コロナ禍の今、一番気を付けるべき賃貸管理のポイント
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阿部栄一郎
阿部栄一郎
弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所 弁護士|賃料未払いや明渡し、敷金返還など賃貸借契約の問題から騒音、悪臭の問題まで、幅広く相談や問題解決にあたっています。また、マンション管理組合からの管理費滞納やペットの問題なども対応しております。 相談や問題解決では「なぜそのようになるのか」「なぜそのように解決した方がいいのか」を丁寧に説明をするよう心がけております。

新型コロナウイルスの感染が拡大している中、以下のような疑問を持っているマンションオーナーは多いのではないでしょうか。

  • 新型コロナウイルス感染予防対策をとることは義務なのか
  • その費用は誰が負担するのか
  • 感染者が出た場合の承諾費用等の負担はどうなるのか
  • マンションに入居を希望する者に対して説明義務はあるのか

そこで本記事では、コロナ禍でマンションオーナーが気を付けておきたい賃貸管理のポイントについて解説します。

コロナ禍のマンション等におけるコロナ予防対策の内容

2020年は、新型コロナウイルスの感染に振り回された1年といっても過言ではありません。厚生労働省のホームページでは、感染予防のために咳エチケットや手洗い、3密(密集、密接、密閉)を避けることが推奨されています。マンション管理における主なコロナ対策は以下の通りです。

  • 咳エチケットや手洗い
  • 大人数での集会を避ける
  • エレベーターのボタンやオートロックのボタンなど共用部で人の手の触れる部分のこまめな消毒
  • エレベーターにおける密を回避する(換気や階段の利用など)

新型コロナウイルス感染予防対策は重要ですが、マンションオーナーや管理会社からすれば費用のかかるものです。これらの予防防対策は、マンションオーナーや管理会社の義務なのでしょうか。

新型コロナ感染予防対策は義務なのか

マンションオーナーの義務となるか

一般的にマンションオーナーと賃借人は賃貸借契約を締結しており、賃借人に対してマンションオーナーは物件を貸す債務を負っています。貸す債務は「賃借人がマンションに住むことができるようにする義務」という意味です。では、仮に賃借人が新型コロナウイルスに感染した場合、マンションオーナーの「貸す債務」の義務はどうなるのでしょうか。

賃借人がマンションに“物理的に住むことができるか否か”は、マンションオーナーの「貸す債務」とは関係がありません。賃借人が新型コロナウイルスに感染していようがいまいが賃借人はマンションに居住することができます。そのためマンションオーナーは、必ずしも賃借人のためにマンションで新型コロナウイルス感染予防対策をとる義務までは負っていないといえるでしょう。

管理会社の義務となるか

マンションオーナーと管理会社は、一般的に管理委託契約を締結してマンションオーナーが管理会社に対してマンションの管理業務を委託している関係です。また管理会社は、管理委託契約に基づき賃借人に対応する関係にあります。あくまで管理会社は、マンションオーナーに代わって賃借人に対応している(管理業務を行っている)という関係です。

そのため管理会社が独自に「マンションオーナーが負っている義務以上の義務を負う」ということは考えにくいでしょう。そうなると管理会社も賃借人に対して新型コロナウイルス感染予防対策をする義務は負っていないともいえます。なお管理会社は、マンション管理業務のプロのため、マンションオーナーへマンションにおける新型コロナウイルス感染予防対策を説明することは必要です。

マンションオーナーが「新型コロナウイルス感染予防対策をとるか否か」を選択できるようにするほうが好ましいことは言うまでもありません。

新型コロナウイルス感染予防対策の費用負担はどうなるか

ここまで新型コロナウイルス感染予防対策をとる義務があるか否かについて述べてきました。では、仮にマンションオーナーが新型コロナウイルス対策をとった場合、その費用は誰が負担することになるのでしょうか。上述した通りマンションオーナー・管理会社のどちらも新型コロナウイルス感染予防対策をとる義務までは負っていません。

また義務を負っていない予防対策をとる場合、予防対策の費用を賃借人に負わせることはできません。そのため新型コロナウイルス感染予防対策をとる場合は、マンションオーナーが費用を負担することが必要です。つまり管理会社が予防対策をとった場合も、その費用は最終的にマンションオーナーが負担することになります。

ただし事前に賃借人へ理解を求めるなどして一時的な管理費の値上げや新型コロナウイルス感染予防対策費用として賃借人から徴収することも考えられるでしょう。その場合、賃借人からの同意書などが必要となると考えられます。

