日本には「作れば作るほど赤字になる」硬貨が存在することを知っていますか?その硬貨とは「1円玉」です。軽くて丈夫な1円玉の素材はアルミニウム。硬貨としての価値よりも製造コストがかかる1円玉をなぜ作り続けるのでしょうか。キャッシュレス決済の浸透と「消費税10%」によって出番が少なくなっている、1円玉にまつわる話を紹介します。

1円玉の製造コストは約3円

1円玉1枚を作るのにかかるコストは約3円といわれています。国や造幣局は、貨幣を作るためのコストを公表していませんが、この金額はおおよそ妥当でしょう。

1円玉の素材はアルミニウムのみで、素材のみの原価でいえば約0.3円ですが、これに硬貨を加工するコストを加えると、1枚あたり約3円になります。

今後のアルミニウムの価格は?

しかし、原料のアルミニウムの価格が上昇すれば、1円玉を作るコストはさらに上昇します。

また、近年の環境規制強化もアルミニウムの価格上昇の要因になっているといいます。中国では、環境規制の強化でアルミニウムの生産が制限され、需要に追いつかず相場が上昇している状況です。

アルミニウムは生産の過程で大量の電力を消費します。中国では発電コストが低い石炭火力発電を利用してきましたが、環境規制強化によって石炭火力発電にも二酸化炭素の排出量を削減する目標が立てられています。

これを達成するためには、大量に電力を消費するものを制限する必要があり、アルミニウムの生産も制限されている様子です。

アルミニウムの価格が上昇すればするほど、日本は「1円玉を作る分だけ損失が発生している」状況に拍車がかかってしまいます。

キャッシュレス化で1円玉が必要なくなる?

日本の財政状況を緩和するために「1円玉と5円玉を廃止する」案も出てきています。国会では「1円玉と5円玉の役割は終えてきている」と議論され話題になりました。

消費税率が10%に引き上げられ、軽減税率の対象となるもの以外は商品・サービスの価格の調整で「きりのいい数字」での決済が可能です。

またキャッシュレス決済がさらに浸透すれば貨幣自体、使用される頻度が減るでしょう。作るほどに損をする1円玉の廃止で、日本経済もほんの少し上向くかもしれません。