武岡太朗
T.S.MarketingLAB
不動産ポータルサイト運営企業でマーケティングを担当していた経験を活かし、不動産市況・業界動向・エンドユーザーのトレンドについて、各種メディアでライターとして情報発信を行うほか、不動産会社のコンサル・業務課題ソリューションなども手掛ける。

投資物件を選定する際は「立地」「間取り」「設備・仕様」といったさまざまな項目を精査することが必要です。その中でも「新築・中古のどちらを投資先として選定するべきか」については、重要なポイントの一つといえるでしょう。「新築はステータスを活かして高い入居率による安定的な収益を確保できる」と考える人も多いかもしれません。

しかし投資である以上、新築物件はデメリットがあることも把握したうえで判断することが必要です。この記事では、投資型新築マンションに投資する際のメリット・デメリットを列挙し投資型新築マンションを検討する際の注意点について解説します。
   

新築マンションに投資するメリット

高い入居率

新築物件は、その時々の入居者のニーズやトレンドに合わせた最新の仕様・設備を備えているため、入居者の集客がしやすい点はメリットです。近年の新築物件では、オートロックはもはや必須で防犯カメラや宅配ボックス、中にはIoT関連設備を完備した物件も増えてきています。日本では、長いこと新築信仰が定着していることもあり築年数が浅い物件に人気が集中する傾向です。

そのため立地によって変動する部分はあるものの新築のほうが空室リスクとしては低く収支を安定させる効果が高いといえるでしょう。

ローン審査の担保評価が高い

新築マンションは、中古マンションよりも耐用年数が長く賃貸需要が高いとみなされることが多いため、金融機関のローン審査における担保評価が高くなる傾向です。そのため「低金利で融資が受けられる」「借入可能額が増額される」など有利な融資条件で借り入れすることが期待できます。融資金額の増額により準備する自己資金を減らせるため、手元により多くの資金を残すことが可能です。

不動産投資は、想定外のリスクが潜んでいるため、万が一に備えて手元資金に余裕があったほうがよいでしょう。

税効果が高い

新築マンションの購入は、一定の要件を満たすと確定申告時に「不動産物件にかかる経費の申告」によって節税効果を得ることが可能です。その場合、投資用新築マンションを購入する際の費用(借入金利子や物件の管理費用、減価償却費など)を経費とすることができ給与所得と損益通算することで税金の還付を受けることができます。特に新築の場合は、耐用年数が中古物件よりも長いです。

減価償却費の計上を長期間にわたって行うことができるため、節税効果は中古マンションよりも大きくなります。

修繕・メンテナンス費用が少なくすむ

新築マンションの場合、購入してしばらくの期間は、修繕やメンテナンスの費用はほとんどかかりません。一方で中古マンションの場合は、物件によっては購入してすぐに修繕やメンテナンスが必要になるケースがあります。そのため入居率の動向や入居者の要望に合わせて設備・仕様の更新やリフォームを行う費用なども含めておくことが必要です。

新築マンションの場合、運用を開始してから数年間は大規模な修繕やリフォーム費用など経費はほとんどかからないため、収支面で有利といえるでしょう。

売却のしやすさ

投資戦略の見直しなどで投資物件を売却する場合、新築マンションのほうが中古マンションよりも売却がしやすい傾向にあります。なぜなら新築と中古を比較した場合、所有期間が同じであれば新築マンションのほうが築浅で良い状態を保ちやすいからです。売却時に引き合いのある物件となるには「日ごろから管理状況のチェックを怠らない」「同じエリアの類似物件の売却動向をチェックする」などの準備が欠かせません。

新築マンションに投資するデメリット

取得価格が高い

新築マンションは、立地などの条件が同じであれば中古マンションよりも取得価格が高くなる傾向にあります。そのためローンの借入額は大きくなりがちです。毎月の返済負担が大きくなるだけでなく金利上昇時の影響も受けやすくなるため注意しておきましょう。またローンの残債が不動産の資産価値を上回っている(オーバーローン)場合、当該不動産の売却や借り換えなどは難しくなります。

新築マンションの購入は、中古よりもオーバーローンになりやすいため、「いざというときに売却できない」というリスクがあるのです。新築マンションのメリットとデメリットをしっかりと見極めたうえでリスクをどのように位置づけるかが重要になります。

価格の下落幅が大きい

マンションの価格は、経年により下落していきますが新築マンションは特にその下落幅が大きい傾向にあります。なぜなら「新築物件の人気が高いことを理由に販売価格を高めに設定している」「人件費・各種プロモーション費用などを上乗せしている」といったことがあるからです。「上乗せ分」は、入居後中古マンションになった途端に消失してしまう価格・価値といわれています。

そのため新築マンションはより下落幅が大きくなる傾向です。

収支のシミュレーションが立てづらい

新築マンションには、賃貸物件としての運用実績や入居実績がありません。そのため投資戦略の策定はほぼすべてシミュレーション頼みとなります。中古マンションであれば過去の入居実績(賃料・入退去など)を参考にすることが可能です。しかし新築マンションの場合は、周辺の類似物件の例を参考にシミュレーションを行います。

不動産投資において収支のシミュレーションは、投資戦略の策定になくてはならないもののため、この精度が成否に影響を与えると言っても過言ではありません。とりわけ地縁のない場所や新築マンション投資が初めての人には、リスクとなる可能性が高くなるため注意が必要です。

まとめ

ここまで投資型新築マンションに投資する際のメリット・デメリットについて解説してきました。新築マンションの主なメリットは、以下の5つです。

・ 高い入居率
・ ローン資産の担保評価が高い
・ 節税効果が高い
・ 修繕・メンテナンス費用が少なくすむ
・ 売却のしやすさ

一方で新築マンションの主なデメリットは、以下の3つが挙げられます。

・ 取得価格が高い
・ 価格の下落幅が大きい
・ 収支のシミュレーションが立てづらい

これらを踏まえて新築マンション投資を検討する際のポイントを以下にまとめます。

新築マンション投資を検討する際のポイント

・新築/中古だけで選ばない
新築マンションのほうが表面利回りなどとしては良いケースもあります。また新しい設備・仕様は、入居率を確保するうえで頼もしい味方に見えるかもしれません。しかしこれらのメリットだけで投資判断を行うことはバランスに欠けており長期的な視点で安定的に収益を得る体制を構築するためには不十分です。

物件所在地が「どういったエリアなのか」「想定される入居者はどういった属性の人なのか」といったマーケティング視点での検証を行ったうえで適切な物件を検討する必要があります。

・不動産のプロに相談する
例えば職住近接の居住ニーズが高い入居者であれば設備・仕様の過度な充実ではなく駅徒歩や交通アクセスの良し悪し、周辺の商業施設の充実度などが入居の決め手になるかもしれません。こういったマーケティング視点での市場調査は、経験がモノを言うため、そのマーケットを知り尽くした不動産会社にアドバイスを仰ぐことが重要です。

マーケットを知り尽くしているだけでなく効率よく情報収集しデータや過去の事例などを踏まえて不動産投資戦略に適切なアドバイスを与えてくれることが期待できるでしょう。まずは、セミナーや相談会に参加して最適な不動産会社・担当者を見つけるところから始めてみてはいかがでしょうか。