住宅メーカーに約20年営業職で勤務。現在は住宅専門ライターとして住まいの選び方、土地の選び方、ローンを含めた資金計画、プラン、メーカー比較、リフォームなど、幅広いテーマで多数のメディアに執筆。人気動画サイトの住宅系動画脚本なども手がける。営業マン時代に培った知識と経験を生かし、これから家を建てる方の悩みや疑問、不安を解決する記事を得意としている。
不動産投資による所得の確定申告を税理士に依頼したいけれど、報酬相場が気になり迷っているという方も多いのではないでしょうか。確かに依頼すれば時間の節約ができますが、あまり高額なら収益が減り依頼するメリットがなくなってしまいます。
まずは報酬相場を知ったうえで、自分で確定申告を行ったほうがよいか、妥当な判断をしましょう。この記事では、確定申告を税理士に依頼する報酬相場を詳しくてお伝えします。
税理士の報酬相場
不動産所得の確定申告を税理士へ依頼するのは、個人でも法人でもどちらでも可能です。確定申告だけの単発の依頼であれば、個人か法人かで報酬が大きく変わることもありません。ただし、申告方法である白色申告と青色申告とでは報酬に違いがあります。
白色申告は申告書への記入もそれほど複雑ではなく、必要書類をそろえれば比較的簡単にできます。報酬相場は売上額や取引数にもよりますが、1件あたり5?10万円程度です。
一方、事業として青色申告をする場合、年間の売上高や帳簿へ取引記帳の有無によって報酬が変わります。青色申告での売上高ごとの報酬相場は以下の通りです。あくまでも目安という認識で考えていただき、詳細については依頼する税理士さんに確認しましょう。
年間売上高 | 記帳は自分で行う | 記帳も依頼する |
500万円未満 | 3万円 | 5万円 |
500万円以上1,000万円未満 | 5万円 | 10万円 |
1,000万円以上3,000万円未満 | 10万円 | 20万円 |
3,000万円以上5,000万円未満 | 15万円 | 25万円 |
5,000万円以上 | 要相談 | 要相談 |
※編集部で作成
顧問契約料
上記の相場は確定申告書作成のみの単発依頼の報酬ですが、年間契約を結び税務相談などができる顧問契約もあります。顧問契約では月額顧問料が必要となり、事業主か法人か、訪問頻度、売上高などにより額が変わります。
一般的には月額1~5万円が相場ですが、このほかに記帳代行や決算申告を依頼するとその費用が加算されます。
確定申告を税理士に依頼するメリット
報酬を支払い、税理士に確定申告を依頼するメリットはどんなところにあるのでしょうか。
時間を確保できる
税理士に依頼する人に共通するメリットは、書類作成や記帳、仕訳など煩雑な作業を任せられ、自分の時間を確保できることです。本業を持つ方なら仕事やプライベートに影響しないようにでき、専業の方なら事業展開を考えるなど売上げを増やすための時間が確保できます。
期限までに申告できる
自分で確定申告を行う場合は、不慣れだったり取引数が多かったりすると書類作成に時間がかかり、申告期限に間に合わない恐れがあります。しかし税理士に任せることで、間に合わないというリスクや心配から解放され、投資に集中することができます。
間違いが防げる
税理士に依頼すれば確定申告が確実に行えます。もし自分で行うとほかの業務の合間に行うことになり、間違いが起きる可能性があります。もし申告に不備があれば修正申告などが必要になり、余計に時間を取られてしまいますが、税理士に依頼すればそうした事態を避けられます。
節税のアドバイスが受けられる
税理士に確定申告を依頼すると、このあと紹介するようなさまざまな節税のアドバイスを受けられます。不動産収入から経費を差し引いて所得税を抑えたり、損益通算で所得税の還付を受けたり、節税によって収益を増やせる可能性があります。
青色申告についても税理士に相談
ここで確定申告の方法である青色申告について解説します。不動産投資の収入が継続してあり事業所得として認められるようなら、白色申告より青色申告の方が控除などのメリットがあります。
