新型コロナウイルス感染症の拡大が社会や経済に大きな影響を与え国や地方自治体はさまざまな支援策を講じています。支援策の中でも比較的多くの人が利用可能と思われているもので返済が不要な給付支援(以下、給付金)があることをご存じでしょうか。本記事では、新型コロナ関連の給付金や支給された際の税務上の取り扱いについて説明します。

1.新型コロナ関連の支援を目的とした給付金等の種類と特徴

1-1.雇用主や働いている人に対する支援

・新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
<申請期間>

休業期間 申請期間
中小企業 2020年4月~12月 2021年5月末
2021年1月~4月 2021年7月末
大企業 対象となる全期間 2021年7月末
※下記に該当する方

※労働契約上、労働日が明確でない方(シフト制、日々雇用、登録型派遣)
参照:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の申請期限を延長します」をもとに編集部作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17588.html

新型コロナウイルス感染症の影響により休業せざるを得ない状況となり、2020年4月1日から緊急事態宣言が全国で解除された月の翌月末までに事業主が休業させた中小企業の労働者、もしくは2021年1月8日以降(2020年11月7日以降に時短要請を発令した都道府県はそれぞれの要請の始期以降)に事業主が休業させた大企業のシフト労働者等のうち、休業中に賃金(休業手当)を受けることができなかった人に対して支給される給付金です。この支援金・給付金は雇用保険被保険者でない方も対象です。

支給額は、原則として「休業前1日あたりの平均賃金の80%(日額上限1万1,000円)に休業期間の日数を乗じた額となります。申請期限は、「2020年4月1日から緊急事態宣言が全国で解除された月の翌月末までに事業主が休業させた中小企業の労働者」で、休業した期間が2020年10月~12月の場合は2021年5月31日となっており、2021年1月~4月の場合は2021年7月31日までとなっています。

また、2021年1月8日以降(2020年11月7日以降に時短要請を発令した都道府県はそれぞれの要請の始期以降)に事業主が休業させた大企業のシフト労働者等の場合においては、申請期間が2021年の7月31日までとなっています。

・雇用調整助成金(休業手当などによる助成)
<対象となる期間>2020年4月1日から緊急事態宣言が全国で解除された翌月末まで
<申請期限>「支給対象期間」の最終日の翌日から起算して2か月以内>
参照:厚生労働省「生活を支えるための支援のご案内」

雇用調整助成金(特例措置)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000622924.pdf

景気後退など経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ雇用調整を行わざるを得ない場合に労働者に対して一時的に休業、教育訓練または出向を行い、労働者の雇用維持を図った場合に、事業主の申請に基づき、事業主が労働者に支払った休業手当等の一部を助成する制度です。新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主を対象として、以下の助成を行っています。

(1)休業手当等に対する助成率:中小企業5分の4、大企業3分の2(ただし、対象労働者1人当たり日額1万5,000円を限度とする)
(2)教育訓練を実施した場合、中小企業2,400円、大企業1,800円を加算

また、この助成金については、新規学卒者など、雇用保険被保険者として継続して雇用された期間が6ヵ月未満の労働者も助成対象としており、1年間に100日の支給限度日数とは別枠で利用することができます。

さらに、2021年1月8日以降においては、緊急事態宣言の発出に伴い、基本的対処方針に沿った知事の要請を受けて営業時間の短縮等に協力する飲食店に対しては助成率を最大10分の10に引き上げています。

・東京都の感染拡大防止協力金
<申請期間>2021年4月30日~5月31日
参照:東京都「「営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金(3月8日~3月31日実施分)」の実施概要をお知らせします!(第1880報)」
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/04/01/20.html

対象施設を運営している人で東京都からの休業依頼に対して全面的に協力する中小企業および個人事業主などに対して支給されるものです。直近では2021年3月8日から3月31日までの間、都内全域の飲食店等に営業時間の短縮が要請されたことに伴い、要請に全面的に協力した飲食事業者等に対して支払われています。支給額は1店舗当たり最大124万円で、申請の際には「コロナ対策リーダー」の登録と合わせ、感染防止徹底宣言ステッカーを店舗等の目立つところに掲示する必要があります。

なお、東京都以外においても各地方自治体(都道府県や市区町村)が休業などの依頼に対する協力金を独自に支給している場合もあります。これらは各地方自治体ごとに支給要件や支給金額が異なるため、事前に各自治体の公式サイトなどで確認しておくとよいでしょう。

・小学校休業等対応支援金
<申請期間>

仕事ができなかった日 申請期間
2021年1月1日?3月31日 2021年1月1日?6月30日まで
(私書箱に必着)

参照:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金(委託を受けて個人で仕事をする方向け)」をもとに編集部作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10231.html

小学校などの臨時休業に伴い「子どもの世話を行うために契約していた仕事ができなくなった」というような個人で仕事を行う保護者に対して支給されるものです。支給額は、就業できなかった日について1日あたり7,500円となっています。

