吉田謙太郎
宅建士・不動産投資家・ライター|筑波大学卒業後、大手不動産会社にて投資用不動産の売買および賃貸営業・投資家へのコンサルティング・自社メディアでの記事執筆などを行う。自身でも社会人1年目(22歳)から不動産投資をしており、横浜市・大阪市・神戸市に区分マンションを4戸運用中(2021年11月現在)。保有資格は宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者。

賃料収入が主な収入源となる不動産投資では、空室期間が長期化すると収入はゼロになるため、長期空室は致命的なリスクの一つです。長期化した空室への対策は、空室発生そのものの未然防止や発生直後の対策とは別次元のものとなるため、大きく異なった考え方や対処法が必要となることも少なくありません。

「空室が長期化する」ということは、募集活動おいて市場とのミスマッチが生じている可能性があります。本記事では、長期空室がもたらす悪影響や長期化してしまう理由などについて解説します。

長期空室がもたらす3つの悪影響

長期空室が致命的なリスクとなる具体的な理由は、主に以下の3点です。

■ 毎月のキャッシュフローが悪化する
■ 住戸内設備の劣化・故障
■ 不人気物件としてのレッテル

言い換えると、長期空室は収支面のみならず、設備(ハード面)や物件に対するイメージや心理的影響(ソフト面)にも悪影響をおよぼすリスクがあるということです。

毎月のキャッシュフローが悪化する

賃料収入を失うということは、投資または経営として危機に瀕している状態です。特にローン返済がある場合や区分マンション投資の場合は、賃料収入の有無に関わらず毎月の固定費(ローン返済、管理費および修繕積立金、税金など)がかかります。固定費だけでなく変動費(突発的な設備の故障による修繕費や設備の故障に起因する2次被害への賠償など)も加えて発生するリスクもあるでしょう。

つまり固定費および変動費を賃料収入から賄えない状況は、非常に危険な状態なのです。

住戸内設備の劣化・故障

住戸内には、エアコンや床材、クロスといったさまざまな設備があり、中には長期空室が一因となって劣化したり故障したりするものもあります。例えばエアコンは、長期間にわたって作動させないと内部の潤滑油やモーターの劣化が早くなり寿命が短くなってしまうことも少なくありません。

また空室時は、窓にカーテンを設置しない場合が多くあります。そのため床材やクロスが長期間にわたって日光に当たり続けることで日焼けし、劣化が早まる要因となり得ます。さらに換気ができないことによる湿気が原因で、カビが生えたり封水が切れて排水口から悪臭や虫が発生したりすることもあり得るため、長期空室は設備におよぼす悪影響が予測されるのです。

不人気物件としてのレッテル

空室となっている長期にわたり、募集広告を出し続けているケースもあるでしょう。長く募集活動をしている物件に対しては、お客様や賃貸仲介業者から「長期間借り手がつかない不人気物件」というイメージがついてしまう恐れがあります。ネガティブなイメージを持たれてしまうと検討や紹介の選択肢から外されてしまう可能性があるため、注意が必要です。

空室が長期化する3つの理由

空室の発生自体は、原因を究明しても完全に回避することは難しいでしょう。しかし空室の長期化は、原因を究明して万全な対策を講じる必要性が高いものです。空室が長期化する理由としては、具体的に以下の3つが考えられます。

■ 募集条件が市場にマッチしていない
■ お客様からも賃貸仲介業者からも認知されていない
■ 賃貸仲介業者へのインセンティブ不足

募集条件が市場にマッチしていない

募集条件は主に賃料や礼金を指し、市場は物件周辺エリアの賃貸マーケットを指します。募集条件が市場にマッチしていない場合は、周辺エリアの競合物件と比べて賃料および礼金が高い可能性があるでしょう。各エリアには、それぞれにニーズ(求められる間取りや広さ、賃料帯)と相場(賃料および礼金の水準と上限)があります。

当該物件がそのエリアのニーズや相場から乖離していると長期間、借り手がつかない事態になってしまいがちです。周辺の競合物件の募集条件をよく調査したうえで、市場にマッチした条件で募集活動を行うことが得策といえます。

