武井利明
住宅メーカーに約20年営業職で勤務。現在は住宅専門ライターとして住まいの選び方、土地の選び方、ローンを含めた資金計画、プラン、メーカー比較、リフォームなど、幅広いテーマで多数のメディアに執筆。人気動画サイトの住宅系動画脚本なども手がける。営業マン時代に培った知識と経験を生かし、これから家を建てる方の悩みや疑問、不安を解決する記事を得意としている。

ETFという資産運用の名をよく聞くようになりましたが、具体的にどういった金融商品なのかご存じでしょうか。ETFは投資信託の一つですが、取引方法やメリットが大きく異なります。その特徴を理解したうえで投資を行えば、安定しながらもより大きな収益が期待できるでしょう。

ETFとは上場され売買できる

ETF(上場投資信託)は、投資信託の一種です。証券取引所に上場しているため、株式のように随時買付や売りの注文を出すことができます。常に値動きをする点も株式と同様で市場動向を見ながらリアルタイムで売買を行うことが可能です。また指値(さしね)や成行(なりゆき)注文ができるなど、より積極的な運用も行うことができます。

一方でETFの特徴を活かすには、こまめに市場動向を確かめる必要があり一般的な投資信託と比べると運用のための時間確保が必要です。

投資信託は購入しやすく種類も多い

ETFの取り扱いは、証券会社のみです。一方で投資信託は、証券会社の他にも金融機関や郵便局などでも取り扱われているため、購入しやすいといえるでしょう。またETFは現在のような多様な商品が販売されるようになってからまだ日が浅いため、商品の種類は投資信託のほうが多い傾向です。しかし2007年の金融庁の規制緩和により多様なETFが登場し、今後さらに活況になることが期待されています。

また2020年現在は、指数に連動した運用のETFが多い傾向ですが、今後はより積極的な収益を目指すアクティブな銘柄が現れる可能性もあるでしょう。

投資信託との違いは積極運用

ETFと異なり投資信託は、1日1回の取引です。さらに購入金額は、1日の取引が終了した後に決定する基準価額により翌日以降に反映されます。国内の投資信託であれば通常翌日、海外のものであれば翌営業日の翌日に購入金額が分かりETFや株式のように随時値動きを確認することができません。そのため仕組み的にも投資信託は運用会社にある程度任せ、長期的な運用を行う金融商品といえます。

逆にETFは積極的な売買を随時行えるため、投資信託の一種ではあるもののかなり株式寄りの特徴があるといえるでしょう。

NISAやiDeCoでの取り扱い

ETFは、iDeCoでの取り扱いがありません。もともとiDeCoは年金として積み立てる投資信託や保険、預金への税制優遇であり、常に売買を行って積極的に運用を行うETFとは目的や手段が全く異なるものです。一方で、つみたてNISAでは、ETFの取り扱いがあるものの2020年11月9日時点で銘柄が7本と非常に少ないため、あまり選択肢がありません。

なぜなら、つみたてNISAは金融庁の意向により、長期に安定しリスクが分散されている商品が選ばれているからです。通常のNISAでは複数のETFが用意されていますが、口座を作る金融機関ごとで選べるETFが異なり、しかも数自体がそれほど多くはありません。ETFはもともと銀行での取り扱いがないなど投資信託と比べNISAにおいても選択肢は限られています。

税制優遇で魅力のあるNISAですが、少ない商品から無理にETFを組み込むメリットは少ないといえるでしょう。

ETFのメリットとデメリット

ETFは、自分で売買のタイミングや金額などを決められるため、より積極的な運用ができる点がメリットです。そのため投資信託に比べより多くの収益を得られる可能性があります。

一方、純資産が減り上場廃止となるリスクがあることはデメリットです。また銘柄によっては希望の価格で売却できない可能性もあります。さらに自分で売買を判断する必要がある部分は、忙しい人や運用をある程度お任せにしたい人にとってはデメリットになるかもしれません。

