医師の確定申告は大きく分けて3つ!注意すべき点を属性ごとに解説
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鈴木まゆ子
鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU Online」「KaikeiZine」「朝日新聞『相続会議』」「マネーの達人」「納税通信」などWEBや紙面で税務・会計に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」。

医師も確定申告が必要になるケースがありますが、申告する内容は人によって異なります。今回は、医師を3つのタイプに分け、それぞれの確定申告の内容と注意点について解説します。

医師の確定申告は属性によって3パターンに分かれる

「確定申告が必要か否か」「どういった確定申告をするべきか」は、以下の3つの属性それぞれで異なります。

  • 開業医
  • 勤務医
  • フリーランス医師

ここから、それぞれの属性ごとに確定申告の内容をお伝えします。

開業医の確定申告

開業医は、さらに2つのパターンに分かれます。個人事業主として医院・病院を経営している人と、医療法人を設立して経営している人です。

個人事業主の医師の場合

個人事業主の医師は、すべての所得を申告する必要があります。通常、医師としての事業収入は「事業所得」で申告します。他の医院からの収入もある場合は、それについても申告が必要です。アルバイトとしての収入は「給与所得」、それ以外は「雑所得」で申告します。

個人事業主の医師が受け取る社会診療報酬は、以下の2つの条件を両方満たす場合、「社会保険診療報酬の所得計算の特例」によって社会保険診療分の費用をおおまかに計算できます。

【条件】

  • 社会保険診療報酬の年間支払額が5,000万円以下
  • 医業・歯科医業の年間売上が7,000万円以下

この特例が適用された場合の社会保険診療分の費用を計算するには、以下の係数を用います。

  • 2,500万円以下の金額:100分の72
  • 2,500万円を超え3,000万円以下の金額:100分の70
  • 3,000万円を超え4,000万円以下の金額:100分の62
  • 4,000万円を超え5,000万円以下の金額:100分の57

本業の事業所得が赤字で、他にアルバイトによる給与所得や雑所得がある場合は、事業所得の赤字と他の所得の黒字を相殺できます。その結果所得額が減るため、納税額も減ります。

医療法人を設立した医師の場合

医療法人を設立して理事として役員報酬(給与所得)を受け取っている場合は、基本的に確定申告は必要ありません。年末調整で納税が完結するからです。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は確定申告が必要です。

  1. 医療法人からの給与年収が2,000万円を超える
  2. 医療法人から受け取る給与所得以外に収入があり、その収入の所得合計額が年間で20万円を超える
  3. 医療法人から貸付金利子や賃貸料収入を受け取っている
  4. 自らが経営する医療法人以外からも他法人の役員・理事の報酬やアルバイト代といった形で給与所得を受け取っている

注意したいのが2です。これを裏返すと「医療法人から受け取る給与所得以外の所得合計額が20万円以下なら、確定申告はいらない」ということになります。ただし、ここでいう確定申告とは「所得税の確定申告」のことであり、20万円以下なら所得税の確定申告は不要ですが、住民税の確定申告は必要です。

勤務医の確定申告

大病院で勤務医として働く場合も、勤務医としての収入(給与所得)しかない場合は年末調整で納税が完結するため、確定申告は不要です。

しかし、以下のいずれかに該当する場合は確定申告が必要です。

  1. 主たる勤務先からの給与年収が2,000万円を超える
  2. 複数の勤務先から給与所得を受け取っている
  3. 給与所得以外に収入があり、その収入の所得合計額が年間で20万円を超える

3については、医療法人から役員報酬を受け取る医師と同様です。これを裏返すと「勤務先から受け取る給与所得以外の所得合計額が20万円以下なら確定申告不要」となるわけですが、これはあくまで「所得税の確定申告がいらない」だけであり、20万円以下でも住民税の確定申告は必要です。

また、副業について確定申告をするなら、副業の内容に応じた所得区分で申告しなくてはなりません。株や投資信託への投資による所得(譲渡益)は「譲渡所得」、不動産賃貸による所得は「不動産所得」、暗号資産やFXへの投資なら「雑所得」です。

フリーランス医師の確定申告

フリーランス医師も、基本的には勤務医と同じ扱いです。1つの勤務先からの給与所得しかなく、かつそれが2,000万円以下なら確定申告は不要です。

しかしアルバイトだと、複数の病院・医院をかけもちしているケースが多いでしょう。そのため、基本的に確定申告が必要になると考えておいたほうがよいです。

アルバイトの収入は、給与所得です。確定申告では、すべての給与年収を合算し、自分で給与所得額を計算した上で税額を計算します。

ただし、受け取ったお金が給与所得ではなく、雑所得になることがあるかもしれません。アルバイトの報酬として受け取ったお金が給与所得かどうかの判断は、年末や年明けに勤務先からもらう税務関係書類で判断します。区分は以下のとおりです。

  • もらった書類が「給与所得の源泉徴収票」→給与所得
  • もらった書類が「支払調書」→雑所得

注意点

以上が属性ごとの確定申告の内容です。この他、確定申告をするすべての医師は、以下のことに注意してください。

医療費控除やふるさと納税で確定申告をするなら「全部申告」

「年末調整で完結するから確定申告は不要」「給与所得以外の所得合計が20万円以下だから確定申告は不要」であったとしても、医療費控除やふるさと納税で確定申告をすることもあるでしょう。

その場合は、すべての所得を申告しなくてはなりません。たとえ副業の所得が20万円以下であってもです。「確定申告をするなら、すべての所得と控除を漏らさず申告する」ことが確定申告の鉄則です。

還付申告は5年以内

確定申告をすると納税だけでなく、源泉徴収などで納め過ぎた税金が戻ってくることがあります。これを「還付申告」といいます。

納税のための申告だと、所得が発生した年の翌年2月16日から3月15日までが申告と納税の期間です。

一方で還付申告の場合は、年明け1月1日から5年間申告できます。2021年分の確定申告なら、2022年1月1日から2026年12月31日まで申告できるのです。

ただし申告が遅いと、住民税で損をしてしまいます。住民税は前年分の所得をもとに市区町村が税額を計算するからです。遅れて申告する場合は、別途市区町村で手続きをしなくてはなりません。

納税の申告が遅れるとペナルティがある

申告・納税の期限である3月15日を過ぎると、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課されます。2019年分と2020年分の確定申告は、コロナの影響で申告・納税期限が1ヵ月延長されましたが、これはあくまでも特例です。「翌年3月15日」という期限は、厳守しましょう。

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