押さえておきたい!看護師にできる節税対策
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新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント CFP®、一級FP技能士(資産運用)、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員 個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

自分の年収は知っていても「毎年どのくらいの税金を払っているのか」について正確に把握している人は少ないのではないでしょうか。もちろん働き方や世帯の状況によってどのくらいの税金を払う必要があるのかは異なります。しかしどのような対策を取るかで同じ働き方や同じ年収の人に比べて支払う税金額は変わる可能性があるのです。

できれば支払う税金は少なくしたいと思う人が多いのではないでしょうか。そこで本稿では、看護師の実態や節税対策について解説します。

看護師の実態 

厚生労働省が2020年に発表した「賃金構造基本統計調査」によると看護師の平均年収は約491万円でした。国税庁が公表している「令和元年民間給与実態統計調査」によると2019年度の給与所得者の平均年収は約436万円となっているため、それよりは少し高い水準に位置することが分かるのではないでしょうか。

また平均年齢は41.2歳(男性38.8歳、女性41.5歳)と男女ともに生涯にわたって働き続けることができるやりがいのある仕事であることが予想されます。ちなみに日本看護協会が公表している「2020年 病院看護実態調査 報告書」によると2020年における新卒の看護師(大卒)の初任給は、約20万8,918円でした。

医療福祉業の平均値となる約20万6,900円(2019年度)を多少上回るなど決して悪くはない賃金水準といえるでしょう。

看護師の働き方から考える節税対策 

看護師の働き方には「大学病院や一般病院など入院患者のケアを行う」「開業医の診療所など入院患者のケアが比較的少なく夜勤がない」など多岐にわたります。とはいえ病院や診療所に雇用されて働く形態となるため、ほぼ給与所得者に位置するといっていいのではないでしょうか。給与所得者は、基本的に自営業者と異なり経費という概念がないため、節税対策がしにくいと思われがちです。

しかし「収入からどのように所得税額が計算されるのか」という仕組みを理解しておけば給与所得者でも行える節税対策を上手に活用することができます。

所得税(累進課税制度)の考え方 

では、2021年における所得税の計算の仕組みについて確認していきましょう。日本の所得税は、累進課税制度のため、所得が多い人ほど税金を多く払う仕組みです。また所得税の計算方法(手順)については、以下のようになっています。

  • 額面年収からみなし経費としての給与所得控除を差し引いて「給与所得」を算出
  • 給与所得から各種所得控除(社会保険控除や基礎控除など)を差し引くと課税所得が算出できる
  • 課税所得に税率を乗じた金額が所得税額となる
  • 税額控除(住宅ローン控除など)がある場合は、所得税額から控除額を差し引くことができる

節税方法のポイントは2点 

所得税額の計算の仕組みについて解説しましたが所得税額の計算の際には、さまざまな控除があることが理解できたのではないでしょうか。節税のポイントは、控除枠を最大に利用することです。また計算の際には、課税所得を算出するための「所得控除」、所得税額からさらに控除できる「税額控除」といった異なる2つの控除がある点も押さえておきましょう。

所得控除の内容と増額方法

所得税の計算で使われる所得控除には、さまざまな種類があります。給与所得者の場合、共通して控除できるのが「給与所得控除」「社会保険料控除」「基礎控除」などです。これらの控除額は、給与収入額によって金額が決まることから各自で対策を行えるものではありません。また基礎控除については、2020年より改正されこれまで一律38万円だったものが48万円となりました。

ただし所得金額が2,400万円以上の場合、段階的に基礎控除が引き下げられることとなっています。他にも家族構成によっては「配偶者控除」「配偶者特別控除」など扶養家族に対する控除を適用することが可能です。自分が独自に支払っている生命保険料や地震保険料に応じた「保険料控除」を受けることもできます。

配偶者控除および配偶者特別控除については、本人の収入と配偶者の所得に応じて決められた金額の控除を受けることができる制度です。そのため1年間のそれぞれの所得額によっては、利用できる場合もあります。また扶養控除については、扶養の範囲をきちんと知っておくことで節税対策につなげることが期待できるでしょう。

例えば親と同居している際、所得の要件を満たし70歳以上の人であれば「老人扶養親族」として控除の対象となります。控除額については、同居しているかどうかで異なりますが病気のための入院であればそれが1年以上の長期にわたる場合であっても同居とみなされます。逆に老人介護施設などへ入所している場合は、施設が居住地となるため、同居老親とはいえません。

また所得控除における一番の節税対策といえるのが寄附金控除(ふるさと納税)です。ふるさと納税については、すでに実施されている人も多いかもしれません。自分の好きな自治体に寄附したり好みの返礼品から自治体を選んだりするなどふるさと納税を行うことで返礼品を受け取ることが可能です。ふるさと納税は、返礼品をもらえるだけでなく所得が大きい人ほど節税の効果が高くなります。

