
医師の方はお子さんも同じ医師の道に進ませたいと考える方が多いようです。そこで気になるのが、医学部を卒業するまでの教育費がどれくらいかという点でしょう。これからお子さんが生まれる方、お子さんが学校に通い始める方はその相場を知ることで、無理のない資金の準備が進められます。
小中高の公立と私立の学習費
文部科学省が2019年に発表した「平成30年度子供の学習費調査の結果について」によると、公立または私立の幼稚園、小学校、中学校、高等学校それぞれに通学させている保護者が、学校教育費および学校外の活動のために支出をした費用は以下の通りです。これには授業料のほかに自宅学習や学習塾・家庭教師などの費用も含まれます。
・全て公立に通った場合
年間費用 | 通学期間の合計額 | |
---|---|---|
幼稚園(3年間) | 22万3,647円 | 67万0,941円 |
小学校(6年間) | 32万1,281円 | 192万7,686円 |
中学校(3年間) | 48万8,397円 | 146万5,191円 |
高等学校(3年間) | 45万7,380円 | 137万2,140円 |
総額 543万5,958円 |
・全て私立に通った場合
年間費用 | 通学期間の合計額 | |
---|---|---|
幼稚園(3年間) | 527,916円 | 1,583,748円 |
小学校(6年間) | 1,598,691円 | 9,592,146円 |
中学校(3年間) | 1,406,433円 | 4,219,299円 |
高等学校(3年間) | 969,911円 | 2,909,733円 |
総額 1,830万4,926円 |
参照:文部科学省「平成30年度子供の学習費調査の結果について」
医学部を目指すお子さんを持つご家庭では、早い段階から私立の学校に通わせることが考えられます。仮に幼稚園から高校まで全て私立に通うと、1人当たりおよそ1,830万円の費用がかかります。もちろんこれらは平均であり、実際に通う塾や習い事などにより金額は変わりますが、ひとつの目安にはなるでしょう。
特に目を引くのは、私立の小学校の6年間で9,592,146円という金額です。高い収入を得るお仕事をされている方でも、お子さんを小学校へ通わせるころの年齢でこの費用負担は大きいかもしれません。早い段階で高いレベルの学習環境が整った教育を受けさせたいと考える方は、早めに費用を準備したほうが良いでしょう。
医学部予備校の学費
医学部を目指すお子さんの予備校の授業料は、大手予備校の医学部コースが年間50万円〜100万円、医系専門の予備校は年間300万円〜500万円の相場となっています。ただし医系専門の予備校の中には200万円を切るところもあれば700万円以上かかる予備校もあり、金額の幅が大きくなっています。
1年間の費用は気になりますが、それ以上にポイントなのが何年通うことになるかです。2浪や3浪が当たり前と言われる医学部への道ですので、何年も予備校通いをすれば入学前にかなりの費用がかかってしまいます。仮に700万円の予備校に2年間通えば1,400万円、3年間通えば2,100万円の出費です。
なるべく現役や1浪で合格してほしいところですが、こればかりはわかりませんので、なるべく多めの資金を準備しておくのが無難でしょう。
国公立と私立の学費
大学の医学部や医科大学に合格した場合の学費は、以下のような相場になっています。国公立と私立の6年間の費用の差は非常に大きく、国公立に希望者が集まるのも頷けます。また私立では高額な寄付金や研修費などがかかり、以下の金額よりさらに費用がかかることが予想されます。
・国公立と私立でかかる大学6年間の学費
国公立 | 私立 | |
---|---|---|
入学金 | 県住民282,000円 県外者30〜80万円 | 1,073,083円 |
授業料 | 535,800円 | 2,867,802円 |
施設設備など | 30万円前後 | 881,509円 |
6年間の概算 | 600万円 | 2,500万円 |
1人暮らしの費用
