エンジェル税制はベンチャー企業への投資メリットになるのか
(画像=BluePlanetStudio/stock.adobe.com)

ベンチャー企業への投資は関心があるもののメリットがあるのかなどで迷っている方がいるかもしれません。しかしベンチャー企業へ投資には、エンジェル税制という個人投資家に対する税制優遇制度があり投資負担を軽減できる可能性があります。今回の記事では、エンジェル税制の具体的な内容や条件、投資方法などを解説します。

エンジェル税制は投資税制優遇制度

エンジェル税制は、未上場のベンチャー企業に投資した個人投資家への税制優遇制度です。投資した時点と売却時点の両方で税制上の優遇措置を受けられます。

投資した年に受けられる優遇措置

ベンチャー企業に投資した年に受けられる優遇措置は、以下の2つの種類があり投資先によってどちらかを選択することが可能です。

優遇措置A

  • 設立5年未満の企業への投資が対象
  • (対象企業への投資額-2,000円)をその年の総所得金額から控除
  • 控除対象となる投資額上限は、総所得金額×40%と800万円(2021年1月以降)のいずれか低いほう

優遇措置B

  • 設立10年未満の企業への投資が対象
  • 対象企業への投資額全額をその年の他の株式譲渡益から控除
  • 控除対象となる投資額の上限はない

投資企業の株式を売却した年に受けられる優遇措置

ベンチャー企業の株式売却で損失が発生した場合、その年の他の株式譲渡益と相殺できます。その年に相殺しきれなかった損失は、翌年以降3年にわたって損失繰越が可能です。ベンチャー企業が上場せずに破産や解散などをして株式の価値がなくなった場合も翌年以降3年間にわたって損失繰越ができます。

ベンチャー企業側の適用要件

エンジェル税制を利用できるベンチャー企業には、条件があります。当該ベンチャー企業が中小企業庁によって条件を満たしているか確認されるとサイト上で会社名など公表。関心を持つ企業がある方は、事前に確かめておくと良いでしょう。

①設立年数
優遇措置A:設立5年未満の中小企業者
優遇措置B:設立10年未満の中小企業者

②設立経過年数ごとの要件
研究者あるいは新事業活動従事者の人数や割合、営業キャッシュフローや収入金額、売上成長率など、設立経過年数ごとに詳細な要件が定められています。詳しくは中小企業庁のサイトなどでご確認ください。

③特定の株主や株主グループの保有する株式の割合が、6分の5を超えていないこと。特定の株主や株主グループとは、発行済株式総数の30%以上を有している株主のこと。

④発行済株式総数の2分の1超を一つの大規模法人(資本金1億円超の法人や、または従業員が1,000人以上いる資本金のない法人など)および大規模法人と特殊な関係にある一つの法人グループに保有されていないこと。

⑤未登録、未上場の株式会社で風俗営業などに該当しない事業を行う会社であること。

個人投資家側の要件

エンジェル税制を利用する個人投資家側にも以下のような要件があります。

金銭の払い込みによって対象企業の株式を取得していることが条件です。金銭の払い込み以外の方法で株式取得をした場合は税制優遇の対象になりません。例えば譲渡や現物出資、相続による取得、債務の出資金への振替などは対象外です。

投資先のベンチャー企業が個人とその親族などで発行済株式総数の50%超を保有する同族会社となる場合、株式保有割合が上位3位までの株主グループに属していない必要があります。