お客様からも賃貸仲介業者からも認知されていない

賃貸マーケットは、新着物件の情報が更新されていくことで従前から募集されている物件が埋もれやすくなります。結果として長期空室物件は、新着物件の中に埋もれてしまい「お客様からも賃貸仲介業者からも忘れ去られて認知されていない」という状態になってしまう場合があるのです。

認知されていない物件は、対策を講じても成約にいたる可能性は低いでしょう。そのため、まずは物件情報を認知させる工夫が求められます。

賃貸仲介業者へのインセンティブ不足

賃貸仲介業者は、賃貸借契約を成約させるたびに成功報酬(インセンティブ)を賃貸人から受け取っています。「インセンティブは成約賃料の◯ヵ月分」という報酬体型になっており、「何ヵ月分が支払われるか」は物件によって異なります。賃貸仲介業者の営業パーソンには、毎月ノルマや目標数字があるため、ADの高い物件を優先的にお客様に紹介する傾向があるのです。

賃貸仲介業者の営業パーソンのモチベーションを考えると、インセンティブがゼロないし少ない物件は成約させる“うまみ”が少ないため、お客様への紹介候補から外されてしまうリスクがあるといえるでしょう。

空室が長期化したときの3つの対処法

上述の空室が長期化する原因に鑑み、長期空室への対処はお客様と賃貸仲介業者の双方向に訴求していくことが肝要といえるでしょう。具体的には、以下の3つをあわせて行うことで長期空室を解消できる可能性が高くなります。

■ 期間限定での条件緩和
■ 賃貸仲介業者への周知活動
■ インセンティブの増額

長期空室の原因に合わせて3つの対処法を重畳的に適用し、資金計画やコストパフォーマンスも加味しながら最も効率的な策を講じましょう。

期間限定での条件緩和

募集条件が市場にマッチしていないと借り手が長期間つかない事態に陥ってしまう可能性があると上述しました。募集条件に長期空室の原因がある場合は、周辺エリアの水準または水準を少し下回るところまで現在の募集条件を緩和するのが効果的です。条件緩和の具体例としては、「賃料の減額」「礼金の減免」「フリーレントの付与」といったものが挙げられます。

各種の条件緩和において「◯月末までの成約に限り」という期間限定の文言を付加することで、早期成約に結びつけられることが期待できます。

賃貸仲介業者への周知活動

新着物件の情報に埋もれて自分の物件の募集情報が認知されにくい状態になっている場合には、物件の周知活動を行うことが効果的です。具体的な方法として、賃貸仲介業者に対しての電話やメールの発信、さらには直接、訪問営業をするなどが挙げられます。実際に周知活動をする際には、賃貸管理会社に依頼をすることもできますが、オーナー自身が行うことも選択肢の一つです。

賃貸管理会社と協力しながら広範囲に物件の募集情報を周知させ、お客様への紹介候補物件として認識してもらえるように努めましょう。

インセンティブの増額

不動産賃貸において、実際に物件をお客様に案内するのは賃貸仲介業者の場合が多いため、彼らに積極的に動いてもらうことが重要な施策の一つです。賃貸仲介業者に動いてもらうためには、インセンティブを増額するのが効果的でしょう。成約時の報酬を主な収入源としている賃貸仲介業者のビジネスモデルから考えて、彼らの利益に直結するところに訴求するのが得策といえます。

各方面への訴求および周知活動が重要

長期空室には、主に3つの原因があり各原因に応じて効果的に対策を講じることで長期空室問題を解決できる可能性が高まります。

まずは周辺エリアの競合物件と比較することで空室が長期化している原因を分析し、「誰に・どのような訴求をするのか」を考えることが重要な要素の一つといえます。コストパフォーマンスとのバランスを保ちながらお客様や賃貸仲介業者に対して訴求力のある施策を考案し、各方面に広く周知することで長期空室を抱え続けるリスクを少しでも軽減させましょう。

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