いつも使っているもののことほど意外と知らないものです。あなたは硬貨の表裏を聞かれてすぐに答えられますか?ここでは、現在日本で発行されている貨幣のどちらが表でどちらが裏なのかをご紹介します。

硬貨の表は金額がある面?それとも……

硬貨を見ると、金額が大きく書かれた面と図柄の入った面があります。硬貨の表裏を聞かれると、思わず金額が入った面を「表」と答えてしまいそうですが、実は「5円以外の硬貨は金額を書いた面が裏面」なのです。

なぜ「5円以外」なのでしょうか。

硬貨をさらによく見ると、それぞれに製造年が書かれています。硬貨の表裏の判断は、「硬貨の製造年が入った面が裏」とされています。

5円の場合、金額が書かれた面には製造年が入っていません。そのため、5円の表は金額が入っている方になるのです。

貨幣のデザイン・材質には社会状況が反映されている

貨幣のデザインや使用されている材質には、貨幣がつくられた当時の社会状況が反映されているといいます。貨幣それぞれのデザインと材質から読み取れる、製造当時の状況や込められた想いについて紹介します。

硬貨には何が描かれている?

硬貨には金額によって異なる絵柄が描かれていることはご存じでしょう。では、現行の硬貨にはそれぞれ何が描かれているのでしょうか。

硬貨の種類 デザイン
500円 竹、橘
100円 桜花 なし
50円 菊花 なし
10円 平等院鳳凰堂、唐草 常磐木
5円 稲穂、歯車、水 双葉
1円 若木 なし

10円の平等院鳳凰堂は有名ですが、5円のボーダーラインのような絵柄が水であることを知っている方は少ないでしょう。

その他の硬貨にも、意外にもたくさんの絵柄が入れられています。

1円の若木のデザインは、一般公募で選ばれたそうです。他の貨幣と違い、若木にはデザインのもととなる植物がないのも特徴です。当時、このデザインを選んだ大蔵省は、「戦後復興期の日本には、若々しく未来への希望を感じさせるデザインがいい」と考えたようです。

5円玉の稲穂、歯車、水は当時の日本の主な産業を表しています。稲穂は農業、水は水産業、歯車が工業にあたります。

材質の違いは?

硬貨の種類 素材 発行年
500円 ニッケル黄銅 2000年
100円 白銅 1967年
50円 白銅 1967年
10円 青銅 1959年
5円 黄銅 1959年
1円 アルミニウム 1955年

100円と50円は同じ白銅ですが、それ以外の貨幣は金額によって使用している素材も異なります。

500円が現在のデザインになったのは1982年のことです。しかし、2000年にデザインはそのままに素材だけ変えられています。これは偽造された500円が多く出回ったためで、偽造を防止するために素材を変え、同時にさまざまな偽造防止策がとられたそうです。

さらに注目したいのが1円です。実は1円を製造するコストは1円硬貨1枚あたり3円といわれています。1円をつくるごとに2円の赤字です。

2020年の1円の発行枚数は71万2,000枚ですから、約140万円の赤字が出た計算になります。なんとも不思議な話です。

キャッシュレス決済の浸透で出番が減った硬貨

硬貨のデザインには、発行当時のさまざまな想いや希望が込められています。しかしキャッシュレス決済の浸透で、硬貨にほとんど触らなくなった方も少なくないでしょう。次に硬貨を手にしたときには、改めてデザインを眺めてみてください。