資産運用
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保険には生命保険や損害保険、自動車保険といった種類があります。そもそも、保険の趣旨は病気や怪我、事故による突発的な損害に備えることです。その一方で、この趣旨を満たしつつ資産運用の機能も兼ね備えている保険が存在します。

では、「保険で資産運用をする」とはどのようなことなのでしょうか。そして、メリットおよびデメリット、他の金融商品との差異はどのような点なのでしょうか。それぞれ解説します。

保険で資産運用ができる理由

まず、数ある保険の中で資産運用の機能も兼ね備えたものは「貯蓄型保険」と呼ばれ、保障機能と貯蓄機能が合わさった保険商品を指します。具体的な種類としては以下の4つが挙げられます。

  • 終身保険
  • 養老保険
  • 学資保険
  • 個人年金保険

まずは前提として、それぞれの概要とスキームについて解説します。

終身保険

終身保険は、被保険者が亡くなったときや重い障害を負ったときに保険金を受け取ることができる保障機能を持っており、保障期間が一生涯続く保険を指します。つまり、終身保険には満期がありません。

そして、途中解約時には解約返戻金としてもまとまったお金を受け取ることができます。なお、保険金と解約返戻金の二重取りはできません。

養老保険

養老保険は終身保険と異なって満期があります。満期までの間に被保険者が亡くなったときには死亡保険金を受け取ることができ、満期時に存命であれば満期保険金としてまとまったお金を受け取ることができます。

学資保険

学資保険は、将来的に必要となる子供の学費の貯蓄を目的にした保険です。契約時に、子供の学費が大きくかかる時期を予め設定し、その時期に「入学祝い金」や「満期学資金」といった名目でまとまった保険金を受け取れます。また契約者が亡くなった場合、それ以降の保険料の支払いが免除された上で保障は続くという特徴があります。

個人年金保険

個人年金保険は一定期間、保険料を払い込む代わりに、60歳ないし65歳のいずれかのタイミングから、5年ないし15年程度かけて年金形式で保険金を受け取る保険です。原則的に保険金を一括で受け取るのではなく、年金形式で毎年一定の保険金を長期に渡って受け取るという特徴を持っています。

また、保険金の受け取り方には以下の4種類のパターンがあります。

  • 確定年金
  • 有期年金
  • 終身年金
  • 夫婦年金

「確定年金」は5年・10年・15年など契約時に定めた一定期間のみ年金を受け取ることができるものです。被保険者の生死に関係なく、受け取れます。

「有期年金」は確定年金と同じく、契約時に定めた一定期間に年金が受け取れるものです。ただし、被保険者が死亡するとその時点で年金を受け取ることができなくなります。

そのため、被保険者が死亡しても年金を受け取れる保証期間を付けることができます。保証期間中に被保険者が死亡した場合、保証期間の残りに対する年金または一時金を遺族が受け取れます。

「終身年金」は公的年金と同様に被保険者が存命である限り一生涯に渡って年金を受け取ることができるものです。なお、終身年金においても有期年金と同様に保証期間を付けることができる場合があります。

最後に、「夫婦年金」は年金の受取期間に限りがなく、夫婦いずれかが生存している限り年金を受け取ることができるものです。

資産運用スキーム

生命保険会社は加入者から集めた保険金の一部で債券や株式、不動産といった資産に投資して運用しています。そして、その投資で上げた利益の一部を満期時や解約時に当該保険の受取人に還元するという仕組みです。

この仕組みの下、それぞれの保険において満期保険金や解約返戻金、入学祝い金といった形式に差はありますが、いずれにおいても受け取る保険金等の総額が払い込んだ保険料の総額を上回るように設定できるという性質を持っています。

その点において、貯蓄型保険は保険としてのみならず資産運用の手段としても活用できるということなのです。

そして、貯蓄型保険では積み立てた元本は保証されます。支払った保険料は将来受け取る解約返戻金や満期保険金などの原資として保険会社が運用しており、原則として契約時に解約返戻金率が提示され、その額面通りの金額を受け取れるためです。

ただし、一定の場合においては貯蓄型保険にも元本割れのリスクが存在します。それは以下2つの場合です。

  • 短期解約した場合
  • 外貨建てで積立を行う商品において、為替レートが大きく変動した場合

前者について説明します。貯蓄型保険においては、払込保険料の総額に遅行して解約返戻金が増えていき、保険料の払込期間を過ぎた後に解約返戻金が払込保険料の総額を上回り、損益分岐を迎えます。したがって、その損益分岐の時期を迎える前に解約をすると元本割れするということになります。

後者については、例えば、25歳から15年間に渡って毎月200米ドルの保険料を払い、60歳の解約時に返戻金が55,000米ドルになる商品を想定します。

このとき、支払う保険料の総額は200(米ドル)×12(ヶ月)×15(年)=36,000米ドルです。一方で、60歳の解約時に55,000米ドルの返戻金が入りますので返戻率は55,000米ドル÷36,000米ドル=152.78%になります。

支払う保険料の総額と解約返戻金が契約時に決まっている以上は元本割れのリスクはないようにみえます。しかし、これは全て米ドル基準の計算で、実際は保険料を支払う時も解約返戻金を受け取る時も日本円と米ドルとを両替する必要があります。

上記の場合において、支払った総額の平均為替レートが1米ドル=110円だったとします。このとき、解約時に円高が進み1米ドル=72円未満になると、返戻金を円に両替した時点で元本割れします。

つまり、円基準の支払い総額である36,000(米ドル)×110(円/米ドル)=3,960,000円に対し、円基準の解約返戻金が55,000(米ドル)×71.9(円/米ドル)=3,954,000円になってしまうということです。

