確定申告する際に不動産投資の運営を法人化するメリットはある?デメリットも合わせて紹介します
(画像=tolikoffphotography/stock.adobe.com)
八木チエ
八木チエ
株式会社エワルエージェント 代表取締役|宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーなどの資格を持ち、中立的な立場で不動産投資に関連する情報をお届けします。書籍、メディアなどに記事掲載の実績多数。
  • 「不動産投資をしている場合、法人化したほうが良いか知りたい」
  • 「法人化するときの手順が知りたい」

不動産投資をしている方の中には、上記のように法人化について悩みを持っている方が多いと思います。

法人化することで相続税がかからないことや、所得税が法人税に変わることで節税になるといった利点があるためです。ただし、法人化にはデメリットもあり、適切なタイミングで法人化しないと節税にならないなどの注意点も多くあります。

そこでこちらの記事では、確定申告の際に不動産投資の運営を法人化するメリットデメリット、そして法人化する手順について詳しく解説していきます。ぜひ最後まで読んで、法人化をする際の参考にしてください。

法人化とは?

不動産投資における法人化とは、設立した法人(会社)が収益用不動産を所有して運用を行うことを指します。

法人化することで節税対策が行えるなど、不動産投資を行ううえで有利になることは多いです。

ただし、法人化することによるデメリットもあるため、法人化する注意点などもよく理解しておく必要があります。

確定申告の際に不動産投資の運営を法人化するメリット

確定申告の際に不動産投資の運営を法人化するメリットは以下の5つがあります。

  • 法人税の税率が適用される
  • 相続税がかからない
  • 減価償却費を任意償却できる
  • 経費計上できる範囲が増える
  • 不動産を短期売却する場合に個人よりも税率が低くなる

それぞれについて説明します。

法人税の税率が適用される

法人の場合、所得税ではなくて法人税が適用されます。法人税の税率は以下の表のとおりです。

課税所得金額 税率
800万円以下 15%
19%(適用除外事業者)
800万円超 23.20%

(開始事業年度 2019年4月1日以後)
出典:国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
※適用除外事業者とは、事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等のことです。

ちなみに、法人の場合は法人住民税や地方法人税、法人事業税が課税されます。これらの法人に課せられる事業者所得に対する負担率である「実効税率」は29.74%(2021年1月現在)です。
出典:財務省(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/c01.htm

一方で、個人の場合は所得税が課税されます。所得税の税率は以下のとおりです。

所得税の速算表
(画像=所得税の速算表)

出典:国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

法人化した場合としない場合では控除の仕組みが違うため一概には言えませんが、一般的には不動産投資ローンを受けるには、年収500万円以上である必要がありますので、不動産所得を入れて900万円を超える場合は、法人化したほうが節税になります。

相続税がかからない

法人化して相続人を役員に就任させた場合、収益用不動産から出る収益を相続人に役員報酬として渡すことができます。つまり、あらかじめ相続財産を相続人へ渡すことが可能です。

ただし、相続人が受け取る役員報酬は税務上給与所得にあたるため、所得税と住民税がかかります。そのため、相続する場合との比較計算をすることが重要になります。

減価償却費を任意償却できる

法人化することで不動産の購入費の任意償却が許可されます。任意償却とは、減価償却限度額内で自由に償却することです。

例えば、赤字になったため任意償却費用を抑えて、利益が大きく出た際に任意償却費を多く計上するといったことができます。

上記のように収支状況に合わせて減価償却費を計上することができるのは大きなメリットです。大きな利益が出た際に減価償却費を多く計上することで、利益の圧縮が可能なため、支払う税金を抑えることができます。

経費計上できる範囲が増える

法人化することで個人の場合より経費計上できる範囲が増えます。例えば、増える範囲として挙げられるのが保険料です。

保険料は個人の場合、個人年金や生命保険を合算した12万円までしか経費として計上できないうえに、介護医療保険や個人年金も4万円までしか控除することができません。

一方で、法人の場合は法人で加入した生命保険は金額の上限がなく、支払った保険料の50%を経費として計上できます。

さらに、保険料のほかにも役員報酬や退職金といった項目も経費計上することが可能です。

不動産を短期売却する場合に個人よりも税率が低くなる

法人化して不動産を短期売却した場合、譲渡所得にかかる税金は個人よりも低いです。法人の場合は譲渡所得にかかる税率は前述した実効税率の「29.74%」になります。

一方で個人の場合は、所有期間が5年以下の土地や建物を売却したときの所得は「短期譲渡所得」になり、税率は所得税30%と住民税9%の合計である39%、これに加えて所得税額の2.1%の復興特別所得税が課税されます。

上記のように5年以内に不動産を売却する場合は法人化したほうが税率は低くなります。

ただし、所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」にあたり、話が変わるため注意が必要です。長期譲渡所得の税率は所得税15%と住民税5%の合計である20%、所得税額の2.1%の復興特別所得税になるため、法人税のほうが高い税率がかかります。

