本間貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自主管理で賃貸経営をする不動産投資家の顔も持つ。

サステナブルな車としてEV(電気自動車)が世界中で脚光を浴びています。EVのメリットは「CO2を出さない」「走行音が静か」「災害時の蓄電池になる」などさまざまです。本稿では、EVを検討している人や興味のある人の参考になるようにEVを選ぶときの注意点と2021年上半期のEV販売ランキングTOP10を紹介します。

EVを検討するなら輸入車も視野に入れるべき理由

はじめにお伝えしたいことは、EV(電気自動車)を検討するなら「日本車と輸入車の両方を視野に入れるべき」ということです。なぜなら2021年時点で日本車だけではEVの選択肢があまりにも少ないから。以下の表は、国内の自動車ブランド別のEVの販売台数(2021年8月分)をランキング形式でまとめたものです。

国内自動車ブランド別のEV販売台数ランキング

自動車ブランド EV販売台数 全販売台数に占めるEVの割合
1位 日産 1,282台 8.8%
2位 トヨタ 56台 0.1%
3位 ホンダ 53台 0.2%
4位 マツダ 3台 ほぼ0%
参考 スバル 0台 0%
参考 ダイハツ 0台 0%
参考 スズキ 0台 0%
参考 三菱 0台 0%
日本自動車販売協会連合会のデータをもとに作成

2021年8月時点では、日本車に限定するとほぼ日産(モデルでいうとリーフ)の選択肢しかない状況です。また日本の新車に占めるEVのシェアは、わずか1.2%にとどまります。参考までに海外と比べてみると欧州主要18ヵ国のEVのシェア(2021年1~6月)は、8.2%と前年同期比よりも3.5ポイントも上昇しています。

このように日本のEV市場は、海外に対して大きく出遅れています。モデル(車種)の選択肢が少ないため、今のタイミングでEVを検討するなら輸入車も視野に入れるのが賢明でしょう。

プラグインハイブリッド車は欧州で禁止の可能性も

もう一つ今のタイミングでEVを検討する際の注意点としては「PHV(またはPHEV)を含めて考えるべきか否か」ということが挙げられます。そもそも代表的なエコカーとしては「EV」「HV」「PHV」がありますがそれぞれの違いをまとめると以下の表の通りです。

エコカーの種類 特徴 車種例
電気自動車
(EV)
・ガソリンを使わず電力のみで走行する
・二酸化炭素や窒素酸化物を出さない
・エコカーでトップクラスの環境性能
・リーフ
・アリア(2021年9月時点で予約受付中)
ハイブリッド車
(HV)
・エンジンとモーターを組み合わせた車
・シーンによって切り替えてエネルギーを効率的に使う
・プリウス
・セレナ
プラグインハイブリッド車
(PHV)
・自宅電源や充電スタンドで充電できるHV
・バッテリーの電力がなくなるとHVになる
・PHEVとも呼ばれる
・プリウスPHV
・アウトランダーPHEV

充電した電気とガソリンの両方で走れるPHV(PHEV)は「広い意味でのEVではないか」との見方もありました。しかし2021年7月にEU(欧州連合)の執行機関となる欧州委員会が「2035年の新車を排出ガスゼロ車のみにする」という提案を打ち出し状況が一変。HVの禁止にPHVが含まれるかについて日経ビジネスでは、以下のように解説しています。

「実質的にエンジンを搭載したハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の販売も禁じることになる」

出典:日経ビジネス

なお先にEUを離脱したイギリスも同様の方針を打ち出しています。このような状況の変化に対して今のタイミングでエコカーを検討している人は、以下の3つの考え方ができるでしょう。

・ 欧州の動きによってHVやPHVが廃れる流れになりそうなので、EVを選択する
・ 日本ではHVが禁止されることはなさそうなので(あるいはずっと先になるため)HVやPHVを含めて検討する
・ 日本ではEVの普及に時間がかかりそうなのでHVやPHVにする

このうちどれを選択するかは、人それぞれです。しかしもしHVやPHVの市場が急速に衰退していけばリセールバリュー(再販時の価値)に影響を与える可能性があることだけは意識したいところです。

2021年上期のEVの人気ランキングTOP10

EVの最近の売れ筋は、どのようなモデルなのでしょうか。これについては前述のように日本車のEVのモデルが少ないため、世界のエコカー(EV、PHV、PHEV)の販売ランキングを参考にしてみましょう。

世界のエコカー販売台数ランキング

順位 モデル(車種) 2021年1~6月期販売台数
1位 Tesla Model 3 24万3,753台
2位 Wuling HongGuang Mini EV 18万1,810台
3位 Tesla Model Y 13万8,401台
4位 BYD Han EV 3万8,667台
5位 Volkswagen ID.4 3万8,499台
6位 Great Wall ORA Black Cat 3万2,013台
7位 Renault Zoe 3万1,426台
8位 Hyundai Kona EV 3万1,233台
9位 Volkswagen ID.3 3万1,079台
10位 GAC Aion S 3万456台
兵庫三菱/姫路三菱「EV/PHV/PHEV世界での販売台数ランキングをもとに作成

