吉田謙太郎
宅建士・不動産投資家・ライター|筑波大学卒業後、大手不動産会社にて投資用不動産の売買および賃貸営業・投資家へのコンサルティング・自社メディアでの記事執筆などを行う。自身でも社会人1年目(22歳)から不動産投資をしており、横浜市・大阪市・神戸市に区分マンションを4戸運用中(2021年11月現在)。保有資格は宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者。(I列)

日本で不動産の資産性が最も高い都心5区(中央区・千代田区・港区・新宿区・渋谷区)で不動産投資を検討している高所得者の中には、どのくらいの面積の物件に投資するのが最も合理的かがわからない人もいるでしょう。

賃貸不動産は、エリアごとに需要が高い面積もターゲットも異なります。

本記事では都心5区で需要が高い面積と、そこから考えられるターゲットについて解説します。

都心5区で最も需要が高い賃貸不動産の面積は?

都心5区の賃貸不動産の中で最も需要が高い面積について、LIFULL HOME’Sが提供する「見える!賃貸経営」のデータを参照しながら解説します。

中央区

中央区で賃貸需要の高い面積ベスト3は、以下のとおりです。

順位(位) 面積(㎡) 比率(%)
1 20~30 32.4
2 40~50 27.1
3 50~60 11.8

中央区では20~30㎡の物件の賃貸需要が最も高く、30~40㎡の需要が低い(8.9%)ことから、平均的な広さの1Rや1Kの賃貸需要が最も高いと推測できます。

1R・1Kの中でも、20㎡未満の狭小物件の賃貸需要は6.1%しかないため、中央区では面積が20㎡以上かそれ未満かで、入居者募集の難易度が変わるかもしれません。

40~60㎡の物件の賃貸需要も比較的高いため、平均的な広さの1LDKまたは2LDKの物件の賃貸需要も高いといえそうです。

中央区には月島や勝どき、晴海といったタワーマンションが多いエリアがあり、単身者以外の世帯も多く入居していることが要因の一つと考えられます。

千代田区

千代田区で賃貸需要の高い面積ベスト3は、以下のとおりです。

順位(位) 面積(㎡) 比率(%)
1 20~30 36.8
2 30~40 22.4
3 40~50 17.9

千代田区の賃貸需要の約60%が20~40㎡に集中していることから、平均的ないしやや広めの1R・1K、または狭めの1DK・1LDKの賃貸需要に偏りがあると推測できます。

1R・1Kの中でも、20㎡未満の狭小物件の賃貸需要は4.3%しかないため、千代田区にでは面積が20㎡以上かそれ未満かで、入居者募集の難易度が変わるかもしれません。

50㎡以上の賃貸需要の総計が18.7%しかないため、2LDK以上の物件では入居者探しが難航することも考えられます。

港区

港区で賃貸需要の高い面積ベスト3は、以下のとおりです。

順位(位) 面積(㎡) 比率(%)
1 20~30 33.7
2 30~40 17.1
3 40~50 13

港区の賃貸需要の半数以上を20~40㎡が占めていることから、平均的ないしやや広めの1R・1K、または狭めの1DK・1LDKの賃貸需要が比較的高いと推測できます。

港区は50㎡以上の賃貸需要の総計が高い(29.6%)ため、2LDK以上の物件でも入居者を探しやすいエリアといえそうです。

港区には「3A」(青山・赤坂・麻布の頭文字)と呼ばれる超高級マンションが立ち並ぶ日本屈指のハイステータスエリアがあり、国内外の富裕層および超富裕層からの賃貸需要があるため、面積や間取りを問わず人気が高いエリアと考えられます。

新宿区

新宿区で賃貸需要の高い面積ベスト3は、以下のとおりです。

順位(位) 面積(㎡) 比率(%)
1 20~30 39.1
2 30~40 17.2
3 10~20 15.8

新宿区は都心5区の中で20~30㎡の賃貸需要が最も高いエリアであることから、平均的な1R・1Kの賃貸需要が都心5区で最も高いと推測できます。

新宿区では、都心5区の中で唯一10~20㎡がベスト3にランクインしていることに加え、50㎡以上の賃貸需要が14.6%とかなり低いため、新宿区はコンパクトな物件のほうが投資に適しているかもしれません。

