都心投資物件の購入・売却にあたっては、物件価格が相場に対する高い・安いといった点が判断がポイントです。不動産物件の価格を決める要素としては、当該エリアの不動産需要・物件数などが目安になります。そのためそれぞれのデータおよびその推移を把握しておくことが重要です。この記事では、都心投資物件の購入・売却にあたって知っておきたいマーケットの動向を紹介します。

具体的には、新築・中古マンションの「価格」「物件数」「成約数」のデータを紹介しそれぞれの推移を見ながら市況の動向について検証・分析を行います。

価格の動向

新築分譲マンション価格動向

以下の表は、2021年3月に供給された新築分譲マンションの平均価格・平均坪単価を都心5区エリア別にまとめたものです。

【表1】都心5区の新築分譲マンション価格動向

平均価格 平均坪単価(万円)
2021年3月 前年同月比 2021年3月 前年同月比
千代田区 1億9,147万8,000円 161.23% 812万8,000円 129.16%
中央区 1億447万2,000円 128.19% 476万6,000円 101.92%
港区 1億3,542万4,000円 122.8% 651万2,000円 111.93%
新宿区 7,498万円 90.48% 458万9,000円 98.48%
渋谷区 2億3,540万円 108.02% 876万円 106.52%

引用:株式会社マーキュリー「月例新築マンション動向(速報値)」
https://mcury.jp/pressroom/1058/

都心の新築分譲マンションが高騰・高止まりしていることはご存じの通りです。コロナ禍で需要の変化が起こることで価格が下落する観測が一部ではありましたが2021年3月時点でも高止まりしている状況が続いています。

中古マンション価格動向

以下の【表2】は、2021年3月度に不動産情報サイト・アットホームに公開された都心5区の物件の中古マンション価格を間取り別に見たもの、【表3】はそれぞれの価格を前年同月(2020年3月)と比較したものです。

【表2】都心5区の中古マンション価格(間取り別、単位:万円)

すべて 1R~1K 1DK~2DK 2LDK~3D 3LDK~4DK 4LDK以上
東京全体 4,855.57 2,315.12 3,937.33 5,458.04 5,338.13 6,035.61
千代田区 8,667.55 2,870.11 5,972.45 11,119.9 16,205.14 ?
中央区 6,897.72 2,847.17 5,207.61 8,375.64 10,911.22 ?
港区 10,137.4 3,549.75 6,551.66 12,826.02 15,549.48 ?
新宿区 5,436.87 2,242.76 4,137.71 6,434.34 8,267.93 9,957.06
渋谷区 8,671.03 2,990.83 6,357.33 10,310.33 15,762.92 36,101.34

引用:アットホーム株式会社「価格相場」
https://www.athome.co.jp/souba/

【表3】都心5区中古マンションの間取り別価格の前年同月比較
(2021/2020年3月度)

すべて 1R~1K 1DK~2DK 2LDK~3D 3LDK~4DK 4LDK以上
千代田区 85.56% 107.6% 88.19% 72.15% 91.42% ?
中央区 108.14% 114.81% 110.80% 121.86% 119.31% ?
港区 86.86% 108.11% 86.83% 98.2% 90.44% ?
新宿区 106.83% 95.11% 116.83% 107.30% 97.52% 90.35%
渋谷区 109.28% 98.45% 115.57% 108.66% 127.64% 128.25%

引用:アットホーム株式会社「価格相場」
https://www.athome.co.jp/souba/
※赤字は前年同月比+

都心5区の中古マンションは、千代田区と港区が前年同月比で下落傾向、中央区・新宿区・渋谷区では前年同月で上昇傾向にありますが、単身向けに絞ると千代田区・中央区・港区で上昇しています。

中古マンション値上がり率

以下の【表5】は、2003年以降の各年に供給された新築マンションの価格の平均と、2019年7月~2020年6月に中古マンションとして登録された際の売り出し価格の平均を比較したものです。

【表5】都心5区中古マンション値上がり率(単位:%)

年度 千代田区 中央区 港区 新宿区 渋谷区
2003年 42.90% 42.60% 24.80% 21.40% 29.50%
2004年 35.30% 39.40% 32.10% 22.40% 28.80%
2005年 33.30% 47.30% 41.40% 26.40% 31.20%
2006年 23.40% 43.30% 35.20% 11.70% 22.90%
2007年 18.90% 7.50% 28.70% 4.20% 18.70%
2008年 7.40% 32.40% 23.10% 3.60% -17.30%
2009年 31.90% 35.40% 37.00% 9.60% 6.70%
2010年 21.60% 14.60% 11.10% 23.70% 6.60%
2011年 7.40% 25.00% 36.40% 37.50%
2012年 35.10% 22.80% 41.10% 24.70% 43.60%
2013年 37.40% 26.60% 33.20% 29.50% 40.10%
2014年 39.00% 29.20% 30.30% 19.20% 28.50%
2015年 22.10% 15.50% 30.90% 17.70% 8.60%
2016年 11.80% 10.00% 22.60% 3.40% 9.90%
2017年 7.30% 6.40% 1.00% 5.20% 7.50%
2018年 4.90% 8.50% 6.10% 4.20% 5.00%
平均 24.10% 30.60% 29.90% 17.00% 23.80%