ETFが適している人

それでは、ETFが適しているのはどのような人でしょうか。

自分で積極的に運用したい人

ETFは、随時売買が可能で値動きも確認できるため、自分で積極的に資産運用を行いたい人に適しています。また通常の投資信託よりも高い収益を上げたい人や、将来は株式より収益が見込める資金運用を目指す人のステップアップにも適しているでしょう。

保有手数料をできるだけ抑えたい人

ETFは、一般的な投資信託に比べて購入手数料や保有している間にかかる信託報酬が割安です。投資信託は、信託報酬として販売会社、受託会社、運用会社それぞれに手数料を支払う必要がありますが、ETFは販売会社への報酬がありません。そのためできるだけ手数料を抑えて運用をしたい人にETFは適しています。

しかし現在は通常の投資信託も手数料などの引き下げの流れがあり、必ずしもETFが有利とは限りません。投資信託も購入対象であれば事前にそれぞれの手数料を確かめると良いでしょう。

投資信託が適している人

一方で従来の投資信託は、どのような人が適しているでしょうか。

あまり手間をかけずに運用したい人

投資信託は、ETFに比べて積極的に運用にかかわるというより商品を選んだらあとは定期的に見守るスタンスになります。もちろん投資信託といえども任せきりではリスク回避できません。しかしできるだけ少ない手間で資産運用を行いたい人や長期計画で積み立てを行いたい人には、適した方法といえるでしょう。

商品が豊富な中から選びたい人

投資信託は、さまざまな分野の商品が豊富にあるため、できるだけ多くの選択肢の中から選びたい人にも適しています。ETFは、歴史が浅いため今後増える可能性はありますが、投資信託と比べると商品が少ないのが現状です。多くの候補の中から吟味して、より自分に合った商品を選びたいのであれば投資信託のほうが適しています。

iDeCoやNISAの税制優遇を活用したい人

すでに紹介したように掛け金や収益に対する税金の優遇が活用できる「iDeCo」にはETFの取り扱いがありません。また同様の優遇「NISA」にはETFの選択肢はあるものの商品数は非常に限られています。いずれも税制優遇の恩恵を十分に活かしたい場合は、投資信託を選択したほうが良いでしょう。

ETNは資産リスクに注意

ETFと似た投資商品にETN(Exchange Traded Note)という金融商品があります。こちらは、上場投資証券とも呼ばれ、金融機関が信用力を元に発行する債券です。ETFと同様に上場しており、証券取引所で取引を行うことができます。リアルタイムで売買できる点もETFと同じです。ETNの大きな違いは、金融機関の信用力で発行される債券となるため、裏付け資産を持たないこと。

ETFはあくまで投資信託のため信託銀行に投資資金は保管され、万一運用会社などが倒産しても投資した資金は守られます。しかしETNは資産の確保がないため、万一金融機関が倒産したり財務状況が悪化したりすれば、価値が下落し最悪の場合は無価値になる恐れもあるのです。ETNは、現物保管が難しく裏付け資産の確保が困難な株式や希少金属、農産物などに投資できるという特徴があります。

そのため大きな収益を得られる可能性がありますが、一方で明確なリスクを持つことも理解しておきましょう。

海外ETFは銘柄が豊富

ETFには、海外ETFと呼ばれる海外の上場投資信託もあります。国内のものに比べ銘柄数が非常に多く投資先もさまざまあるため、一つの商品で国際的な分散投資ができることが大きなメリットです。また海外ETFも一般的な投資信託と比べ手数料が抑えられており長期にわたって運用するなら見逃せないメリットとなります。

バンガードなど著名な運用会社の商品も購入できるため、市場の視野を広げる意味でも注目して良いのではないでしょうか。

ETFは積極運用してこそ活かせる

ETFは、投資信託の一種です。しかし積極的に売買することで収益を得る運用も十分できそれこそがETFのメリットといえるでしょう。運用は、信託先に任せ商品を選びながら長期的に積み立てる従来の投資信託とは根本的な違いがあります。自分の投資スタイルをしっかりと理解したうえで「ETF」や「投資信託」を選ぶようにしましょう。

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