外貨建ての商品のほうが高い収益性を有する半面、このような為替変動による元本割れリスクがあることには留意しておきましょう。

保険で資産運用をする3つのメリットとは

保険を活用した資産運用の概要とスキームを解説しましたが、そのうえでどのようなメリットがあるのでしょうか。他の金融商品での資産運用との比較も交えて3つのメリットを解説します。

1.運用が半自動で手間がかからない

前述したように、保険の契約者が支払う保険料は生命保険会社によって運用されています。すなわち、保険に加入するということは自分のお金で間接的に投資しているとも言えるでしょう。

しかしながら、その投資における意思決定は生命保険会社が行なっているため、契約者に投資判断が求められることはありません。この点は自身で行う株式投資や不動産投資と大きく異なる点です。

これらを自身で行う場合は「いつ、何に、いくら投資するか、そしてどのように運用を進めるか」といった判断を全て自分で行わなければいけません。一方、保険による資産運用は自身での投資判断が必要なく、保険料の設定や引き落とし日といったプランを決めるだけです。そのため、“半自動”で資産運用ができると言えるでしょう。

2.保険としての機能と併用できる

主に資産運用としての側面についてフォーカスしてきましたが、保険である以上はその機能も備えています。死亡時の保険金や子供の入学時の祝い金といった人生における安心を得ながら貯金感覚で資産運用もできるということです。

資産運用という攻めの機能と保険という守りの機能を同時に満たせる金融商品は保険以外にはありません。この点は保険による資産運用特有の大きな強みともいえます。

3.トータルの収支が契約時に分かる

保険においては契約時に毎月の保険料の金額、保険金の金額、解約返戻金の推移などが予め提示されます。例えば、終身保険を契約した場合、何歳まで毎月いくらずつ保険料を支払い、何歳で損益分岐を迎え、何歳で解約返戻金がいくらになるかといった一覧表を契約時に受け取ることができます。

これに対し、他の金融商品においては長期的な値動きやインカムゲインの予測が極めて困難であるため、その投資におけるトータルの収支を見積もることはほぼ不可能です。

したがって、人生における長期的な資金計画にも資するのが保険による資産運用なのです。

保険で資産運用をする3つのデメリットとは

保険による資産運用には上述のようなメリットがある一方で、デメリットも存在します。以下で3つのデメリットを解説します。

1.長期的に資金を拘束せざるを得ない

保険は長期的に加入することを前提として設定されているものが多く、一度契約すると10年単位で資金を積み立て続けることになります。また、短期で途中解約すると元本割れするリスクが高く、長期的に資金を出し入れできないことはデメリットになる場合があります。

2.運用利回りが低い

保険による資産運用では、他の金融商品と比べて高い利回りは期待できません。その要因は、保険会社が販売代理店に対して支払う高額な手数料を保険料に上乗せしているためです。

例えば、加入から15年間に渡って保険料を支払い、その後は加入から20年後に105%、25年後に120%に返戻率が上がる設定の商品を想定します。この場合、単利で計算すると20年後に解約返戻金を受け取った際の年間利回りは、(105%-100%)÷20(年)=0.25%、25年後だと(120%-100%)÷25(年)=0.8%です。

世界的な低金利時代とはいえ、20年以上に渡って投資をして利回りが1%を下回るのは決して良いパフォーマンスとはいえません。このように、保険による資産運用では日本国内の定期預金より少し高い程度の利回りしか期待できないということです。

3.インフレに弱い

上述のように、保険においては契約時にトータルの収支が事前に分かります。これは、将来的な資金計画を立てられるというメリットです。

しかし、逆にいうと解約返戻金や満期保険金を受け取るタイミングでインフレが進んでいて、貨幣の価値が相対的に下がっていた場合にそのダメージが直撃するというデメリットも含んでいます。

例えば、契約時から解約時または満期までに物価が50%上昇していたとします。そうすると、貨幣価値の目減りによって契約時に想定していたリターンが実質的に3分の2になってしまうということです。解約時または満期にいくらのお金が返ってくるかが契約時に決まっているということは、このようなインフレの影響に弱いのです。

保険で資産運用を始める前にチェックすべき4つのポイント

保険の特徴やメリット・デメリットについて概説してきました。それらを踏まえたうえで保険加入前にチェックすべきポイントを4つ述べていきます。

1.保障内容

保険である以上は万が一の際やお金が必要になるライフイベントに備えることも目的の一つです。したがって、入院時や手術時の保障、その他特約の内容については精査が必要です。

2.保険料

上述のように、保険は長期に渡って保険料を支払い続けることを前提としています。毎月の支払いが長期的な負担とならないような金額に設定する必要があります。

3.保険金額

契約者に万が一のことがあった場合や子供の入学時にいくらの祝い金が受け取れるかというリターンについては保険の最重要項目の一つです。家族構成や年齢、生活水準といった要素を複合的に勘案し、そこから逆算していくらの保証が必要かというプランを立てるという視点が必要です。

4.返戻率

保険の資産運用としての側面に焦点を当てると、この点は投資の利回りに匹敵する非常に重要な要素です。途中解約した場合にどの程度増えてお金が戻ってくるのかを解約時の年齢ごとに事前にシミュレーションしたうえで加入の判断をするべきといえるでしょう。

ライフプランに合わせた保険の選択が重要

以上のように、保険には保障と資産運用の二面性があります。そして、保険での資産運用においては、保障がある安心感を得ながら貯金感覚で長期的に資産運用ができるというメリットがある半面、資金拘束を受けたり利回りが低かったりするというデメリットもあります。

これらの要素全体と、自分の性格や家族のライフプランなどを加味して、保険で資産運用を行うか、保険と資産運用は分けて別個に行うかという判断を行っていくと良いのではないでしょうか。