田中タスク
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、自らの投資スタイルを確立。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中。

ビジネスパーソンの方で収入アップのために副業を考えている方は多いと思いますが、副業で収入があると税金とのかかわりが気になってしまうものです。副業と税金のかかわりについて「年間20万円以下であれば申告不要」と、半ば常識にように理解している方もおられると思いますが、果たしてこれは本当なのでしょうか。

先に結論から申し上げますと、この「年間20万円以下であれば申告不要」は嘘です。

今回は副業を考えている方に向けて、副業と税金についての正しい知識を解説します。20万円を超えた場合、20万円以下の場合、それぞれどう扱われるのか。そして副業で税金が発生するとそこから会社に副業をしていることがバレるのではないかと気にしている方も多いので、税金から副業が会社にバレない方法についても解説します。

副業には必ず住民税が発生する

副業している方の中には、「20万円以下は申告不要」と思っている方も多いのではないでしょうか。実はこれは半分正解であり、半分は誤りです。なぜなら、副業に対して発生する税金のうち所得税は20万円以下まで申告不要なので正解ですが、住民税は20万円より多いか少ないかに関係なく申告する必要があるからです。

つまり「20万円以下は申告不要」というのは、所得税のみの話です。住民税には特に20万円のボーダーラインがあるわけではないので、この点をまずしっかり認識しておいてください。

所得税と住民税の違い

所得税と住民税、この2つの税金はよくセットになって語られることが多いので同一視している方も多いかもしれません。しかし、この両者は性格が異なる税金なので、ここで両者の違いをマスターしておきましょう。

所得税は国税で、住民税は地方税です。国税は国が徴収する税金で、国の税収になります。地方税はそれぞれの地方自治体が徴収し、地方自治体の税収になります。

所得税は、所得額によって税率が決まります。下表がその一覧表です。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円から1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円から3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

出典:国税庁

確定申告によって上記のどの所得カテゴリーになるかによって税率が決まるのが、所得税の仕組みです。

これに対して住民税は所得額だけでなく、以下の項目をそれぞれ算出し、税額が決まります。

■ 所得割:前年の所得金額に応じて税額が決まる
■ 均等割:定額
■ 利子割:預貯金の利子に対して課税される
■ 配当割:株式の配当などに対して課税される
■ 株式等譲渡所得割:源泉徴収を選択している取引口座内の株式等を譲渡して利益が発生した時に課税される

1つめの所得割については、所得税と同じく所得金額に応じて税額が決まります。それ以外については住民税独自の仕組みになっているので、そもそも所得税と住民税は制度的にも異なるものであることがわかるでしょう。

住民税の申告方法

それでは次に、住民税の申告について解説します。副業の年間収入が20万円を超えていて税務署に確定申告をした場合は、税務署からそのことが自動的に自治体に通知されるので住民税のために特段の申告をする必要はありません。税額も自動的に計算されます。

副業による年間収入が20万円を超えておらず、税務署に確定申告をしていない場合は、住民税のための申告が必要になります。その年の1月1日時点で住民票のある市区町村の役所で申告の手続きをします。

それぞれの市区町村のホームページにある申告書をダウンロードして記入したものを郵送するか、自治体の窓口で申告書を提出すれば手続き完了です。

住民税の普通徴収と特別徴収について

次に、副業の収入を申告したことによって会社に副業がバレるのではないかと心配している方に向けてその対策を解説します。ここで重要になるのが、住民税の徴収方法です。住民税には普通徴収と特別徴収という2つの徴収方法あり、ビジネスパーソンなど給与所得者の方は給料から天引きされる特別徴収になっているのが一般的です。

それに対して普通徴収とは、自分で税金を納める方法です。納付書が届くので、それをコンビニエンスストアや銀行に持って行き支払う形を想像していただければイメージしやすいでしょう。

住民税から副業が会社にバレるのを防ぐ方法

住民税の納付方法が特別徴収になっていると、副業収入の申告によって年間の所得額が変わったことが会社に知られることになります。それを回避したい方は、住民税の徴収方法を特別徴収から普通徴収に切り替えるのが有効な対策になります。

普通徴収に切り替えることにより、住民税だけは給料天引きではなく納付書を使った納税方法に切り替わるため、住民税額が変わったことを会社に知られることはありません。

しかし、この方法も完璧ではありません。第1に、住民税の納付方法が特別徴収から普通徴収に切り替えられたことは会社が知り得ることなので、「何か収入があるのでは」と推測することはできてしまいます。

もう1つ、住民税の特別徴収について知っておくべきことがあります。それは個人住民税(ここまで解説してきた住民税のことです)の特別徴収義務化です。すでにその流れに沿って、全国各地の自治体は事業者に向けて特別徴収の徹底を進めているため、従業員が普通徴収の手続きをしたからといって、徐々にそれが通用しなくなってきています。制度的には普通徴収による住民税の納付は可能であるとはいえ、今後は勤務先の了解を得てから副業をする必要があるかもしれません。

ただし、すでに国は働き方改革の一環で副業を促進する政策を打ち出しています。その流れを受けて副業を容認する企業が増えており、今後は副業が会社にバレないようにする対策そのものが意味をなさなくなる可能性があります。副業をしていることを理由に会社を解雇されたり、不利益を被ったりすることは今後あまりないかもしれないので、住民税の納付方法が原則、特別徴収になったとしても直接の関係はあまりないことも考えられます。

副収入が見込めるのに副業に該当しない不動産投資

ここまでの解説に登場してきた副業とは、会社での仕事とは別に何か仕事を始め、労働対価として報酬を得ることを指しています。労働を伴う副業は本業への影響が懸念されることもあるため、働き方改革が推進されている中でも禁止している企業はあります。兼業が禁止されていることでも知られる公務員も労働を伴う副業は法律で原則的に禁止されています。

しかし、副収入が見込めるという意味では副業に該当するとも考えられる不動産投資は禁止されていません。ビジネスパーソンでありながら不動産投資をしている人のことを俗に「サラリーマン大家」と呼ぶことがありますが、こうした人たちがいるのは基本的に多くの会社が不動産投資を禁止していないからです。これを禁止してしまうと相続によって不動産を取得した資産家の人を採用できないことになってしまいますし、不動産投資は多くの業務を管理会社などに外注できるので、本業への影響がそれほどないと考えられています。

こうした事情を考えると、本業以外の収入を誰にも咎められることなく得たいのであれば不動産投資が有効な選択肢であるとも言えます。