資産運用

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新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFPR、一級FP技能士(資産運用)、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

ウィズコロナの環境下における資産運用は、「どのように投資戦略を考えたらいいのか分からない」と迷っている人は多いのではないでしょうか。今回は、コロナ禍における資産運用の考え方や戦略について解説します。

## コロナ禍における資産運用に対する意識の変化

新型コロナウイルスの感染拡大により「緊急事態宣言による自粛」「リモートワークや在宅勤務の定着」など今までの常識を覆す方向へ生活習慣が変わる動きが顕著になっています。注目すべきは、政府がコロナ対策支援として行った数々の支援策です。例えばコロナ対策の支援策の一つとして国民一人ひとりに一律10万円(特別定額給付金)が給付されました。

さらに中小企業や個人事業主に向けた持続化給付金や休業補償、各自治体における家賃補助政策などさまざまな支援策が講じられています。もちろん支援は国民にとってありがたい制度ですがそのような支援を行った結果、今後どうなるかを今一度客観的に考えることも必要です。国が給付金などの支援策を講じたからには、その財源はどこかで調達しなければなりません。

そのため例えば「消費税や所得税の増税」「医療費の個人負担率の増枠」「社会保険料の増加」などの社会保障の低下が予想されることは明らかです。さらにたばこ税や酒税など特定の税率のアップなどインフレにつながる政策も見逃せません。このような状況から収入が上がったとしても自分が使えるお金(可処分所得)は減っていく可能性があります。

こういった現状を察知し今後は「自分が使えるお金をいかに増やすか」といった運用に対する関心が増加傾向です。今までは運用に対して消極的だった20代後半もしくは30代前半の世代において運用に対する関心が急速に高まってきています。これまで貯蓄信仰に偏っていた日本人の考え方が運用重視の考え方にシフトしてきていることを顕著に表しているのではないでしょうか。

## コロナ禍における投資戦略の考え方とは?

コロナ禍における投資戦略の考え方の基本は、ズバリ「コア・サテライト」という考え方です。「コア・サテライト」戦略とは、保有している資産を「コア」と「サテライト」に分けて運用していきます。コアとは中核、サテライトとは衛星のことです。ここでコアに添えるものは、流動性と透明性が高いと考えられる金融商品という位置付けになります。

後述しますが、手数料などの運用コストが低いことも商品を選ぶ際の重要なポイントの一つです。具体例としては「インデックス型のETF」「REIT」「優良株式」「投資適格社債」などが、このコア部分となる商品に該当します。これらのコア商品を中心に資産を組み立てることが、これからの投資戦略の基本的な考え方です。一方比較的リスクの高い以下のような商品がサテライト部分に充てられます。

* デリバティブ(仕組み債などの商品)
* レバレッジ型の投資信託
* ヘッジファンド
* ハイイールド
* 証拠金取引
* コモディティなど

このような商品の中には高いリターンをうたう「耳あたりのよい商品」もあります。しかしリターンが魅力的な商品こそ今後は慎重な判断が必要です。コロナ禍においては、以下のような考え方が大切になります。

* サテライト商品には投資しない
* 投資するにしても運用全体の割合のごく一部にとどめ、仮に消失したとしても問題ない程度に留める

## 長期運用、分散投資の有効性

運用の大原則の一つ「分散投資」は、リスク(値動きの大きさ)を抑えるために有効な方法です。しかし1年単位の騰落率ではプラスになったりマイナスになったりすることもあります。GPIF(年金積立金管理運用独立法人)では、「国内債券」「国内株式」「海外債券」「海外株式」の4資産に25%ずつ投資した場合のシミュレーションを行っていることをご存じでしょうか。

例えば1970年から毎年投資し1年間ずつ保有したとすると49回の投資のうち15回は1年後のリターンがマイナスです。一方同様に1970年から毎年投資し10年間ずつ保有したとすると40回の投資でそれぞれ10年後にリターンがマイナスになることは一度もありません。このようなデータを見ても長期運用の有効性が十分に示されていると言えます。

2008年に起こった「リーマンショック」では、株価が急落した銘柄であっても数年後に持ち直したものも多い傾向です。このような株価の急落は、10年に1度程度の頻度で起こっていることを考えても長期かつ分散による運用が資産形成に非常有効と言えます。

## 税制優遇措置を最大活用するポイント

資産運用においては、資産の配分(アセット・アロケーション)を考える前に、その資産をどこに置くか(アセット・ロケーション)を考えることが重要です。運用益が非課税となる「積み立てNISA」や「一般NISA」、そして掛け金を所得控除にできるiDeCoや企業型確定拠出年金の制度を有効に活用しましょう。

特にiDeCoや企業型の確定拠出年金の制度は、税制優遇が手厚く掛け金すべてが所得控除となります。所得税と住民税の負担を軽減することにつながるため、所得税を多く払っている人には非常に適した制度です。つみたてNISAは、長期運用に向いている商品を投資対象(年間40万円が上限)とし上限を超える場合は一般NISA(年間120万が上限)として選択することが非課税枠を最大限利用するポイント。

ただし同じ年に積み立てNISAと一般NISAを併用することができない点は注意が必要です。

## 忘れてはいけない運用コスト

せっかく非課税口座を利用して運用しても運用コストが高ければその分リターンは目減りしてしまいます。そのため運用コストの低い商品を多く取り扱っている金融機関を選ぶことも大切なポイントです。投資信託においては、アクティブ型よりもインデックス型(パッシブ型)のほうが低コストと言われています。

今後の資産運用において重要なことは「多様な情報の中でいかに正しい情報を見出すか」「その情報をどう活用するか」という決断力です。人生100年時代に突入し定年の年齢は「65歳から70歳に引き上げられる」という話も夢物語ではなく現実になりつつあります。コロナショックの際に底を打ったハイテク株も短い期間で元の水準に戻りさらにコロナ前よりも高値を付ける強気相場になりました。

しかしそれも2020年10月時点では調整局面に戻っておりまだまだ不安定な局面に変わりはありません。そういう状況下だからこそ運用の大原則「長期」「継続」「分散」という初心に戻ることは大切です。また運用コストを抑えた商品で運用を続けることがこれからの運用における最大のポイントとなります。コロナのワクチンが開発されたとしてもコロナ以前の社会に戻るわけではありません。

ウィズコロナそしてコロナ後においては「環境にも人間にも優しい生活を実現しよう」という考え方が重要です。今後の資産運用においても「積立投資」「コア商品」「サテライト商品」を上手に組み合わせることに意識しながら戦略を考えていきましょう。できれば自分の保有している銘柄を今一度確認し今後の運用戦略に合っていないものを保有している場合は、早めにリバランスすることがおすすめです。

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