税金

(画像=Андрей Яланский/stock.adobe.com)

「貯まった現金を資産運用に充てたい。でも忙しすぎてできない」という人ほど、不動産投資は検討すべき運用方法の一つです。「お金がお金を稼いでくれる」だけでなく、相続税対策にもなります。今回は相続税の要点を確認した後で、不動産投資が有用な理由をお伝えします。

## 最初に押さえよう!相続税のキホン

最初に相続税のキホンを確認しておきましょう。

### 相続税の課税対象は「財産の評価額」

相続税の課税対象となるのは相続財産です。ここまでは多くの方がご存じのことと思います。しかし、課税の基準となる金額については誤解が少なからずあります。不動産のように「いくらなのかが分かりにくい」財産について「購入金額に課税されるのだろう」と思っている方がいらっしゃいますが、実際は違います。

相続税の対象となる財産は「相続開始時の時価」です。そして、時価の考え方については国が定めています。土地なら「地目ごとに路線価方式か倍率方式で評価した金額」、建物なら「固定資産税評価額×1.0」と言った具合です。たとえ都内の土地を無料で誰かから譲られても、もらった人が亡くなった時点での土地の評価額が1億円なら、1億円が課税財産の金額に含まれるのです。

### 課税対象となる価格の計算がややこしい

よくある誤解としてもう一つあるのが「財産があったら相続税がかかる」というものです。この考え方も間違いではないのですが、実際の相続税の計算では、現預金や土地といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産や税法独自の課税対象も考えます。これを「正味の遺産額」と言い、次のように計算します。

現預金や土地などのプラスの財産+生命保険金などのみなし相続財産-非課税財産+相続時精算課税制度で贈与された財産-借金や未払税金などの債務-葬式費用+相続開始日以前3年間の贈与財産=正味の遺産額

この金額の計算は相続や遺贈で財産を引き継いだ人全員について行い、最後は合計します。この最終合計額が次の基礎控除額を差し引いた残額に対し、相続税がかかるのです。

### 「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えたら課税

先ほどお伝えした正味の遺産額の合計額が相続税の基礎控除額を超えると相続税がかかります。基礎控除額とは「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算したものです。

法定相続人とは民法で定められた相続人を言います。配偶者は常に相続人になりますが、それ以外の血族については原則「第一順位は子(子が亡くなっていたら孫)、第二順位は父母や祖父母など直系尊属、第三順位は兄弟姉妹(亡くなっていたら甥姪)」とされています。この他「姻族は相続人になれない」などのルールがあります。

## 不動産投資がなぜ相続税対策になるのか?現金と比較しよう

ではなぜ不動産投資が相続税対策になるのでしょうか。次のように現金との比較を考えてみると、その効果が分かります。

### 理由1:不動産というだけで評価額が低くなる

第一の理由は「不動産というだけで評価額が低くなるから」です。同じ1億円でも、現金と土地・建物では相続税での評価額が異なります。現金1億円は相続税の評価額も1億円のままです。しかし不動産だと、土地なら路線価方式か倍率方式、建物なら固定資産税評価額になります。通常、土地を路線価評価すると実勢価格の8割程度に、建物は再建築価格(家を作るのに要した費用)の6~7割程度に落ち着きます。つまり、1億円で不動産を買っただけで、相続税のかかる財産額が2割以上減るのです。

### 理由2:貸している分だけ評価額が低くなる

第二の理由は「貸している分だけ評価額が下がる」からです。賃貸物件に借り手がつくと、その分持ち主は財産を自由に使えなくなります。その使えない部分を「貸家」「貸家建付地」として評価に織り込むのです。具体的には次のような計算式になります。

貸家の評価:固定資産税評価額×(1-借家権割合(※1)×賃貸割合)
貸家建付地の評価:自分の土地としての評価×(1-借地権割合(※2)×借家権割合×賃貸割合

※1 一律30%
※2 地域ごとに異なる。路線価図や評価倍率表に記載。

### 理由3:小規模宅地等の特例を使えばさらに節税

第三の理由は「小規模宅地等の特例で節税できるから」です。小規模宅地等とは、要件を満たせば居住用や事業用、賃貸用建物の敷地評価額を低くできる制度を言います。不動産賃貸業を引き継いだ人が相続税の申告期限までに継続して賃貸業を営んでいると、200㎡を上限に敷地評価額を5割減らすことができます。

## 現金VS不動産で評価額を比較してみよう

ではここで、現金相続と不動産相続とで評価額を比較してみましょう。2億円の現金を相続すると、相続税法上の評価額は変わらず2億円です。一方、この2億円で借地権割合30%のエリアの賃貸物件(建物の固定資産税評価額7,000万円、土地の路線価評価額8,000万円)を購入し、満室になると、相続税評価額は次のようになります。

1.建物の評価額…7,000万円×(1-0.3×1.0)=4,900万円
2.土地の評価額…8,000万円×(1-0.3×0.3×1.0)=7,280万円
3.1.と2.の合計額…1億2,180万円

同じ2億円でも、不動産投資を行いきちんと軌道に乗せると、評価額が4割ほど下がるのです。

もちろん「空室対策が必要」「立地条件を選んだ方がいい」といった注意点もありますが、「資産管理会社の選び方に注意する」「専門家に相談する」などで対処可能です。「忙しいけど相続含めてお金の管理や運用が難しい」と考える人にとって、不動産投資は検討すべき選択肢の一つだと言えます。

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