勤務医と開業医で年収はどれだけ異なる?気になる手取り額は?
(画像=Syda Productions/stock.adobe.com)
新井智美
新井智美
トータルマネーコンサルタント CFP®、一級FP技能士(資産運用)、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員 個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

新型コロナウイルス感染症の拡大により医療ひっ迫が報じられる中、子どもにとって医療に携わる職業は憧れの職業の一つとなっているようです。学研教育総合研究所が行っている「小学生白書web版(2020年8月調査)」によると小学生が将来なりたい職業として男女ともに「医師」が10位以内(男子9位、女子6位)でした。

医師と一口に言っても大きく分けると医療機関に勤務する「勤務医」と自分でクリニックを開業する「開業医」があります。しかし「勤務医」と「開業医」の年収は、どのくらい異なるのでしょうか。また勤務医や開業医とのメリットやデメリットは、どのようなものなのでしょうか。

勤務医の年収

厚生労働省が発表している「令和2年賃金構造基本統計調査」によると勤務医の年齢別の年収は、以下の通りです。

年齢 年収
20~24歳 約491万円
25~29歳 約751万円
30~34歳 約1,058万円
35~39歳 約1,284万円
40~44歳 約1,525万円
45~50歳 約1,748万円
50~54歳 約1,794万円
55~59歳 約1,898万円
60~64歳 約1,780万円
65~69歳 約1,830万円
70歳~ 約1,546万円

30代後半から年収1,000万円に

上の表を見ると30代前半から平均年収が約1,058万円となりそのまま年齢が高くなるに伴い多くなっていることが分かります。年収のピークは、50代後半の約1,900万円でその後は若干減少するものの70歳以降でも1,500万円台です。このように医師は、生涯にわたって高収入を得られる職業といえるでしょう。

医師のほうが歯科医師よりも年収が高い

医師と歯科医師を比べてみると以下の結果となることが分かります。

年齢 医師の年収 歯科医師の年収
20~24歳 約491万円 約210万円
25~29歳 約751万円 約578万円
30~34歳 約1,058万円 約692万円
35~39歳 約1,284万円 約532万円
40~44歳 約1,525万円 約1,020万円
45~50歳 約1,748万円 約997万円
50~54歳 約1,794万円 約1,152万円
55~59歳 約1,898万円 約1,157万円
60~64歳 約1,780万円 約1,016万円
65~69歳 約1,830万円 約884万円
70歳~ 約1,546万円 約1,484万円

歯科医師は、年代によってばらつきがあるものの40代以降に年収1,000万円台に達しその後も約1,000万円強で推移していることが分かります。

開業医の年収

中央社会保険医療協議会が公表している「第22回医療経済実態調査(令和元年実施)」によると個人で開業している場合の年収は、約1,597万円でした。ただ法人化して病院長クラスになると年収は大きく異なります。法人の形態別および国立・公立の病院長の年収は、以下の通りです。

社会保険関係法人 医療法人 その他 国立 公立
約2,152万円 約3,042万円 約2,490万円 約1,918万円 2,131万円

国公立の病院長の年収に比べて医療法人の病院長の年収は、群を抜いて高いことが分かります。病院長クラス以外の医師の年収については、どの法人形態でも1,500万円程度あるため、個人事業主として開業している医師とそこまでの差はないといえるでしょう。

勤務医のメリット・デメリット

人によっては、一生勤務医であったりある程度の経験を積んだ後に自分でクリニックを開業したりするなどさまざまです。では、勤務医のメリットやデメリットとは、どのようなものなのでしょうか。

メリット1:収入の安定性

勤務医であれば毎月決まった給与収入や、賞与・特別手当などを安定して受け取ることが期待できます。患者数に影響されずに安定した収入が得られる点はメリットです。

メリット2:最新の医療に携わることができる

勤務先にもよっても異なりますが大学病院や規模の大きい総合病院などであれば最新医療に携わったり勤務先の費用で学会に参加したりすることもできます。

メリット3:社会保障が用意されている

勤務先の福利厚生制度を利用することができることは、メリットの一つです。健康保険だけでなく有給休暇などの制度や病気などの理由で長期間休暇が必要な際も、傷病手当金などの制度を活用することができます。

デメリット1:勤務時間が不規則になりがち

勤務先の病院の病床数が多ければ多いほど当直などの対応が発生し勤務時間が不規則になりがちなのはデメリットです。救急病院であれば夜間勤務も必須となります。もちろんその分シフト調整はできるものの決まった日に休みが取れるとは限りません。また受け持ちの患者の急変などで呼び出されることもあります。