渋谷区

渋谷区で賃貸需要の高い面積ベスト3は、以下のとおりです。

順位(位) 面積(㎡) 比率(%)
1 20~30 32.4
2 30~40 21
3 40~50 13.1

渋谷区の賃貸需要の半数以上を20~40㎡が占めていることから、平均的ないしやや広めの1R・1K、または狭めの1DK・1LDKの賃貸需要が比較的高いと推測できます。

20~40㎡に次いで40~50㎡の賃貸需要が高いことから、狭めの1DK・1LDKに加えて平均的な広さの1LDKの賃貸需要も高いといえそうです。

需要の高さから考える都心5区のターゲットは?

都心5区の賃貸不動産において最も需要が高い面積から、それぞれどのようなターゲットを考えればよいでしょうか。

ここからは、各区のメインターゲットとサブターゲットについて解説します。

中央区

中央区のメインターゲットおよびサブターゲットは、以下のとおりです。

・ メインターゲット:広さにはあまりこだわらない単身者
・ サブターゲット:DINKs(子どものいない共働き夫婦)

中央区では平均的な広さ(20~30㎡)の賃貸需要が高い一方で、やや広め(30~40㎡)の物件の賃貸需要は低い(8.9%)ことから、広さにはあまりこだわらず1Kや1Rを探している単身者がメインターゲットになるでしょう。

40~60㎡の賃貸需要が20~30㎡に次いで高いことから、平均的な広さの1LDKまたは2LDKの物件を探している2人暮らしの世帯がサブターゲットになりそうです。

千代田区

千代田区のメインターゲットおよびサブターゲットは、以下のとおりです。

・ メインターゲット:平均的ないしやや広めの部屋を探している単身者
・ サブターゲット:DINKs(子どものいない共働き夫婦)

千代田区の賃貸需要の約60%を20~40㎡が占めていることから、メインターゲットは平均的ないしやや広めの部屋を探している単身者になるでしょう。

40~50㎡が3番目に高いことから、平均的な広さの1LDKの物件を探している2人暮らしの世帯がサブターゲットになりそうです。

港区

港区のメインターゲットおよびサブターゲットは、以下のとおりです。

・ メインターゲット:平均的ないしやや広めの部屋を探している単身者
・ サブターゲット:ファミリー

港区の賃貸需要の半数以上を20~40㎡が占めていることから、メインターゲットは平均的ないしやや広めの部屋を探している単身者になるでしょう。

港区は50㎡以上の賃貸需要の総計が高い(29.6%)ことから、ファミリーがサブターゲットになりそうです。

新宿区

新宿区のメインターゲットおよびサブターゲットは、以下のとおりです。

・ メインターゲット:平均的ないしやや広めの部屋を探している単身者
・ サブターゲット:広さにはあまりこだわらない単身者

新宿区の賃貸需要はベスト3がすべて40㎡以下であることから、メインターゲットもサブターゲットも単身者になるでしょう。

新宿区は20㎡未満の狭小物件がベスト3にランクインしているため、単身者がターゲットとなる傾向が都心5区の中で最も強いエリアといえます。

渋谷区

渋谷区のメインターゲットおよびサブターゲットは、以下のとおりです。

・ メインターゲット:平均的ないしやや広めの部屋を探している単身者
・ サブターゲット:DINKs(子どものいない共働き夫婦)

渋谷区の賃貸需要の半数以上を20~40㎡が占めていることから、メインターゲットは平均的ないしやや広めの部屋を探している単身者になるでしょう。

40~50㎡が3番目に高いことから、平均的な広さの1LDKの物件を探している2人暮らしの世帯がサブターゲットになりそうです。

不動産投資は需要の見極めが重要

不動産投資では、そのエリアにおける需要を事前に把握することが極めて重要です。

築浅で設備が新しく、面積が広い物件であったとしても、そのエリアの賃貸需要に合わない物件には入居者が付きにくく、不動産投資の主な収入源である家賃収入を十分に得られないリスクがあります。

そのエリアで最も求められている面積を知れば、賃貸需要をある程度判断できます。