・産業雇用安定助成金
<申請期間>

支給対象期間 申請期日
1ヵ月以上2年以内の期間で実施した出向期間 支給申請の単位となる期間の末日の翌日から2ヵ月以内

参照:厚生労働省都道府県労働局ハローワーク「産業雇用安定助成金ガイドブック」をもとに編集部作成
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000735077.pdf

新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合に、出向元と出向先の双方の事業主に対して助成金が支給されます。支給額は「出向運営経費」と「出向初期経費」に分類されており、前者については最大日額1万2,000円、後者は1人当たり10万円の助成額となっていますが、要件を満たすことでさらに5万円加算されます。

・家賃支援給付金(受付終了)
新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけとした自粛要請などによって売り上げの減少に直面する事業者の事業継続を支えるための給付金です。「地代や家賃の負担を軽減すること」を目的として売上高が一定以上減少したテナント事業者に対して支給されます。支給額は、例えば直前1ヵ月前に支払った月額の支払い家賃が75万円以下の場合、「月額の支払家賃×3分の2×6ヵ月」です。

また中小法人の場合は最大600万円、個人事業者などは最大300万円までと限度額が決められていることにも注意しておきましょう。さらに給付された金額については、その年分の総収入金額に算入されます。国が行っている家賃支援給付金以外にも各地方自治体が家賃支援としての給付金を独自に支給している場合があります。

1-2.日々の生活に困っている人に対する支援

・生活福祉資金の特例貸付
<申請期間>2021年6月末日まで(延長)
https://corona-support.mhlw.go.jp/seikatsufukushi/index.html

(1)緊急小口資金
主に休業によって、緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に少額の費用が無利子、保証人不要で貸付が行われます。

対象者は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことから休業等により収入の減少があり、緊急かつ一時的な生計維持のための貸付を必要とする世帯となっており、貸付上限額については、学校等の休業、個人事業主等の特例の場合は20万円以内、その他の場合は10万円以内となっています。

(2)総合支援資金
失業等により、生活の立て直しが必要な方に対し、生活再建までの間に必要な生活費用の貸付が無利子および保証人不要で行われます。

対象者は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、収入の減少や失業等により生活に困窮
し、日常生活の維持が困難となっている世帯で、貸付上限額については2人以上の世帯であれば月額20万円以内、単身世帯であれば月額15万円以内となっています。

・住居確保給付金(家賃)
<申請期間>2021年6月末日まで(延長)
https://corona-support.mhlw.go.jp/

離職・廃業から2年以内の方または休業等により収入が減少し、離職・廃業と同程度の状況にある方に対し、原則3ヵ月(最大9ヵ月)間、家賃相当額を自治体から家主に支給されるものです。支給額については、家賃相当額としていますが、住宅扶助特別基準額を上限とするとされています。

ちなみに東京都特別区の場合、2人世帯であれば6万4,000円、単身世帯であれば5万3,700円となっています。また、給付を受ける際には収入や資産、そして求職活動等の要件を満たす必要がありますので、注意してください。

・特別定額給付金(受付終了)
「簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行う」という目的で行われたものです。2020年4月27日を基準日として住民基本台帳に記録されているものを対象者とし世帯主へ支給されました。支給額は、対象者1名につき10万円です。

・持続化給付金(受付終了)
事業の継続を支え再起を促すことを目的とした制度です。新型コロナウイルス感染症の拡大により特に大きな影響を受ける事業者に対して支給されます。最大給付額は、中小法人などであれば200万円、個人事業者などの場合は100万円です。持続化給付金は事業所得の計算上、雑収入として給付を受けた年の総収入金額に算入されるため注意しましょう。

また支援対象者の範囲が個人事業者で業務委託契約などに基づく事業活動からの収入を主たる収入とし雑所得または給与所得として所得税の確定申告をしている人などにも拡大されました。雑所得者向けの持続化給付金は、公的年金など以外の雑所得として取り扱い雑所得の金額の計算上、その年の総収入金額に算入されることになります。

給与所得者向けの持続化給付金は、一時所得の金額の計算上(給与所得ではない点に注意)、その年の総収入金額に算入することが必要です。

・学生支援緊急給付金(募集中止)
家庭から自立しアルバイトによる収入などで学費などを賄っている学生などを対象とした給付金です。新型コロナウイルス感染症の拡大の影響によりアルバイトの収入が大幅に減少するなどの理由で大学就学の継続が困難な学生などに日本学生支援機構経由で支給されます。支給額は、10万円で住民税非課税世帯の学生の場合は20万円です。

また他にも大学などが独自に学生などに支援金を給付している場合があります。これらの給付金は、内容によって税務上の取り扱いが異なるため注意が必要です。後に表で分かりやすくまとめていますが、基本的に学費に充てるため給付される金額については非課税となります。しかし給付金が生活費を賄うことを目的として行われるものや使途が限定されていない場合は、一時所得として課税対象となるケースもあるのです。

