「プライベートバンク」というサービスをご存じでしょうか。もともとは欧米の金融文化ですが日本でも富裕層ビジネスの一環として浸透しつつあります。「バンク」という名称からも分かるように銀行サービスの一種ですが一般の銀行サービスとは異なり富裕層向けに特化したサービスが用意されているのが特徴です。

日本でも浸透しつつあるとはいえ、まだまだ本質的な部分ではプライベートバンクとは呼びづらい部分もあるでしょう。しかし発祥地となる欧米では本格的なプライベートバンクがたくさんあります。東西でサービスの内容に違いはあるものの富裕層にとって必要なサービスを用意していることに変わりはありません。

そのため自分が利用するか否かは別として、プライベートバンクについて基本的な知識やメリット・デメリットを知っておく価値はあるでしょう。自分の大切な資産の管理を金融機関へ任せることになるため、利用を検討する際には特にデメリットの部分をしっかりと理解しておくことが大切です。

プライベートバンクとは?

日本では、プライベートバンクの文化が本質的に根付いているわけではありません。そのためプライベートバンクという言葉の使い方についてもあいまいな部分があります。一般的な意味としてプライベートバンクとは直訳すると「個人銀行」です。銀行は、口座を保有している顧客に対して一律の金融サービスを提供しますがプライベートバンクは違います。

主に富裕層に向けて顧客それぞれが必要とする最適なサービスを提供し、サービスの内容は一般向けに提供されているものよりも優遇されたものが大半です。例えば預金金利や金融商品についてもプライベートバンクで取り扱っているものは、特別に高利回りとなっています。欧米では、多くの銀行家が今も事業を行っているスイスで多くのプライベートバンクがあります。

銀行家と呼ばれる経営者は、無限責任を負って顧客の資産を管理、運用。「一般のサービスよりも優遇されている」という部分に魅力を感じて日本でも富裕層と呼ばれる人たちの間でプライベートバンクへの関心が高まっています。

日本におけるプライベートバンク

日本の富裕層がプライベートバンクのサービスを受けるには、以前なら海外のプライベートバンクに口座を開設する必要がありました。しかし2021年時点では、国内の金融機関の中でもプライベートバンクサービスを提供するところが増えてきたため、取り扱っている金融機関を利用することでプライベートバンクと呼べるサービスを受けることができます。以下は、国内の代表的なプライベートバンクです。

・ みずほプライベートウェルスマネジメント
・ 三菱UFJ信託銀行のウェルスマネジメント
・ 三井住友信託銀行プライベートバンキング
・ 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 ウェルス&ミドルマーケット本部プライベートバンキンググループ

プライベートバンクの本場は、欧州のため、日本国内の主要なプライベートバンクも本場のサービスにならった内容となっています。ただし日本で自然発生的に生まれたサービスではないため、銀行によって差別化されている部分は少ない傾向です。本格的なプライベートバンクとの取引を希望する富裕層の中には、香港やシンガポールの銀行と取引をする人もいます。

さらに発展して、本場となるスイスやオーストリアなどのプライベートバンクと取引をしている人もいますが、プライベートバンクは秘匿性の高さも特徴の一つです。そのため実態はベールに包まれています。

プライベートバンクに口座を持てる富裕層ってどんな人?

プライベートバンクが対象としている顧客は、総じて富裕層です。なぜならほとんどのプライベートバンクには、金融機関ごとに最低預金額の基準が設定されており少なくとも億単位の資産がなければ口座開設をすることができません。こうした富裕層の人たちにとって重要なのは資産の防衛や成長、継承です。

安全に資産を管理しながら確実に増やし次の世代に引き継いでいくサービスを包括的に提供するのがプライベートバンクといえるでしょう。この場合、顧客によって事情や意向が異なるため、一律ではなく顧客に応じた個人サービスが必要になります。これこそ、「プライベート」バンクと呼ばれる理由です。

プライベートバンクのメリットとデメリット

プライベートバンクのメリットとデメリットについて日本国内の富裕層の人たちが利用する視点で挙げてみました。特にデメリットについてはしっかり留意しておく必要があります。

<メリット>
・ 顧客それぞれに最適な金融サービスが受けられる
・ 一般の銀行取引ではない優遇された金融商品がある
・ 金融のプロによるコンサルティングで充実した運用ができる
・ 相続など財産の承継に関するサービスにも強い
・ 事業承継や子どもの教育機関選び節税など金融以外のサービスが受けられることも

こうしたサービス内容はすべて富裕層の人たちにある特有の悩みに対するソリューションです。先述したように富裕層にとって大切なのは資産の防衛や成長、承継です。そのためには、景気変動や金融危機などさまざまな局面においても資産を毀損することなく安全に管理しそれを長期的に増やしていくことがサービスの基本となります。

また資産の承継についても日本では相続税が非常に高いため、節税を含めた提案やサポートを受けられることもプライベートバンクの特徴です。

<デメリット>
それでは、次に日本国内の富裕層が知っておくべきプライベートバンクのデメリットについても解説します。

・ 口座開設のハードルが極めて高い
・ 口座を維持するのに手数料が必要
・ 海外のプライベートバンク取引には英語力が必要になることも
・ プライベートバンクといいながら大したサービスが受けられないことも

口座開設のハードルというのは、単に資産規模の大きさだけでなく「資産をどのようにして築いたのか」という経緯も重視されます。なぜなら、金融機関は犯罪利得やマネーロンダリングについて神経質になっているからです。そのためお金があれば誰でもプライベートバンクの取引ができるわけではありません。

またプライベートバンクのアッパーなサービスを受けるためには、相応のコストが伴うことも忘れてはいけません。それだけのコストを負担しているにもかかわらずプライベートバンクの充実したサービスを受けられているかどうかは別問題です。日本国内では、これが意外にデメリットとなる部分でしょう。

欧州のようにプライベートバンクが国の産業になっているわけではない点がネックとなりかねません。スイスやオーストリア、リヒテンシュタインのようにプライベートバンクが国の産業として伝統的に成立している国ではプライベートバンクの価値を十分実感できるようなサービスが含まれています。しかし日本の場合は、規制によって不可能なサービスも少なくありません。

一方で一般の銀行サービスも向上しており、日本の場合はプライベートバンクではなく一般の銀行サービスでもあまり変わらないとの指摘もあります。この点については、プライベートバンクのサービスを受ける際に「どんなサービスを受けられるのか」「一般の銀行サービスとどこが違うのか」についてしっかりと聞き取ったうえで口座開設を検討するのがよいでしょう。