藤山優里
防衛大学校卒、元海上自衛官。現在まで4年間、FPならびに証券外務員として約300件の保険、資産運用、転職支援の面からの総合的なライフプラン作成を行うほか、20代、フリーランスや独立を目指す方が知っておいてほしい「1,000万円以上の損を防ぐ」お金の知識を発信している。

「給料が高い」「安定している」というイメージがある「薬剤師」ですが、勤務する場所によって給与体系が大きく変わります。今回は、薬剤師の給与事情と資産運用について見ていきます。

薬剤師の年収事情

厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は20代で男性が約413万円、女性が約408万円、30代で男性が約617万円、女性が約536万円、40代で男性が約665万円、女性が約597万円、50代で男性が約687万円、女性が約570万円です。

一般企業の大卒の平均年収は30~34歳の男性が約321万円、女性が約274万円、35~39歳の男性が約373万円、女性が約301万円であり、薬剤師の給与は一般企業に勤める同年代の大卒の人よりも高いといえます。

50代で比較しても、一般企業の大卒の平均年収は50~54歳の男性が約535万円、女性が約391万円、55~59歳の男性が約522万円、女性が約382万円であり、薬剤師の給与は順調に上がっていくことがわかります。

薬剤師の年収が高いことは、他の平均的な職業と比べても明らかです。

勤務する場所で年収は大きく変わる

薬剤師が勤務する場所は、病院や調剤薬局、ドラッグストア、製薬会社などで、それぞれの平均年収は以下のとおりです。

病院:434.6万円
調剤薬局:488.3万円
ドラッグストア:512.5万円
製薬会社:543.2万円

製薬会社の年収が最も高く、病院が最も低いことがわかります。薬剤師は、最初に病院や調剤薬局に勤めて経験を積んだ後、調剤室を持つドラッグストアでキャリアアップを図るほか、製薬会社で管理薬剤師として薬剤を管理したり、新薬の品質管理や品質保証の部門で活躍したりする人もいます。すでに世の中に出回っている薬を患者に処方することから始めて、最終的に自ら調剤薬局を経営する人もいます。

薬剤師の昇給事情

薬剤師の昇給は、「転職によるキャリアアップ」や「経験による昇給」などがあります。前述のとおり薬剤師の平均年収は高いため、経験を積んでその職場の管理職となるのが昇給の一般的な手段です。

病院で思うような昇給が見込めない場合は、ドラッグストアや製薬会社に転職することで昇給を狙えます。

製薬会社の開発部門や管理薬剤師のほか、MRで業績を上げた薬剤師の中には、年収が1,000万円を超える人もいます。特に地方の管理薬剤師は需要に対して供給が少ないため、高収入が狙えます。

薬剤師が取り組める資産運用には何がある?

薬剤師が取り組める資産運用は、たくさんあります。特に管理薬剤師など年収が高い薬剤師は、資産運用の選択肢がさらに広がります。薬剤師が取り組める資産運用には、以下のようなものがあります。

・NISAやつみたてNISA
・株式投資や債券投資
・不動産投資

薬剤師は給与水準が高い上に比較的安定しているため、さまざまな資産運用が可能です。

ポートフォリオの幅が広いことが薬剤師のメリット

薬剤師の資産運用の特徴は、ポートフォリオの幅が広いことです。株式や投資信託だけでなく、不動産投資も十分可能です。安定資産をポートフォリオに組み込むことによって、リスク資産への投資が可能になるため、運用効率を高められます。収益性と安定性のバランスが取れた資産運用ができるのです。

薬剤師は不動産投資を勧められやすい

薬剤師は給与水準が高く、特に製薬会社やドラッグストアに勤務する薬剤師は社会的信用も高いといえます。そのため、さまざまな業者が薬剤師に不動産投資を勧めます。確かに薬剤師は不動産投資を始めやすい職業といえますが、安易に不動産投資を始めて失敗するケースも少なくありません。

不動産投資を始める前に、不動産投資のメリットとデメリットを正しく理解することが大切です。また、不動産投資はあくまでポートフォリオの構成要素の一つに過ぎないことを理解しておく必要があります。

不動産投資のリスクを把握しておくことが重要

不動産投資には、「老後の年金対策」「節税」「団体信用生命保険」といったメリットがあります。特に給与水準が高い薬剤師は、「節税」という部分に魅力を感じるかもしれません。

不動産投資における節税に、「赤字キャッシュフロー」を活用するものがあります。「赤字キャッシュフロー」とは、ローン返済や維持管理費と家賃収入を相殺すると「赤字」つまり持ち出しが出てしまうということです。この「持ち出し」が毎月あることで最終的に家計を苦しめるというケースも少なくないことが不動産投資の特徴です。また、修繕積立金や管理費といった「費用」も一定ではなく、年々増加していくことも特徴です。

不動産投資では、不動産の「流動性」や「売却益」も重要です。流動性が低いと、売却しようとしてもすぐに買い手がつかず、現金化に時間がかかります。また購入後一定期間は、売却すると損失が出やすいことも特徴です。

不動産投資を始めるにあたっては、メリットだけでなくリスクやデメリットも把握しておくことをおすすめします。

重要なのはポートフォリオの組み方

不動産投資には多くのメリットがありますが、デメリットもあります。不動産投資はローンを借りて行うケースが多いため、大きな負債を抱える投資といえます。土地や建物の価格は高いため、投資方法を間違えると大きな損失を抱えることもあります。

そのようなことのないように「不労所得」や「儲かる投資」という方向に走るのではなく、あくまで堅実に株式、債券、投資信託、不動産投資といった安定性と収益性のバランスの取れたポートフォリオ構築を心掛けたうえで、投資の出口戦略として「この投資はどこを目標にしているのか」という投資の目標、目的を意識して投資を行うことが重要になってくるのです。