マンション等において新型コロナウイルス感染者が出た場合の対応

保健所への連絡

マンションなどで新型コロナウイルス感染者が出た場合は、まず管轄の保健所に連絡をして指示を仰ぎましょう。保健所の指示に従って当該マンションの消毒などを行うことが必要です。なお状況に応じてマンションの管理者に対して消毒命令が出ることがあります。

消毒の費用負担は

消毒をする場合は、当然費用が発生します。では、消毒費用は誰が負担することになるのでしょうか。上記の消毒命令は、マンションの管理者に対して出されるものです。そのため一時的にはマンションの管理者のマンションオーナーが負担することになります。管理会社が管理者の場合でも最終的にはマンションオーナーが負担することになるでしょう。

では、マンションオーナーが負担した消毒費用を新型コロナウイルスに感染した賃借人に請求することはできるのでしょうか。マンションオーナーが賃借人に対して消毒費用を請求(損害賠償請求)する場合、賃貸借契約の債務不履行(契約違反)や不法行為(故意または過失によって第三者などに損害を与える行為)といった損害賠償請求をする理由が必要です。

しかし新型コロナウイルスに感染した多くの人は、自分が新型コロナウイルスに感染した自覚がないままに動いているケースも少なくありません。その場合、新型コロナウイルスに感染した賃借人に債務不履行や不法行為があると考えるのは難しいでしょう。一方新型コロナウイルスに感染していることが明らかにもかかわらず、あえてマンションに滞在した場合はどうでしょうか。

これは、債務不履行または不法行為があると考えることができるため、マンションオーナーは新型コロナウイルスに感染した賃借人に対して消毒費用相当額を請求することができると考えられます。

マンション住民に周知するか

マンションで新型コロナウイルス感染者が発生した場合、「他の賃借人に周知するかどうか」は難しい問題です。新型コロナウイルス感染者となった賃借人以外の賃借人からすれば情報を得られれば自分で行える新型コロナウイルス感染予防対策をより強めることで新型コロナウイルスに感染しない確率を上げることができます。

一方新型コロナウイルス感染者となった賃借人からすれば自分が新型コロナウイルスの感染者と周囲に知られれば、当該マンションに居住しづらくなったり無用な誹謗中傷を受けたりするという可能性も否めません。マンションオーナーや管理会社に求められることは、両者の利益を比較したり熟考したりした対応です。

例えばマンション内に新型コロナウイルス感染者が出たことを案内するとともに新型コロナウイルス感染者となった賃借人のプライバシーに配慮するような方法をとることが求められるでしょう。

新入居者に新型コロナウイルス感染者の発生を告知する義務があるか

マンション内で新型コロナウイルス感染者が出たものの新しい入居候補者が入った場合、当該入居候補者に対して入居前に新型コロナウイルスの発生について説明する必要があるでしょうか。まず厚生労働省のホームページ上によると、新型コロナウイルスは「熱水、塩素系漂白剤、洗剤(界面活性剤)および次亜塩素酸水によって除菌、消毒することができる」との記載があります。

この記載からすると消毒自体の負担はそれほど高くないことが分かります。つまり消毒により入居候補者の不利益はほぼなくなると考えることができそうです。また説明義務は、法令上の義務が定められている場合や当事者が契約をするに当たって重要と認識して質問などで聞いた事項について生ずるものと考えられます。

過去の裁判例では、買主が何度も確認した隣人トラブルについての説明義務がなく(大阪高等裁判所平成16年12月2日判決)、結果的に「仲介業者に損害賠償義務が認められた」といった事案もありました。新型コロナウイルスについては、現行の法令上、入居候補者に対しての説明義務はないため、当事者が契約をするに当たって重要と認識して質問をした事項を除いて説明義務の対象ではないといえるでしょう。

まとめ

コロナ禍でオーナーが押さえておきたいポイントは、以下の4つです。

  • 新型コロナウイルス感染予防対策については、マンションオーナー・管理会社の義務とは考えられない
  • 新型コロナウイルス感染予防対策をとる場合には、マンションオーナーの費用負担となる
  • マンション内で新型コロナウイルスの感染者が出た場合、消毒費用などはマンションオーナーの負担となることが多い
  • 新型コロナウイルスの発生は、マンションの入居希望者に説明するまでの義務はない

これらを頭に入れておき、実際にそういった場面になっても対処に困らないようにしましょう。

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