引用:スタイルアクト(株)「分譲年別行政区別マンション中古値上がり率(騰落率)」
https://www.sumai-surfin.com/price/increase-rate/area-price/touraku-2021/
※赤字は各エリアの平均を上回っている年度

表の見方
2019年7~2020年6月に売り出された中古マンションデータをサンプルに新築分譲時と中古売出時の価格を住戸単位で比較して値上がり率を算出しています。

例)千代田区で2003年分譲の新築マンションは、2019年7~2020年6月の売り出し価格が平均で42.9%上昇している

都心5区の平均値上がり率は、約20%以上でした。東京23区の平均が約12%のため、都心ほど値上がり率が高いことが分かります。ただし2015年以降は上昇率が下落傾向にありとりわけ2017~2018年は1桁台の上昇率になるなど低迷傾向です。近年における新築分譲マンションの価格高騰の影響が分かる結果といえるでしょう。

物件数の動向

間取り別物件数

以下の【表6】は、2021年3月度にアットホームに登録された中古物件数を間取別に集計し、各エリアにおける間取り別のシェアを表したものです。

【表6】都心5区中古マンションの間取り別物件数とシェア(2021年3月度、単位:件)

すべて 1R~1K 1DK~2DK 2LDK~3DK 3LDK~4DK 4LDK以上
物件数 物件数 シェア 物件数 シェア 物件数 シェア 物件数 シェア 物件数 シェア
東京都全体 25,926 3,720 14.35% 6,399 24.68% 7,353 28.36% 7,750 29.89% 704 2.72%
千代田区 337 71 21.07% 130 38.58% 89 26.41% 43 12.76% 4 1.19%
中央区 1,046 223 21.32% 387 37.00% 261 24.95% 174 16.63% 1 0.10%
港区 1,832 374 20.41% 536 29.26% 612 33.41% 302 16.48% 8 0.44%
新宿区 1,410 341 24.18% 514 36.45% 328 23.26% 213 15.11% 14 0.99%
渋谷区 1,301 276 21.21% 542 41.66% 325 24.98% 152 11.68% 6 0.46%

引用:アットホーム株式会社「価格相場」
https://www.athome.co.jp/souba/
※赤字は前年同月比+

東京都全体で見ると2LDK以上のファミリー物件のシェアが過半数で多い傾向です。しかし都心では、1DK~2DKの2人世帯向け、1R~1Kの単身向けが過半数を占めています。

成約数の動向

以下の【表7】は公益財団法人東日本不動産流通機構(レインズ)が四半期ごとに発表している都心3区(千代田区、中央区、港区)中古マンションの成約数・新規登録件数・在庫件数です。

【表7】都心3区中古マンションの成約数・新規登録件数・在庫件数(2021年3月)

成約件数 前年同月比 新規登録件数 前年同月比 在庫件数 前年同月比
都心3区
(千代田区、
中央区、港区)
259 22.2% 971 ~15.3% 2,714 ~20.4%

引用:公益財団法人東日本不動産流通機構「月齢速報マーケットウォッチ」
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/MW_202103data.pdf

注目ポイントは、新規登録件数・在庫件数が減少傾向にあることです。新規登録件数は、2019年9月から18ヵ月連続で前年同月比マイナス、在庫件数は2019年12月から16ヵ月連続で前年同月比マイナスとなっておりその間に新規登録件数・在庫件数ともに約20~25%減少しています。

まとめ

ここまで「価格」「物件数」「成約数」の各データについてそれぞれの推移を見ながら市況動向について検証・分析を行いました。新築分譲マンションの価格が高止まりしている影響で並行検討される割合の高い中古マンションの人気が上昇しています。また在庫件数が減少することで中古マンション価格が上昇している傾向です。

コロナ禍によるテレワークの普及などの影響で郊外物件に注目が集まる傾向にあります。しかし都心物件の資産性を重視するニーズは一定数あり「今後も都心物件の価格が大幅に下がる」ということは考えにくいといえるのではないでしょうか。物件価格の高低は、キャッシュフローに大きな影響を与えるため、投資物件の購入・売却ともにデータを踏まえた慎重な判断が求められます。