年収や職業などご自身の属性などを客観的に見て、融資可能な額を見定めながら、購入できる範囲の物件を探してみましょう。

不動産投資を始めるまでの流れ

最後に、不動産投資を始めるまでの流れを解説します。

不動産投資の基礎知識の理解

不動産投資を始めるにあたり、まずすべきことは不動産投資の基礎知識を身につけることです。最近は、本や不動産情報サイトなどから気軽に不動産投資に関する情報を入手できます。興味のある初心者セミナーに参加してみましょう。何も知らずに不動産投資をスタートさせるより、メリットやリスクなどを理解したうえで投資を始めるほうが、自分の資産を守りながら着実に増やしていける助けにもなります。

自己資金の洗いだし

不動産投資を実現できるかは、ローン審査に通るか否かが重要です。ローン審査の可否は自己資金をどれだけもっているかによっても変わります。そこで、ご自身が不動産投資にどれだけの資金を使えるか明らかにしましょう。自己資金を洗い出せたら、どのくらいの価格帯の物件について、どれくらいのローンと自己資金があれば購入できるかなど、具体的な投資戦略も描きやすくなります。

不動産会社への相談

ローンや物件などの情報は、個人だけですべてを入手するには限界があります。「より詳しく競合物件の情報を知りたい」「自分だけでは解決できない疑問がある」という方は、信頼できる不動産会社の担当者に相談しましょう。

ローン審査や契約

物件や自己資金の洗いだしができたら、金融機関にローン審査を申し込みます。ローンが通ったら契約となり、物件を購入して不動産運用の第一歩を踏み出します。

まとめ

ライフスタイルの変化や老後の資金問題への対応を迫られる女性にとって、不動産投資は最適な投資先です。不動産投資の基本的な知識を理解し、適切な立地の物件への投資でリスクは抑えられます。

また、立地や物件と同じくらい重要で、なおざりにしがちなのが担当者選びです。信頼できる担当者と組むことは、不動産経営の成功のカギを握るといっても過言ではありません。長期で安定的な運用を目指すためにも、担当者は慎重に選ぶようにしましょう。