上記のランキングに入っているモデルのうち「EV(HVやPHVではないこと)」「日本人になじみのある自動車ブランド」という条件にあてはまるのは、テスラの「Model 3」と「Model Y」、フォルクスワーゲンの「ID.4」と「ID.3」の計4モデルです。これらの基本的な特徴について確認していきましょう。

テスラ「Model 3」「Model Y」の特徴を解説
世界のEVをリードしているテスラでは、ロードスターやセダン、SUVなどさまざまなタイプを取りそろえます。モデル価格が約1,180万円の「Model S」をはじめ高価格帯(800万円以上)のタイプも目立ちますがランキング上位に入ったのは中価格帯(400万~800万円程度)の「Model 3」(コンパクトセダンタイプ)、「Model Y」(SUVタイプ)です。

「Model 3」の価格(消費税込)は約454万円、「Model Y」の価格は約586万円です。ただし2021年9月時点で日本国内における「Model Y」の販売時期は、未定になっている点にご注意ください。ちなみに「Model 3(ロングレンジ)」の1回の充電で走れる航続可能距離は580キロメートルです。これに基づけば大阪~東京間を1回の充電で走り切れることになります。

※上記の「Model 3」の価格は、2021年9月時のテスラ公式サイトの表示価格、「Model Y」の価格は中国の2021年5月の販売価格をもとにした参考価格です。

テスラのEVといえば最新のテクノロジー(カメラ、ミリ波レーダー、超音波センサー)を駆使した「オートパイロット機能」が標準装備されているのが特徴です。この機能は、高速道路で同一車線を走行しているときのハンドル操作やスピードコントロールを自動的に行うものです。

フォルクスワーゲン「ID.4」「ID.3」の特徴を解説
2021年上期のグループ世界販売台数でトヨタに次いで2位のフォルクスワーゲン(VW)は、EVの分野でも存在感を発揮しています。VWのEVの勢いを支えているモデルが「ID.4」と「ID.3」です。「ID.3」は、ID.シリーズではじめに市場投入されたコンパクトタイプのEVです。 航続可能距離(最大)は、バッテリーの容量によって以下のように違います。

45キロワットアワー仕様:352キロメートル
58キロワットアワー仕様:426キロメートル
77キロワットアワー仕様:549キロメートル

「ID.4」はVWが2番目に市場投入したSUVタイプEVです。航続可能距離(最大)は、以下のようになっています。

52キロワットアワー仕様:346キロメートル
77キロワットアワー仕様:522キロメートル

ただVWのEVを買いたい人にとって残念なことにID.シリーズの日本市場への導入は、2021年9月時点でまだ先になりそうです。自動車専門メディア「レスポンス」では、VWジャパン社長ティル・シェア社長のコメントに基づき「ID.シリーズの日本導入は2022年になる」と報じています。

人気ランキングTOP20なら日産リーフもランクイン
なお世界のエコカー販売台数ランキングをTOP20まで広げると日本車EVの日産リーフも入ってきます。(2021年1~6月期の販売台数2万9,372台)リーフの航続可能距離は次の通りです。

バッテリー容量 WLTC
モード
JC08
モード
40 キロワットアワー 322キロメートル 400キロメートル
62 キロワットアワー 458キロメートル 570キロメートル

日産公式サイトで紹介しているリーフのモデル価格(税込み)は、40 キロワットアワーが約412万円、62 キロワットアワーが約471万円です。リーフの機能面では「プロパイロット」が搭載されています。これは、高速道路で前を走る車との車間距離や車線の中央を自動でキープしてくれるというものです。

高価格帯EVなら日本市場に数多くのモデルが投入済

ここまで見てきたようにランキング上位に入りやすい中価格帯EVを国内で買おうと思っても日本車・輸入車ともにまだ選択肢が限定的です。一方で高価格帯EVに目を転じると海外の主要自動車ブランドのEVは、すでに以下のようなものが日本市場に投入されています。

メルセデス・ベンツ:EQC
ポルシェ:タイカン
アウディ:e-tron Sportback
BMW:i3
ジャガー:I-PACE

いずれにせよEVは発展途上の領域です。そのため今後は、中価格帯・高価格帯ともに新しいタイプのEVが投入されることが予測されます。これらを踏まえると新車の買い換えを急がない人は、現時点のモデルだけでなく半年~数年スパンでどのようなタイプが発表されるかを意識しながらEVを検討するのが無難かもしれません。