入学後に親元を離れ1人で生活するとなれば、さらに費用がかかります。仮に家賃と生活費で月に30万円を仕送りすれば30万円×12ヵ月で年間360万円、これが6年間続けば2,160万円となります。他にも家電や生活用品を揃える費用なども必要になり、私立6年間の学費に匹敵する額になります。
医学部を卒業するまでの教育費は国公立か私立かというのも大きなポイントですが、この6年間1人暮らしをするか否かも費用の大きな分かれ目です。
・6年間の学費と仕送り2,160万円(月額30万円として)を合わせた費用
大学種別 | 6年間の学費と仕送りの合計 |
---|---|
国公立 | 2,760万円 |
私立 | 4,660万円 |
2つのケースの教育費合計
ここまでの費用を端的なケースで2つにまとめると、医学部を卒業するまでの教育費は以下のようになります。
最も費用のかからないケース
教育費 | |
---|---|
幼稚園から高校まで公立 | 544万円 |
現役合格で予備校に通わず | - |
国公立大学へ自宅から通学 | 600万円 |
合計 | 1,144万円 |
最も費用のかかるケース
教育費 | |
---|---|
幼稚園から高校まで私立 | 1,830万円 |
2年浪人し年700万円の予備校に通う | 1,400万円 |
私立大学へ1人暮らしをしながら通学 | 4,660万円 |
合計 | 7,890万円 |
医師になるためにかかる教育費を最もかかるケースで見ると、8,000万円近い費用がかかります。親にはかなりの経済的ゆとりがないと捻出が難しい金額です。しかしどのような道筋をたどるかは、実際に成長していかなければわかりません。できるだけ早い時期から、最も費用のかかるケースでの備えをしておくことが大切でしょう。
家計への学費の負担を抑える方法
ご紹介した費用はあくまでお子さん1人あたりの額です。もし2人、3人とお子さんがいて時期が重なれば、たとえ平均以上の収入があるご家庭でもかなりの負担となるでしょう。そこで、ここからは教育費負担を抑えるための方法をご紹介します。
大学や自治体の奨学金
まず紹介しておきたいのが、大学や地方自治体によって用意されている奨学金制度です。
医系の大学では成績優秀な入学者の入学金を免除したり、学費が割り引かれたりする制度を設けているところがあります。制度には卒業後に返済の必要がある「貸与型」と、返済不要な「給付型」があります。給付型は成績などに高い基準が求められていますが、費用の高額な医学部では大きな恩恵となるでしょう。
またすべての自治体に設けられてはいませんが、都道府県単位で用意されている奨学金制度も併せて検討しましょう。卒業後に給付を受けた自治体にある医療機関に一定期間勤務することを条件として、入学金や毎月の授業料の一部が補助されます。
こちらは貸与が基本ですが、指定地域内での勤務条件を満たすと返還が免除される自治体もあります。ただし10〜20名程度の募集に対して10倍近い応募のある狭き門というのが現状です。
不動産投資などの資産運用も併用
奨学金の他に一定の収入が見込めるご家庭であれば、不動産投資などの資産運用で教育費の準備することも検討してみましょう。
ご存知の通り現在の銀行金利は非常に低く、資産を預けておいても増えることはありません。将来の備えのために手を付けず資産を貯めておくなら、その資産に働いてもらい、わずかでも増やそうというのが資産運用です。
中には株式投資のようなハイリスク・ハイリターンの商品もありますが、そのような資産運用は知識や運用にかける時間が必要で、本業をお持ちで多忙な方には難しいかもしれません。一方でコツコツ収益を積み上げていく都心のマンション投資のような手間がかからない資産運用もあります。
早めに教育費を準備しておくことが大切
医学部を卒業し研修医を経て医師となれば、高い収入が長く得られることが考えられるため、多くの教育費をかけた甲斐はありそうです。しかしそれまでにかかる親の費用負担は、決して小さくはありません。
特に私立大学へ1人暮らしをしながら通ったり、お子さんが何人かいたりするとなれば、非常に多額の費用が必要です。将来お子さんを医師の道へ進ませるつもりであれば、なるべく早い時期から資産運用などの対策で準備しておくようにしましょう。