大西 勝士
フリーランスの金融ライター(AFP、2級FP技能士)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。

不動産投資で家賃収入を得たり、物件を売買したりすると確定申告が必要です。規模が大きくなれば、法人化などの節税対策も検討しなくてはなりません。不動産投資で安定した収益を得るには、税の専門家である税理士とうまく付き合うことが大切です。

今回は、不動産投資に詳しい税理士に依頼するメリット・デメリット、探し方、注意点について解説します。

そもそも税理士とは?

税理士とは、国家資格を持つ税の専門家です。納税者から依頼を受けて、主に以下の業務を行います。

■ 税務代理:確定申告、青色申告の承認申請、税務調査の立ち合いなど
■ 税務書類の作成:確定申告書、青色申告承認申請書などの作成代行
■ 税務相談:税金に関する相談業務
■ 会計業務:財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行

税理士に依頼すると、帳簿書類や確定申告、税務書類の承認申請などを代行してもらえます。また、税金についてわからないことがあれば、アドバイスを受けることも可能です。

「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」の3つは税理士の独占業務で、税理士以外の人が行うと法律違反となります。また、税理士業務に付随して会計業務も行うのが一般的です。

税理士の顧客は主に中小企業や個人事業主で、不動産投資に関する確定申告にも対応しています。

不動産投資で税理士に依頼するメリット

税理士に依頼しなくても、不動産投資を行うことは可能です。しかし、税理士に依頼することで、以下のメリットを得られます。

確定申告を任せられる

税理士に依頼すれば、不動産投資に関する確定申告を任せられます。

不動産投資の家賃収入は「不動産所得」、不動産の売却益は「譲渡所得」として確定申告が必要です。しかし、会計や税金の知識がないと、自分ですべて対応するのは難しいのではないでしょうか。

確定申告には期限があり、申告が遅れると延滞税などが課される可能性があります。また、申告内容に誤りがあれば、修正申告も必要です。税理士に依頼すれば、確定申告にかかる時間や手間を省けます。

節税対策ができる

不動産投資の確定申告を税理士に依頼すると、節税対策が可能です。税金について正しい知識がないと、経費を計上し忘れたり、税務上の制度を使わなかったりして、余分に税金を納めることになるかもしれません。税理士に依頼すれば、少しでも税金が安くなるように節税対策を行ってくれます。

不動産投資に関するアドバイスを受けられる

税理士によっては節税だけでなく、物件選びや売買タイミング、融資、法人化、相続対策など、不動産投資について幅広いアドバイスを受けられます。税理士自身が不動産投資を行っている場合は、経験に基づいたアドバイスも得られるでしょう。

税務調査に対応してもらえる

税務調査とは、確定申告の内容が正しいかどうかを税務署が調査することです。不動産投資の規模が大きくなったり、申告内容に不備があると疑われたりする場合は、税務調査が入る可能性があります。

税理士に依頼すれば、税法に基づいて確定申告書を作成してくれるので、税務調査が入るリスクが低くなります。仮に税務調査が入ったとしても、税理士が立ち会ってくれるためスムーズに対応できます。

税理士に依頼するデメリット

税理士に依頼するメリットは多いものの、以下のようなデメリットもあります。

費用がかかる

税理士に帳簿作成や確定申告を依頼すると、報酬の支払いが発生します。税理士によって金額は異なりますが、相場は年20~30万円程度です。毎月の帳簿作成は自分で行い、確定申告だけを依頼する場合は数万円で済むこともあります。

税理士に依頼する場合は、複数の事務所に見積もりをとって判断することが大切です。

能力に差がある

税理士資格を有していても、その能力には個人差があります。税理士によって得意分野が異なるため、不動産投資に詳しいとは限りません。たとえ専門知識や実績があっても、相性がよくなければ信頼関係を築くのは難しいでしょう。

税理士に依頼する場合は、能力や相性を見極める必要があります。

不動産投資に詳しい税理士の探し方

税理士に依頼したいと思っても、どうやって探したらよいかわからないかもしれません。ここでは、不動産投資に詳しい税理士の探し方を紹介します。

不動産会社に紹介してもらう

収益物件を購入した不動産会社に税理士を紹介してもらう方法です。不動産会社によっては税理士事務所と提携し、オーナーの確定申告をサポートしているケースがあります。

不動産会社の紹介であれば、不動産投資に詳しい可能性が高く、顧問契約などもスムーズに行えます。まずは不動産会社に相談し、税理士を紹介してもらえるか確認してみましょう。

不動産投資をしている友人・知人に紹介してもらう

すでに不動産投資をしている友人・知人に税理士を紹介してもらう方法です。友人・知人から事前に実績やスキル、評判などを確認できるのがメリットです。ただし、友人・知人との関係によっては、実際に税理士に会って「自分には合わない」と思っても断りづらいデメリットがあります。

インターネットで探す

インターネットで不動産投資に詳しい税理士を探すのも1つの方法です。「不動産投資 税理士 ○○(地域)」で検索すると、不動産投資の確定申告に対応している税理士のホームページが表示されます。複数の税理士をピックアップして、面談の申し込みをしてみましょう。

税理士への依頼を検討するタイミング

不動産投資で、税理士への依頼を検討するタイミングは以下の通りです。

■ 規模が大きくなってきたとき
■ 本業が忙しいとき

不動産投資の規模が大きくなり、青色申告や法人化を検討するときは税理士に依頼するタイミングです。青色申告の承認手続きを任せられ、法人化すべきか判断する際にも専門知識に基づいたアドバイスを受けられます。

また、本業が忙しくて確定申告に十分な時間を割けない場合も、税理士への依頼を検討しましょう。税金の知識がなくて確定申告が不安な場合は、最初から税理士に依頼するのが無難です。

税理士を選ぶときの注意点

不動産投資では、依頼する税理士によって成果が大きく変わってきます。ここでは、税理士を選ぶときの注意点を説明します。

対応が丁寧な税理士を選ぶ

依頼する前に必ず面談を行い、対応が丁寧な税理士を選ぶことが大切です。定期的に連絡をくれたり、質問に対して丁寧に回答してくれたりする税理士であれば、信頼関係を築きやすく、安心して依頼できるでしょう。

反対に、「対応が不親切」「説明がわかりにくい」「料金が不明瞭」という場合は、トラブルになる可能性があるので、契約は避けたほうがいいかもしれません。

任せっきりにせず自分でも経営状況を確認する

会計業務や確定申告を税理士に任せっきりにせず、自分でも経営状況を確認することも重要です。税理士は税金の専門家なので、プロとして適切な仕事をしてくれるでしょう。

しかし、不動産投資を行っているのは、あくまでも収益物件を所有しているオーナーです。税理士は、帳簿作成や確定申告を代行しているに過ぎません。税理士からのアドバイスを生かすためにも、少しずつ会計や税金の知識を身につけていきましょう。

税理士報酬と利益とのバランスに注意する

税理士に依頼するときは、税理士報酬と利益とのバランスにも注意が必要です。税理士報酬を払うことで、不動産投資の損益がマイナスになってしまっては意味がありません。

所有物件数が少なく利益が小さいうちは、勉強も兼ねて自分で確定申告をすることを検討しましょう。また、帳簿作成は自分で行い、確定申告だけを依頼して税理士報酬を安く抑える方法もあります。

まとめ

税理士に依頼すれば、帳簿作成や確定申告などの業務を任せられます。また、節税対策や法人化、物件選びなど、幅広いアドバイスを得られるのもメリットです。税理士報酬と利益とのバランスに注意しながら、不動産投資に詳しい税理士を探してみましょう。