田中タスク
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、自らの投資スタイルを確立。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中。

「経済的自由」という言葉を聞いて、最近はFIREを連想される方が多いのではないでしょうか。FIREの言葉そのものを連想しなかったとしても、早期リタイアなど、働かなくても自由に生きられるライフスタイルをイメージされる方はとても多いと思います。なぜなら、それは多くの方々にとって潜在的な願望であり、経済的自由が手に入るのであれば自由に生きたいと考える人がとても多いからです。

しかし、働かなくても自由に生きられるというのが夢や願望の世界であり、現実にはなかなか難しいと考えるのが一般的です。それが常識とされてきたところに登場したのが、FIREです。FIREとはどんな概念で、なぜここまで注目されているのか、そしてFIREと経済的自由にはどんな関わりがあるのか、今回はFIREと経済的自由について解説したいと思います。

お金に困らない人生の作り方と、そこから得られる幸せのあり方についても考察してみましょう。

「経済的自由」って、どんな自由?

そもそも経済的自由というのは、どんな自由のことをいうのでしょうか。話題になっているFIREは「Financial Independence, Retire Early」の略で、直訳すると「経済的な自立、早期リタイア」となります。経済的自由と意味合いの近い言葉で、経済的な自立(給料などの労働報酬をあてにしなくても生活ができる自立)を手に入れると自動的に経済的自由も手に入ります。

しかし、早期リタイア(アーリーリタイア)の概念は今に始まったものではなく、以前からありました。FIREとは何が違うのでしょうか。

この違いを知るうえで重要なのが、経済的自由です。投資や資産運用などでお金が入る仕組みを作り、そのお金だけで生活が成り立つようにすれば働かなくても生きていくことが可能になります。これが経済的な自立で、この状態をいかに早く作ってリタイアを実現するかというのが、FIREの基本的な考え方です。

すでに財産を持っている人、収入が高い人だけのものと思われてきたのが早期リタイアであれば、経済的自由を誰もが構築することができるのがFIREです。

経済的自由を手に入れる方法

それではFIREが想定している経済的自由は、どうすれば手に入るのでしょうか。「宝くじに当たる」など現実味の薄い方法ではなく、投資や資産運用でお金が安定的に入る仕組みを作るのが最も現実的です。

もちろん「起業して成功する」というのも現実的ではありますが、すべての人が起業すれば成功するわけではありませんし、そもそも誰もが起業したいと思っているわけではありません。ビジネスパーソンとして普通の生活をしている人が目指せるものでなければ、いかにFIREが素晴らしいものであってもやはり現実的ではありません。

そこでFIRE達成の方法として推奨されているのが、積立投資です。コツコツと積立投資をして複利効果も味方につけながら資産を増やし、いつしかその運用益だけで生活ができるようになればFIREの達成、つまり経済的自由の達成となります。

複利は経済的自由の重要キーワード

先ほど「複利効果」という言葉を用いました。これが経済的自由を手に入れるために味方につけるべきとても重要なキーワードなので、しっかりマスターしておきましょう。

複利とは運用益を含めて再投資を続けていくことで、資産が雪だるま式に増えていく仕組みのことです。借金をし過ぎると雪だるま式に増えてしまうといいますが、複利効果にはその逆もあります。運用益を再投資することで元本が増え、そこから得られる運用益はより大きくなり、それを再投資することで加速度的に資産が増えていくというわけです。

複利効果のパワーを知るのに便利な、「72の法則」があります。この法則を使って、72を運用利回りで割ると、資産が2倍になるまでの年数がわかります。例えばFIREが想定している4%の利回りだと、「72÷4=18」なので、18年後です。

30歳で始めれば48歳で、40歳で始めても58歳で資産が倍になります。しかも積立投資なら運用しながら積立によって元本も増えていくので、より経済的自由を手に入れるまでの年数は短縮されます。経済的自由を手に入れる方法は、複利効果を生かした積立投資であると言えるでしょう。

経済的自由の定義

次に、経済的自由を手に入れるために必要な元本の計算をしてみましょう。ここでは老後を想定して、老後の生活費を運用益で得るために必要な投資元本を算出すれば、経済的自由に必要な資産額がわかります。

それでは、計算してみましょう。

公益財団法人「生命保険文化センター」の試算によると、老後に夫婦2人が生活していくのに最低点必要な費用の月額は22.1万円です。FIREでは一般的に運用利回りを年利4%と想定しているので、以下の計算式が成り立ちます。

22.1万円×12か月÷0.04=6,630万円

6,630万円の投資元本があれば、4%の運用益だけで毎月約22万円の生活費をカバーすることができることがわかりました。問題は、この6,630万円が決して小さな金額ではなく、果たしてこれだけの資産を形成できるかどうかです。

誰でも経済的自由は手に入るか

6,630万円という1つの具体的な数字が出てきたところで、その感じ方はさまざまでしょう。「そんなに必要なのか」「これだと現実味がない」と感じる方がいるかもしれません。やはり一部の資産家やお金持ちだけのものだと思ってしまうと現実味が感じられませんし、夢もありません。そうではなく、定職に就いている人であれば誰もが経済的自由を手に入れられることを想定しているのが、FIREです。この部分が、多くの人からFIREが注目される理由でもあります。

それでは、現実味を感じられるようなシミュレーションをしてみましょう。毎月10万円の積立投資をして、その利回りが4%だとします。運用益を再投資することで複利効果を生かすと、30年後には6,875万円となって先ほどご紹介した目安を突破します。もちろんこれは毎月10万円の積立をした場合であり、これが15万円や20万円となるとさらに効果は大きくなります。

標準的なサラリーマン収入だと毎月15万円や20万円というのは難しいかもしれませんが、共稼ぎの夫婦であればそれほど難しくないという方も多いのではないでしょうか。特に当メディアの読者層の方々は所得の高い方が多いため、こうした金額の積立投資が可能だと感じるかもしれません。それだけの金額を積立投資に回すことができれば、経済的自由を手に入れることは十分可能だということです。

毎月の積立額を大きくすることはもちろん有効なのですが、複利効果を発揮するのに重要なのは「時間」です。なぜなら、運用期間が長くなればなるほど複利効果は大きくなり、経済的自由の達成も現実味が増してきます。現役世代の方はどうしても毎月の支出が多くなりがちなので積立投資に回すお金がなかなか残らないと思うかもしれませんが、たとえ少額であっても運用期間を長くとることが重要です。

また、どんな投資商品で運用するとしてもほとんどの投資商品は元本保証ではなく、価格の変動があります。価格の変動によって損失を出してしまうことがリスクだと感じるかもしれませんが、これも運用期間を長くすることで抑えやすくなります。

毎月一定の金額を積み立てていくことで、金融商品の価格が高いときには少なく買い、価格が低いときには多く買うことができます。これを続けていくことで購入価格が平均化され、その期間が長くなるほど価格変動のリスクを分散することができます。この手法は「ドルコスト平均法」と呼ばれ、長期投資のリスク管理に有効性が高いとされている手法です。

今すぐ多額の投資資金を用意できない方であっても、毎月一定額なら可能だという方は多いと思います。毎月一定額を長期間にわたって積み立て、同時に運用していくことで基本的に誰でも経済的自由を手に入れることができるのです。大切なのは、まずは始めることです。