デメリット2:転勤などの可能性がある

系列の病院などへの転勤の可能性がある点も勤務医のデメリットの一つです。また異動先が全国に点在している場合、慣れない遠方の土地で生活を余儀なくされる可能性もあります。配偶者や子どもがいる場合は、家族での異動が困難なケースもあるでしょう。

開業医のメリット・デメリット

では、開業医として働く場合のメリットやデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。

メリット1:自分の診療スタイルで治療行為が行える

開業医の場合、自分の理想の診療スタイルで治療行為を行うことが可能です。勤務医は、勤務先の診療方針に沿った治療を行うなどしがらみがあるかもしれません。

メリット2:勤務時間を自分で決めることができる

多くの診療所では、日曜日を休診としていたり土曜日や木曜日を午前中だけの診療としていたりするケースが目立ちます。このように自分の勤務サイクルを調整できる点も開業医のメリットの一つです。

メリット3:地域に寄り添った治療ができる

拠点病院などでは、診療所からの紹介状がないと診てもらえないケースも少なくありません。しかし診療所の場合は、近隣住民を最初の段階から診ることが期待できます。長年診療所を開設していると親子2代にわたって受診しに来るケースもあるでしょう。地域に寄り添った治療が行えるため、自分の仕事が社会貢献につながっていると感じることができるのではないでしょうか。また、今回の新型コロナウイルス感染症拡大における医療逼迫の中において、治療は出来なくても、保健所など連携し、速やかに治療体制に入れるような仕組み作りが課題となっており、今後はそのような体制をいかに早く構築できるかが評価されると思われます。

デメリット1:経営のセンスが必要となる

開業医は、事業主となるため、医師としての能力だけでなく当然経営者としてのセンスも問われます。また自分一人で治療をすべてこなすことは難しいため、看護師などを雇用することも必要です。そのため収入と経費のバランスを常に考えなければなりません。また診療所の開設には、設備投資がかかるため、銀行から融資を受ける際には、事業計画書の作成など医業以外の業務が発生します。

デメリット2:後継者問題に悩むことがある

後継者がいない場合、最終的に病院は閉院となります。地域のかかりつけ医としてたくさん診察してきた患者を別の病院に紹介するなどの対応策も考えなければなりません。多くの患者を抱えている場合は、それぞれに合った他の医師を紹介するのは非常に大変な作業となります。

同じ年収でも手取り額が異なる?開業医が使える経費計上の特例

勤務医の収入は、給与所得です。しかし開業医の場合、個人事業主であれば事業収入となります。給与所得の場合は、いわゆる経費分として給与所得控除がありますがその額は収入によって決まっているため、節税対策も限られる点は開業医と大きな違いです。例えば年収1,500万円の場合、給与所得控除額は195万円となります。

給与所得額は、年収1,500万円-給与所得控除195万円=1,305万円となり所得税率は33%です。所得税や住民税、各種控除(社会保険料控除など)を考慮すると手取り額は、1,000万円程度という結果になります。

開業医が使える経費計上の特例とは?

開業医は、要件を満たすことで「社会保険診療報酬の所得計算の特例」を利用することが可能です。この特例は、実際にかかった経費と特例上で計算される経費の多いほうを経費計上できるため、節税することが期待できます。例えば勤務医と同様に社会保険診療報酬による収入が1,500万円、経費が200万円のケースをシミュレーションしてみましょう。

「社会保険診療報酬の所得計算の特例」が適用された場合、経費は200万円ではなく1,080万円を計上することが可能です。そうすると事業所得は1,500万円-1,080万円の420万円となり所得税率は20%となります。実際にかかった経費よりも多くの金額を経費計上することで所得額を抑えることができ最終的な節税効果を生むことが期待できるでしょう。

この特例は「社会保険料報酬による収入が5,000万円以下かつ総収入が7,000万円以下の医師もしくは歯科医師」が対象です。そのため開業して間もない場合は、患者数が少ない可能性があるため、実際にかかる経費を計上するほうがいいケースもあるでしょう。しかし患者数が増えて社会保険料報酬による収入が増えてきた場合は、特例を利用することで開業医ならではのメリットを享受できます。

開業医の場合は、法人化して病院長クラスになると一気に年収が高くなる傾向です。開業してからある程度の収入が見込めるまでは、経費計上における特例を利用することができます。しかしやはり収入が安定するまでは時間がかかるため、勤務医を選ぶ方もいるかもしれません。「患者とどのようにかかわりたいか」「将来どのような医者になりたいか」を考えながら自身の働き方を考えてみてください。

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