ただし青色申告は、複式簿記によって取引内容を管理し確定申告をします。白色申告と比べ帳簿の付け方や手続きなどが煩雑ですが、所得に応じて最高65万円または10万円の控除が受けられます。また赤字になった場合に、翌年から3年間繰り越し計上できる「純損失の繰り越し」も可能になります。
このような青色申告が自分の不動産投資で可能かどうかや、移行したときの面倒な帳簿管理などについても税理士に相談してみるとよいでしょう。
不動産投資でできる節税
不動産投資ではどのような節税ができるのか、代表的なものを紹介します。こうした節税を、確実に手間をかけずできるのも税理士へ確定申告を依頼するメリットです。
経費計上
不動産投資で得た総収入から、さまざまな経費を引くことで所得を減らし所得税や住民税を節税できるケースがあります。経費として扱える費用には以下のようなものがあります。
・物件購入時の登記費用
・土地や建物の固定資産税、都市計画税
・建物の補修費
・火災保険、地震保険の保険料
・ローンの金利
・ローンの諸費用
・管理会社への管理委託料
・区分マンションの管理組合へ支払う管理費、修繕積立金
・入居者募集の宣伝広告費
・減価償却費
このほかにもこまかな費用が経費計上できますが、忙しい方にとってこれらをすべてチェックし帳簿に付けていくのはたいへんな作業です。こうした節税も税理士に依頼することで漏れなく行えるようになります。
損益通算
本業を持ち副業で不動産投資をしている方なら、「損益通算」によって所得税の還付を受けられる可能性があります。例えば不動産投資で経費を引いた不動産所得がマイナスなら、赤字の確定申告をすると本業の給与所得と通算され、納税していた所得税が還付されます。
税理士に確定申告を依頼していればこれらのアドバイスが受けられ、個人で申告していただけでは気付かないこともある節税ができるのです。
税理士の選び方
2002年の税理士法改定によって、報酬は税理士ごとに自由に決められるようになりました。このため依頼先によって報酬額が異なり、報酬が安い税理士へ目が向くことがあるかもしれません。しかし依頼の前に次の点を確認し、しっかりした働きをしてくれる税理士を選ぶようにしましょう。
報酬の内容
税理士の報酬は売上高や面談回数、どこまでの業務を行うかなどで細かく分かれています。こうした報酬の内容を、できるだけ細かく明示している税理士を選びましょう。依頼をしてから思わぬ追加費用が発生することを防げるだけでなく、必要な業務に絞って依頼するなど柔軟な取引ができます。
記帳代行の有無
記帳とは資産の増減にかかわるすべての取引を、勘定科目に分けながら帳簿に記録することです。これは非常に手間がかかる作業のため、報酬に記帳代行が含まれるかは大きなポイントです。特に確定申告をスポットで依頼する場合は見落としがちなので、記帳代行の有無をしっかり確かめておきましょう。
担当者のキャリア
報酬は税理士自身のキャリアによって決まる部分もあります。キャリアが長く数多くの経験を積んだ税理士は、費用は高めでも多くのアドバイスをしてもらえる可能性があります。一方で若い税理士は報酬が安めの傾向がありますが、実績を積むため業務内容は決して劣らない場合もあります。
キャリアももちろん大切ですが、業務内容をできるだけ詳細に聞き取り総合的に判断するようにしましょう。
不動産投資に強い税理士を選ぶ
税理士に確定申告を依頼する際は、報酬や業務内容、キャリアなどとともに不動産投資に強いかどうかも確かめましょう。もしほかの不動産投資家の顧問をしている税理士なら、さまざまなノウハウを得られる可能性があるからです。
例えば、確定申告をスムーズに行うための対策や、不動産投資ならではの節税テクニックなど、より細やかなアドバイスをしてもらえるかもしれません。ぜひ不動産投資に強い税理士をパートナーにし、収益を増やすための力になってもらいましょう。