防犯や災害対策は、賃貸経営にとって重要なリスク管理の一つです。2020年は、新型コロナウィルスへの感染防止対策も加わり賃貸マンションに対するリスク管理の重要性がさらに高まっています。そこで本記事では、賃貸マンションにどのようなリスク対策が必要なのかについて具体的に考えていきましょう。

賃貸マンションにリスク管理が求められる時代

コロナ、空き巣、災害、賃貸マンションに必要なリスク管理とは
(画像=naka/stock.adobe.com)

2020年、予期せぬ新型コロナウィルスの感染拡大で賃貸マンションのリスク管理に新たな対策が加わりました。従来のマンションのリスク管理は、空き巣や火災など一般的に必要な対策だけで済んでいましたが現代では多岐にわたるリスク管理が求められる時代になったといえます。近年は、地震や台風などの自然災害が頻発しており被害を受けるマンションも増加傾向です。

そこに新型コロナウィルスが加わったことでオーナーが備えるべき対策も増えています。管理側がとるべき対策を具体的に確認してみましょう。

新型コロナウィルス対策はしばらく必要

新型コロナウィルスに関しては、米国大手製薬会社ファイザーやモデルナがワクチンを開発し、英国では2020年12月8日にワクチン接種が開始されたため、コロナ収束への一筋の光明を見出しました。しかし日本でワクチンが承認され新型コロナウィルスの脅威が軽減されたとしても、しばらくは対策を継続する必要があるでしょう。

コロナ対策はそのままインフルエンザ対策にもなるため、入居者にとっては対策を継続してくれることで安心感につながります。

【主な対策】

  • 集会所などでの大人数が参加する催し物は開催しない
  • 多くの人の手が触れる共用部分(エレベーターやオートロックのボタン、出入り口のドアノブなど)のこまめな消毒を行う
  • エントランスなどにアルコール消毒液を配置する
  • 窓やドアをこまめに開けて換気を行う
  • エレベーターでは機械による換気も必要
  • 万一感染者が出た場合は、保健所・保健センターに対応を相談する

空き巣を防ぐためのセキュリティ対策

賃貸マンションにとって空き巣を防ぐことは、重要なセキュリティ対策です。警察庁の「住まいる防犯110番」によると2019年における住宅対象侵入窃盗の発生件数は2万8,936件(前年比-8.2%)でした。2004年以降は、減少を続けており各住宅のセキュリティ対策が効果をあげていることがうかがえます。

しかし1日あたりで換算すると約79件も発生していることになり、まだまだ空き巣に対する警戒を緩めることはできません。

【主な対策】

  • ベランダ(裏庭)につながる侵入路があれば開閉式の鉄扉を設置して管理人以外は開けられないようにする
  • 侵入の足場になるようなものを置かない
  • はしごや脚立などは倉庫や管理人室で保管する
  • 窓からの侵入を防ぐため、防犯フィルムや防犯ブザーを各戸に配布、設置してもらう
  • ベランダ側にも人感センサーライトを設置する
  • 玄関の鍵をサムターンで開けられないため、サムターンカバーを各戸に配布、取り付けてもらう

ただし各戸に配布するものは共用部分ではないため、設置を強制できない場合もあります。そのため「希望する入居者のみに管理側が設置する」ということも方法の一つです。

地震や火災に備える防災対策

地震や火災などの防災対策も重要なリスク管理です。日本は、地震大国かつ近年は台風などの自然災害も多く発生しているため、ある程度規模の大きいマンションでは、自主防災会を設立して災害に備えているところもあります。中小規模のマンションであっても乾パンや飲料水、救命用具などを常備する防災倉庫は必要です。

【主な対策】

  • 自主防災会を組織し、定期的に防災訓練・避難訓練、防災倉庫の点検を行う
  • 管理組合の居住者名簿から、障害・高齢者などの避難困難者を把握しておく
  • 放火の原因になる段ボールや新聞などの紙類を表に置かない
  • ガス漏れ警報器は、3戸以上の集合住宅でプロパンガスの場合は設置が義務化
  • 都市ガスは任意であっても設置したほうが安全なため、広報や掲示板で各戸に推奨することも有効

その他のリスク対策

個人情報の管理

その他のリスク対策としては、個人情報の管理も重要です。居住者名簿を発行しているマンションもありますが、万一第三者にわたっても個人情報の流出につながらない記載内容にとどめるようにしましょう。近年は、集合ポストや玄関ドアの表札に名前を出さない入居者も増えているため、個人情報の管理を強化することで入居者からの信頼が高まります。

民泊の転用

最近問題になっているのが「所有するマンションを民泊に転用すること」です。不特定多数の人が宿泊する民泊が他の居住者に知られた場合、オーナーが苦情を受けることになりかねません。本来民泊を行うには「旅館業の簡易宿所営業許可」が必要ですが、無許可で営業している例もあるようです。法令違反となるため、無許可営業を発見したら停止させる必要があります。

近隣トラブル

オーナーにとって一番気がかりなのが近隣トラブルです。マンションは集合住宅のため、トラブルになる原因は多岐にわたります。例えば主なトラブルの原因は以下の通りです。

  • テレビや音楽などの騒音
  • ペットの鳴き声や異臭
  • ベランダの植物が隣家にはみ出している
  • ゴミ出しルールを守らない
  • タバコの煙やにおい
  • エントランスや廊下での大声など

これらのトラブルがあるとオーナーに苦情が寄せられるケースがあります。最悪の場合は、被害を受けている人が警察や弁護士に相談することもあるでしょう。そうなるとオーナーの管理責任が問われる可能性も否めません。近隣トラブルを避けるには、日ごろからマンション内の現状を知っておくことが必要です。

【主な対策】

  • 居住者名簿は部屋番号と氏名のみなど最小限の記載内容にする
  • 民泊を禁止したい場合は、管理規約に記載し契約の段階で十分に説明する
  • 近隣トラブルを未然に防ぐため、居住者アンケートを実施し困ったことや迷惑に思っていることがないか調査する

万全のリスク管理で入居率の向上を

全国賃貸住宅新聞が発表した「2020年版入居者に人気の設備ランキング」によると、入居者に人気がある防犯設備として「エントランスのオートロック」「ホームセキュリティ」「テレビモニター付きインターホン」がベストテンにランクインしています。入居者の防犯意識の高さがうかがえるデータです。これらの設備も予算との兼ね合いを見ながら導入すればセキュリティが強化され、募集広告のアピールポイントになるでしょう。

万全のリスク管理を行うことで入居率の向上もつながるのです。ここまで賃貸マンションにおける管理側から見たリスク対策について確認してきました。一棟オーナーにとっては、とるべき対策が多く今後より一層リスク管理が難しい時代になることが予想されます。区分所有マンションの場合は、基本的に管理組合や不動産管理会社が対策を行ってくれるのでオーナーが対応することは少ないでしょう。

そこで今後マンション投資を考える場合は、一棟すべてを所有するのではなく区分所有で複数の部屋を持つほうがリスクは少ないでしょう。また区分所有で別々のマンションを持つほうが分散投資にもなり場所が離れることで災害時のリスクも軽減できます。リスク管理が増大する不確実性の時代を乗り切る方法として区分所有マンションの複数経営を検討してみてはいかがでしょうか。