不動産投資において非常に重要になるのが「評価額」です。評価額によって建物の売買代金や銀行の融資可能額も異なります。場合によっては、実際の評価額よりもかなり高い価格で物件を購入してしまうリスクもあるため、注意が必要です。このようなことにならないためにも投資家自身が不動産の評価額の算定方法についてある程度の理解をしておきましょう。

ここでは、物件を評価する際の算定方法と業者によって評価額が異なる理由について詳しく解説していきます。

物件の評価額と相場を知る方法

物件の評価額と相場を知るため、まずは不動産評価の基準となる価格について理解をしておくことが重要です。ここでは、不動産を評価する以下の5つの方法について詳しく解説していきます。

・ 実勢価格
・ 公示地価/基準地価
・ 相続税評価額
・ 固定資産税評価額
・ 鑑定評価額

1.実勢価格

実勢価格とは、実際に不動産が売買された際に使われた価格のことです。国土交通省が提供している土地総合情報システムの「不動産取引価格情報検索」を閲覧することで不動産取引時の価格の事例を調べることができます。類似物件の取引価格をもとに不動産評価額を算定するのが実勢価格で、売買の際には最も使用される評価額です。

2.公示地価/基準地価

公示地価とは、地価公示法の公示価格を指すものです。1月1日を基準として国土交通省が評価しているもので個別の地点や適正な価格が一般に公表されています。基準地価とは、国土利用計画法に基づいて都道府県が毎年7月1日時点における基準地の1平方メートルあたりの価格を判定するものです。

基準地価は、毎年9月下旬ごろに公表されます。公示地価の基準日が1月1日で、基準地価はその半年後の7月1日が基準日です。公示地価は都市計画区域内外の住宅地、商業地を評価します。一方で基準地価は住宅地や商業地だけでなく工業地や林地まで評価するのが特徴です。一般的に基準地価は、公示地価の補完的な役割で使用されます。

どちらも一般社団法人資産評価システム研究センターの検索システム「全国地価マップ」で価格を調べることが可能です。ここから条件に応じて加減して評価額を決定することもあります。

3.相続税評価額

相続税評価額とは、相続税や贈与税を計算するときの基準となる課税価格のことです。市街地など路線価のある地域は、路線価図にある1平方メートル単価に敷地面積を掛けて計算する「路線価方式」、路線価がない場所は、固定資産税に一定の倍率を掛けて算出する「倍率方式」で価格を決定します。通常の売買や融資の際に使われることはほとんどない評価額です。

4.固定資産税評価額

固定資産税評価額とは、固定資産税のほか都市計画税や不動産取得税、登録免許税などの基礎となる評価額です。市区町村が決定し3年に1回評価替えが行われます。固定資産税評価額は、不動産の時価の70%程度になることが一般的です。通常の評価額よりも固定資産税評価額のほうが安い傾向のため、売買や融資の際にはあまり使われない評価額です。

5.鑑定評価額

鑑定評価額とは、不動産鑑定士の評価によって鑑定される評価額です。一般的に売買した際の収益性を勘案して計算されているため、非常に現実的な評価といえるでしょう。買い手側の「安く買いたい」、売り手側の「高く売りたい」という感情を排除することができるのが最大の特徴です。ただし評価には、お金がかかるため、実務上で使われることはそれほど多くない価格です。

目的別の評価額の使い分け方法

不動産の評価額には5つの種類がありますがそれぞれどのように使い分けるべきなのでしょうか?目的別にどの評価額が使われるのか、詳しく見ていきましょう。

売買目的は実勢価格

売買の際には「実際に同規模の物件がいくらで売れているのか」という実勢価格で評価するのが一般的です。「自分の物件がいくらで売れるのか」「買いたい物件の評価は適正か」などを知りたい場合は、実勢価格を知ることができる国土交通省の「土地総合情報システム」を閲覧して相場を確認するとよいでしょう。

税金を知りたいときは相続税評価額と固定資産税評価額

「この物件を買ったらいくらの税金がかかるのか」ということを知りたい場合には、相続税評価額と固定資産税評価額を調べるとよいでしょう。固定資産税路線価は、各市区町村やインターネットで簡単に調べることができます。そこから自分が支払うであろう税金を計算してみるとよいでしょう。

業者によって評価額が異なる理由

同じ物件でも不動産業業者によって評価額が大きく異なることがあります。なぜなら業者の経営上の都合が大きく影響していることがあるからです。業者によって評価額が異なる理由について確認していきましょう。

資金繰りが苦しい業者は評価額が低くなる

資金繰りが苦しい業者に不動産の見積もりを依頼すると評価額が低くなる傾向があります。なぜなら資金不足で高額で買い取ることができないからです。このような業者は「少しでも安く買い取りたい」と考えているため、評価の際に実勢価格よりも低くなる固定資産税評価額を意図的に使用する業者も存在します。

そのためできるかぎり業況がよい不動産会社へ売却したほうが評価額は高くなる可能性が高いでしょう。

取引を有利に進めたい業者は評価額が高くなる

取引を有利に進め「なんとかこの物件を買い取りたい」と考えている業者は、評価額が高くなる傾向があります。なぜなら少しでも他社よりも高い金額を提示して取引を自社にとって有利に進めたいと考えているからです。そのため売却の見積もりを依頼する際は、複数の業者から出してもらうことで業者同士の競争が生まれて取引が有利になることがあります。

少しでも高く買い取ってもらうためには、複数の業者から相見積もりを取るようにしてください。

物件の評価額が下がる3つの原因

「同じような場所に立地しているのに自分の物件の評価額が低い」と感じた方もいるかもしれません。いくら人気の立地で人気の間取りの物件だったとしても以下の3つのいずれかに該当してしまうと評価額が下がってしまう可能性があります。

・ 間口が狭い
・ 形状が特殊
・ 環境が悪い

物件の評価額が下がってしまう3つの理由について詳しく解説していきます。

1.間口が狭い

間口とは、道路に対する土地の入り口のことです。道路への入り口が狭い間口の狭い物件は、利便性が劣ることから同じ面積で同じ立地の土地よりも評価額が下がることになります。逆に間口が狭くても投資対象として問題ない場合は、お得に買える可能性がある物件という見方もできるでしょう。

2.形状が特殊

正方形または長方形ではない不整形な形の土地も使い勝手が悪いため、評価が下がる傾向です。例えば三角形の土地は、いくら面積が大きくても角の部分は使用することができないため、評価が下がります。同じ面積でも長方形または正方形の土地よりも不整形の土地のほうが評価は下がるでしょう。

3.環境が悪い

周辺環境が悪い場合も不動産の評価は下がってしまいます。具体例としては、以下のような場合です。

・ 道路が砂利道
・ 近くにゴミ処理施設がある
・ 反社会的勢力事務所の隣 
・ 墓地が近くにある など

周辺環境が悪い場合には、同じ形状・同じ面積でも評価額が著しく下がってしまう可能性があります。

まとめ

不動産を評価する際の価格は、以下の5つです。

・ 実勢価格
・ 公示地価/基準地価
・ 相続税評価額
・ 固定資産税評価額
・ 鑑定評価額

不動産業者の業況によって評価額は高くなったり低くなったりするため、売却の際には複数の業者から相見積もりを取るようにしましょう。また面積や立地が同じでも間口や形状や周辺環境によって評価額が異なることもあるため、注意してください。