新株予約権の取得時点では、税制優遇の対象になりません。予約権を行使し金銭を払い込むことで株式取得した際に払い込んだ部分においてのみ対象となります。

3つの投資方法

実際にエンジェル税制に該当する投資(株式取得)をするには、以下の3つの方法があります。

①直接投資
直接投資を行うベンチャー企業と投資契約を結び投資します。

②認定投資事業有限責任組合経由
経済産業省によって民間のプロの目利きとして認定された投資事業有限責任組合を経由して投資する方法があります。

③認定少額電子募集取扱業者経由
経済産業省に認定された、少額電子募集取扱業者=株式投資型クラウドファンディング事業者を経由して投資することもできます。

直接投資以外を選ぶメリット

直接投資以外は、組合や事業者がベンチャー企業に対して積極的な成長支援などを行います。そのため多忙で時間がない投資家やベンチャー企業への投資が始めての方にとって手間を軽減できる点はメリットです。認定を受けた組合や事業者は、中小企業庁のサイトで確認できます。意中のベンチャー企業が特にない場合は、これらにアクセスして投資先を選ぶのも方法の一つです。

エンジェル税制を利用する手順

エンジェル税制を利用するには、以下のような手順で手続きをします。

  • ベンチャー企業は、自社がエンジェル税制対象になっていることを確認し都道府県知事名の確認証交付してもらう
    ※前述の認定投資事業有限責任組合と認定少額電子募集取扱業者は、自ら確認事務が行えます。これによりベンチャー企業側の確認作業が軽減でき、投資家も書類の手配が迅速に行えます。
  • 個人投資家から投資を受ける
    ※確認前に投資が行われていてもかまいません。
  • ベンチャー企業は確定申告に必要な書類を個人投資家に提出する
  • 個人投資家は税務署へ確定申告をする

2020年度に改正されたポイント

エンジェル税制のさらなる活用を目指して2020年度の税制改正により4月1日以降から適用要件などが以下のように緩和されました

①優遇措置Aの設立後3年未満だった要件が5年未満へ
②ベンチャー企業が都道府県に行う申請書類の一部が削減
③経済産業大臣認定制度の拡充により一定の要件を満たした少額電子募集取扱業者=株式投資型クラウドファンディング事業者が認定事業者として加わる

税制の活用事例

エンジェル税制の対象となった投資事例としては、クラウドファンディングによる「ごちめし」事業があります。これは、「食事代を飲食店に先払いし食事する権利を誰かに贈る」というウェブサービスです。飲食店からサービス利用料金をもらわずさらに先に飲食代が店に支払われる仕組みのため、コロナ禍で経営の見通しが立たない飲食店を支援する活動としても注目を集めました。

2019年10月末から9ヵ月で流通総額2億円を突破、通算利用回数7万5,000食、登録店舗総数1万店と大きなサービスに成長しています。

※すでに投資募集は終了しています

エンジェル税制の課題

2019年に経済産業省がみずほ情報総研株式会社に委託した「令和元年度中小企業実態調査事業」によるとエンジェル税制の対象となり得る中小企業の制度に対する認知状況は「知っている」が23.3%でした。逆に「知らない」は76.7%と税制が十分に認知されているとはいえない状況です。しかも知っていると答えた企業のうち44.7%と約半数近くが創業資金の調達を終えた後にエンジェル税制を知ったと回答しています。

ベンチャー企業が資金を集めやすくなり日本経済全体の活性化を後押しする税制としては、十分に目的をはたしているとはいえません。また業種別のエンジェル税制の認知度は「半導体・電気」「一般バイオ・製薬」「素材・マテリアル」「ロボット関連」「航空/宇宙」が0%です。「工場、環境/エネルギー、その他産業」では、約46.7%が知っている点と対照的で業種による偏りが見られます。

さらに「U/Iターンなどを契機として移住先の地域資源を活用した新規ビジネスを立ち上げた企業」でも認知度は0%です。今後は税制の存在を周知させより多くの業種や地方での起業などでも活用されるようにすべきでしょう。

個人のベンチャー投資のハードルを下げる

エンジェル税制は、ベンチャー企業が起業資金を集めやすくするための税制優遇策です。個人投資家のベンチャー投資に対するハードルを下げることが狙いですが実際に企業を支援しながら節税できるメリットがあります。もちろん投資先が成長を遂げれば投資収益を得ることも魅力の一つです。損失においても措置が用意されているため、新たな投資先を探している人は利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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