確定申告の際に不動産投資の運営を法人化するデメリット

確定申告の際に不動産投資の運営を法人化するデメリットは以下の3つです。

  • 赤字になった場合でも法人住民税を支払う必要がある
  • 税理士を雇う場合はランニングコストがかかる
  • 青色申告ができない

それぞれについて説明していきます。

赤字になった場合でも法人住民税を支払う必要がある

法人が支払う必要のある法人住民税は、「均等割」と「法人税割」の2つで構成されています。

均等割は法人の規模によって納税する額が決まっているため、赤字になった場合でも支払う必要があるものです。

例えば、大阪市の場合、資本金1,000万円以下で従業員数が50人以下の場合でも5万円を支払う必要があります。
出典:大阪市(https://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000008074.html

このように赤字の場合でも税金を納める必要があるため、注意が必要です。

税理士を雇う場合はランニングコストがかかる

法人化した場合、確定申告などの税務関係の処理が複雑になり、個人では対応できなくなることが多いです。そのため、多くの方がプロである税理士を依頼します。

しかし、税理士に依頼をする場合は顧問契約料が発生するため、そちらも考慮して経費を計算しなければいけません。

青色申告ができない

不動産投資の運営を法人化すると、確定申告で行っていた青色申告ができなくなります。

青色申告は不動産所得や事業所得、山林所得がある個人が利用できる制度で、不動産所得や事業所得がある人は必要な要件を満たすことで最大65万円までの青色申告特別控除を受けることが可能です。

ただし、給与所得控除を受けることができ、さらにそちらのほうが控除額が大きい場合は、デメリットとは言えないかもしれません。

法人化したほうがいい目安は?

法人化するためには、法人を設立するための費用や税理士の顧問契約料などがかかります。

さらに、法人化によって経費化できる範囲などさまざまな要素によって法人化をするタイミングが異なるため、一概にどのタイミングが良いと言えませんが、一般的には利益が500万円から700万円程度が目安です。

ただし、自身で判断するのは難しいため、専門家である税理士などに相談することをおすすめします。

実際に法人化するときの手順

法人化をするときの手順は以下の6つです。

  • 商号など会社の基本事項を決める
  • 発起人決定書などの書類を準備する
  • 定款を作成し公証役場で定款の認証を受ける
  • 法務局で登記申請する
  • 税務署などに書類を提出
  • 司法書士に依頼することもできる

それぞれについて説明します。

商号など会社の基本事項を決める

まず行うのが商号(会社名)を決めることです。その後、会社の基本事項である住所や事業目的、資本金など基本的な事項を決定します。

注意点として資本金があるほど会社の信頼性は高くなるため、今後事業の拡大等を検討している場合は、ある程度の資本金を用意するようにしてください。

発起人決定書などの書類を準備する

基本的な内容が決まったら書類の準備を行います。発起人だけで全額出資する場合で必要な書類は以下のとおりです。

  1. 発起人、取締役の印鑑証明書(発行後3ヵ月以内のもの)
  2. 会社実印(代表者印)
  3. 定款
  4. 発起人の決定書
  5. 就任承諾書
  6. 印鑑届出書
  7. 印鑑カード交付申請書

3つ目の定款とは会社の基本的な規則を定めたもので、会社を設立するうえで非常に重要な書類です。

定款を作成し公証役場で定款の認証を受ける

前述で用意した定款を公証役場に提出し、認証を受ける必要があります。

ただし、合同会社を設立する場合は公証役場に提出して認証を受ける必要はありません。

法務局で登記申請する

会社の本店の所在地を管轄している法務局に設立登記申請書と必要な書類一式を提出します。

自身で登記を行う場合は事前に法務局の登記相談コーナーで相談するとスムーズに手続きを行うことが可能なのでオススメです。

市町村の役所などに書類を提出

登記申請後に税務署や都道府県税事務所、市区町村の法人住民税担当部署に法人設立届出書を提出します。設立登記後、2ヶ月以内に提出する必要があります。

ただし、都道府県、市区町村によってはもっと短い場合もあるため、注意が必要です。

司法書士に依頼することもできる

前述した手続きや書類の準備は専門家である司法書士に依頼することも可能です。複雑な手続きに手間と時間を取られることがないため、時間がない方におすすめの方法になります。

ただし、司法書士への依頼料がかかるので、費用をかけたくない方は自身で行うようにしてください。

まとめ

不動産投資の運営を法人化して行うことは、個人で行うよりも節税につながるなどの多くのメリットがあるため、おすすめです。

ただし、設立するタイミングを間違えると節税にならないことや赤字でも法人住民税を支払う必要があるなどデメリットもあるため、注意する必要があります。

法人化を検討している方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

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