吉田謙太郎
宅建士・不動産投資家・ライター|筑波大学卒業後、大手不動産会社にて投資用不動産の売買および賃貸営業・投資家へのコンサルティング・自社メディアでの記事執筆などを行う。自身でも社会人1年目(22歳)から不動産投資をしており、横浜市・大阪市・神戸市に区分マンションを4戸運用中(2021年11月現在)。保有資格は宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者。(I列)

高年収の会社員や医師が不動産投資を行う場合、資産性の高い都心5区のタワーマンションは有力な選択肢の一つです。

物件選びにおいては、そのエリアおよび物件における空室率が重要な判断材料になります。

本記事では、都心5区のタワーマンションにおける空室率について、東京都全域と比較しながら解説します。

都心5区のタワーマンションの空室率はどのくらい?

高級タワーマンションの賃貸物件を多く扱う住友不動産の募集情報をもとに集計したデータによると、2021年7月における都心5区のタワーマンションの空室率は以下のとおりです。

部屋数 空室数 空室率
中央区 1,706 10 0.59%
千代田区 176 6 3.41%
港区 831 21 2.53%
新宿区 1,281 35 2.73%
渋谷区 36 1 2.78%
合計 4,030 73 1.81%

空室率が最も高いのは千代田区で3.41%、最も低い中央区は0.59%であり、5区全体では1.81%です。

本データは都心5区に所在する賃貸タワーマンションの一部を母数として集計しているため、あくまで目安としてご参照ください。

都心5区のタワーマンションの空室率は高い?低い?(他エリア・他物件との比較)

都心5区のタワーマンションの1.81%という空室率は、高いのでしょうか?低いのでしょうか?

東京都全域および都心5区の各エリアに所在する、タワーマンション以外も含む全物件と比較してみましょう。

空室率のエリア別比較

LIFULL HOME’Sが提供する「見える!賃貸経営」によると、上記の各エリアにおける空室率は以下のとおりです。

空室率(%)
東京都全域 14.5
中央区 27.7
千代田区 36.5
港区 13.9
新宿区 15
渋谷区 14.8

空室率が最も低い港区でも13.9%であり、都心5区のタワーマンションの空室率(1.81%)はその1/7以下です。

東京都全域および都心5区のいずれと比較しても、都心5区のタワーマンションの空室率は非常に低いといえるでしょう。

都心5区のタワーマンションの空室率が低い理由6つ

都心5区のタワーマンションの空室率が非常に低い理由として、以下の6つが考えられます。

・ 交通利便性が高い都心部に立地している
・ スーパーやクリニックなどの施設が併設されている
・ 共用施設(ラウンジやフィットネスルーム、トランクルームなど)が充実している
・ ホテルのようなコンシェルジュサービスを受けられる
・ 高層階は眺望が良い(東京タワーやレインボーブリッジを望める)
・ 室内外の設備がハイグレード

日常生活を送る上での利便性が非常に高いことに加え、上質な空間やステータスを感じられるという入居満足度の高さが、空室率の低さにつながっているといえるでしょう。

港区にあるラ・トゥール汐留というタワーマンションには、敷地内にスーパーとクリニックが併設しており、フィットネスルームやトランクルームもマンション内に完備されています。

ラ・トゥール汐留では24時間365日コンシェルジュ常駐しており、タクシー手配やクリーニング取次といったホテルライクなサービスを受けられます。

汐留という都心の利便性とハイグレードなサービスを享受しながら、住居から東京タワーやレインボーブリッジを望めるというステータスは、入居満足度の向上に寄与しているといえるでしょう。

タワーマンション投資では空室率を特に注視すべき理由2つ

資産性が高く空室率が低い都心5区のタワーマンションですが、投資するにあたっては以下の2つの理由でその物件の空室率を特に注視する必要があります。

・ 管理費・修繕積立金が高い
・ 毎月のローン返済額が高くなりやすい

いずれも毎月の固定費の高さに対する注意点であり、キャッシュフローに大きく影響するため、タワーマンションへの投資を検討する際はしっかり押さえておきましょう。

管理費・修繕積立金が高い

管理費・修繕積立金とは、物件の日常的な管理(共用部分の水道光熱費や各種設備の点検・修繕費用、コンシェルジュの人件費など)および12年程度の周期を目安に行われる大規模修繕のために、各部屋のオーナーが毎月拠出する費用のことです。

マンションを所有する以上、管理費・修繕積立金は入居者の有無に関わらず原則として毎月必ず支払わなければならない費用です。

タワーマンションでは、以下の3つの要因で管理費・修繕積立金ともに高額になるのが一般的です。

・ コンシェルジュや管理便などの人件費が高くなる
・ 機械式駐車場や高性能エレベーター、フィットネスルームなどの維持費が高い
・ 大規模修繕工事の際に足場を組むための費用が高い

物件規模の大きさおよび共用施設の多さによってメンテナンスが大規模になる上に、常に高品質なサービスを提供するための人的資源が必要であるため、管理費・修繕積立金が高くなるのです。

タワーマンションへの投資において空室率が高くなると、想定どおりに家賃収入を得られない中で高い固定費を支払い続けなければならなくなるリスクがあるため、いかに空室率を抑えるかが特に重要です。

毎月のローン返済額が高くなりやすい

タワーマンションは物件価格が高いため、金融機関から融資を受けて投資する場合、毎月のローン返済額も高くなりやすいです。

特に都心5区のタワーマンションは、1億円以上の「億ション」と呼ばれる物件も数多く存在するため、毎月のローン返済額の高さは顕著でしょう。

融資を受けている限り、毎月のローン返済は入居者の有無に関わらず原則として毎月必ず発生する出費です。

1億円以上の物件への投資に対する融資では、毎月のローン返済額が30万円以上になることもあり、空室率が高いと毎月数十万円の固定費を貯蓄や本業からの収入を切り崩して拠出しなければならなくなります。

ローン返済および管理費・修繕積立金といった毎月の固定費を家賃収入の中から支払えるように、空室率を抑えられる物件を選びましょう。

都心5区のタワーマンションは長期的な安定資産として有望

都心5区のタワーマンションは、空室率および価格推移という観点で評価しても、長期的な安定資産といえます。

1.81%という都内でも圧倒的に低い空室率に加え、価格も長期にわたって安定的に緩やかな右肩上がりで推移しているためです。

国土交通省が2021年6月30日に発表したデータによれば、全国の住宅(住宅総合・住宅地・戸建住宅・マンション(区分所有)の4項目)の不動産価格指数は、2010年の平均値を100とすると、2021年3月時点で以下のようになっています。

住宅総合 住宅地 戸建住宅 マンション(区分所有)
117.2 100 103.9 160

各種住宅の中で、タワーマンションを含む区分所有マンションの価格指数が大幅に上昇しており、2010年から安定的に右肩上がりで推移しているため、長期的に保有できる資産といえるでしょう。

とりわけ東京都の都心6区(都心5区に文京区を加えた6区)の物件は、三大都市圏(首都圏・近畿圏・中部圏)の区分所有マンションの中でも最も高い資産性を有しています。

東京カンテイが2021年6月23日に発表したデータでも、都心6区のマンションは2015年以降、三大都市圏の中で最も高い物件価格(70㎡あたりの価格)を維持しながら緩やかな上昇を続けています。

三大都市圏の中でも、都心5区の区分所有マンションが最も資産性の高い物件といえます。

空室率が低いため安定的な家賃収入を得られる上に、長期的に右肩上がりで推移している都心5区のタワーマンションは、今後も安定資産として投資する価値がありそうです。