自身の給与収入や家族構成によって上限額が決まっており上限枠内であれば自己負担額2,000円を差し引いた全額が所得税および個人住民税から控除されるため、ぜひ活用してみましょう。

税額控除(住宅ローン控除)を活用する方法

税額控除の代表的なものの一つが年末の借入残高の1%が所得税および住民税から控除される「住宅ローン控除」です。看護師という職業であれば共働きの人も多いのではないでしょうか。その場合、住宅ローンを組む際にはペアローンを活用しそれぞれが住宅ローン控除の適用を受けることができるようにしておくとよいでしょう。ただし、ペアローンを組む場合はそれぞれの借り入れ分についてのみ団信の保障の対象となることから、どちらか一方が亡くなったとしても、自分の借り入れ分についての返済は続いていくことに注意が必要です。

住宅ローンは、高額な借り入れを行うことになるため、夫婦どちらか一人でローンを組んでいる場合は、その人の年収によっては控除しきれない可能性があります。所得税や住民税からも引き切れなかった控除分は、他の控除に充てることができないため、控除額を無駄にしないためにも夫婦で住宅ローンを組み年末時点のローン残高に対する控除額をしっかりと使い切る工夫も大切です。

寄附金は所得控除と税額控除どちらかを選べる

寄附金控除は、ふるさと納税だけではありません。例えば公益財団法人や社会福祉法人、その他ベンチャー企業に対して寄附を行った場合でも、寄附金控除の対象となります。また公益社団法人などに対する寄附については、所得控除(寄附金控除)と税額控除のどちらか有利なほうを選択することが可能です。ベンチャー企業への寄付については、所得控除もしくは投資額全額をその年の他の株式譲渡益から控除する方法を選ぶことになります。

(所得控除(寄附金控除)の計算式)

  • その年に行った寄附金合計額
  • その年の総所得金額等の40%程度

上記2つのいずれか低い金額から2,000円を引いた額

(税額控除の計算式)

  • その年に行った公益社団法人などに対する寄付金の合計額(その年の総所得金額等の40%相当額を上限とする)
  • 上記の金額に0.4を乗じた額(100円未満切り捨て)

(ただしその年の所得税額の25%相当を限度とする)

災害にあった際にも控除枠がある 

所得控除の種類にはさまざまなものがありますが、普段なかなか気にすることのない控除に「雑損控除」というものがあります。これは、災害や盗難などで自身の財産が被害を受けた場合に一定の金額が控除されるものです。なかには、火災保険などにオプションとして家財保険を付加している人も多いかもしれません。

しかし災害の程度や盗難の状況によっては、補償限度額以上の被害となるケースも十分に考えられます。その際に利用できるのが雑損控除です。雑損控除の金額は、以下の計算式で求められます。

  • 損害金額+災害等に関連したやむを得ない支出-保険などで補てんされる金額
  • 上記で算出した額を差引損失額とし以下の計算によって求められるいずれか少ない金額が雑損控除額
  • 差引損失額-総所得金額等×10%
  • 差引損失額のうち災害関連支出の額-5万円

ちなみにここでいう災害関連支出の金額とは、災害によって住宅が損壊した場合にそれを撤去する費用などを指します。さらに災害などに関連したやむを得ない支出には、災害関連支出の金額に加えて資産の原状回復にかかった費用を含めることが可能です。家屋の損壊については、火災保険である程度補償されるかもしれません。

しかし家財については補償上限額以上の損失となることも考えられるため、原状回復する費用も考えておくことが必要です。その際には、これらの控除の適用を受けることで税負担を軽くすることができます。さらにこのような災害にあった年の合計所得金額が1,000万円以下の場合は、災害減免法によって所得税の軽減免除を受けることも可能です。

災害によって被った損害額が住宅または家財の価格の2分の1以上という要件を満たす必要がありますが年収によって以下の通り所得税が免除されます。

(災害を受けたときの所得税の取扱い)

所得金額 所得税の減免割合
500万円以下 全額免除
500万円超750万円以下 2分の1免除
750万円超1,000万円以下 4分の1免除

ただし所得控除との併用はできません。そのため災害や盗難などで被害を受けた際には、所得控除や所得控除を受ける前の所得税の減免割合を計算し自分にとって有利なほうを選択するようにしてください。給与所得者が行える節税対策のポイントは、以下の2つです。

  • 各所得控除や税額控除の内容をしっかりと理解して漏れのないように活用する
  • 税額控除との選択が可能なものは、比較したうえで有利なほう選択する

給与所得者でも節税できる制度はいくつかあるため、少しでも税負担が軽減するよう利用できるものがないかを押さえておきましょう。

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