ただし一時所得は、所得金額の計算上、50万円の特別控除枠があります。そのため支給された給付金と他の一時所得の合計額が50万円以下であれば結果的には課税されません。

支給要件や支給金額は、各自治体によって異なるため、事前に公式サイトで内容を確認しておくようにしましょう。

2.非課税となるものと課税対象となるもの

では、上述した各種給付金に対する所得税の取り扱いについて一覧にまとめます。

給付金等の名称 利用者(概要) 課税区分 補足事項
生活福祉資金の特例貸付 休業によって、緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった人 貸付なので課税対象とはならないが返還義務あり
住居確保給付金(家賃) 離職・廃業から2年以内の方または休業等により収入が減少し、離職・廃業と同程度の状況にある方 非課税
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金 休業期間中の賃金支給のない労働者 非課税
雇用調整助成金(休業手当などによる助成) 休業手当金を支給し、雇用を維持した事業主 課税 事業所得の対象
東京都の感染拡大防止協力金 東京都からの休業要請等に協力した事業者 課税 事業所得の対象
小学校休業等対応支援金 休校に伴い、子どもの世話で就業できなかった個人で仕事をする保護者 課税 事業所得の対象
産業雇用安定助成金 新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合の、出向元と出向先の双方の事業主 課税 事業所得の対象

3.給付金に対する課税、非課税の基本的な考え方

個人に対して給付金が支給された場合、原則として所得税(復興特別所得税を含む)や住民税の課税対象となります。しかし所得税法やその給付金の根拠となる法律(例:雇用保険臨時特例法)、新型コロナ税法などにおいて非課税とされているものについては非課税です。つまり新型コロナウイルスの影響によって支給される給付金であってもすべてが非課税になるわけではありません。

非課税となる根拠の法律があってはじめて非課税となることを理解しておく必要があります。なお法人に対して給付金が支給された場合、法人税の課税対象となり非課税とはなりません。

4.気になる控除や消費税の扱いは?

納税者本人や配偶者または扶養親族が支給を受けた給付金が非課税である場合は、所得税法上、所得としては取り扱いません。そのため配偶者控除や配偶者特別控除または基礎控除の適用上、納税者本人やその配偶者または扶養家族の所得制限に影響を与えない点は押さえておきましょう。また消費税に関しては、消費税法上において給付金は対価性がないため、課税取引には該当しません。

そのため所得税における事業所得などの金額の計算上、総収入金額に算入されるものであったとしても「消費税は課税されない」ということも覚えておきましょう。

5.確定申告が必要なものと注意点

新型コロナウイルス感染症拡大に関する各種支援金を受け取った際、それが課税対象のものであれば、確定申告を行う必要があります。各種支援金においては事業所得の対象となるものが大半ですが、事業所得の中でもどういった収入として計上するのかをきちんと理解しておくことが大切です。

例えば、受付が完了している持続化給付金については、事業所得の中でも「雑収入」という項目で計上し、申告することとなっています。事業主向けの助成金や支援金については経理処理もかなり複雑となる可能性がありますので、会計処理について不明な点がある際には税理士への相談や税務署の相談コーナーを利用するなど、処理の内容について不備のないように気をつけましょう。

また、2020年の確定申告においては国税庁も新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置として、以下のものを実施しています。

・資本金1億円超10億円以下の企業の2020年2月1日から2022年1月31日までの間に終了する事業年度に生じた青色欠損金について、欠損金の繰戻しによる還付制度の適用を可能とする(欠損金の繰戻しによる還付制度の特例)

・中小企業経営強化税制の適用項目に「テレワーク等のための設備」についても対象とする(テレワーク等のための中小企業の設備投資税制)

・政府の自粛要請を踏まえて一定の文化芸術・スポーツイベントを中止等した主催者に対し、観客等が入場料等の払戻しを請求しなかった場合には、放棄した金額について、寄附金控除(所得控除または税額控除)の対象とする

・新型コロナウイルス感染症の影響による住宅建設の遅延等によって住宅への入居が遅れた場合でも、定められた期日までに住宅取得契約が行われている等の一定の場合には期限内に入居したのと同様の住宅ローン控除を受けられることとする(住宅ローン控除の適用要件の緩和)

・公的金融機関や民間金融機関等が、新型コロナウイルス感染症によりその経営に影響を受けた事業者に対して行う金銭の特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書について、印紙税を非課税とする(特別貸付けに係る契約書の印紙税の非課税)

特に、チケットの払い戻しをせずに寄附金控除を受ける制度や住宅ローン控除の適用要件の緩和については当てはまる人も多いでしょう。当てはまる際にはその適用要件をきちんと確認し、該当するのであればきちんと確定申告を行うことを忘れないようにしましょう。