大西 勝士
フリーランスの金融ライター(AFP、2級FP技能士)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。

不動産投資は、長期にわたって家賃収入を得られることが魅力の一つです。一方で詐欺や不正融資、入居者の迷惑行為といったトラブルに見舞われるリスクもあります。トラブルを回避・解決する「トラブルシューティング力」は、どのように身につければよいのでしょうか。今回は、不動産投資のトラブルを回避・解決する方法や主な相談先について解説します。

不動産投資で発生する主なトラブル

国民生活センターによると、投資用マンションに関する相談件数(2018年)は1,350件、そのうち20歳代は405件で実際に契約してしまってからの相談が多い傾向にあります。不動産投資で失敗しないためにどんなトラブルが発生しているかを確認していきましょう。

不動産投資詐欺

不動産投資においては、一部の業者で詐欺行為が行われています。代表的な手口は、以下の3つです。

■ 手付金詐欺
■ 二重譲渡詐欺
■ 満室詐欺

・手付金詐欺
物件購入のために支払った手付金を持ち逃げされる詐欺です。「問い合わせが増えているから手付金を払っておいたほうがいい」などと説明した後、手付金を払うと連絡が取れなくなるケースが多く物件も手に入りません。

・二重譲渡詐欺
一つの物件を複数人に販売する詐欺です。売却済といった事実を説明せず他の購入希望者へ同様に販売します。先に不動産登記をした人が実際の所有者となるため、他の人は所有者となれず支払った売却代金は返ってきません。

・満室詐欺
一時的に身内や社員などのサクラを対象物件へ入居させて満室のように装う詐欺です。物件購入後に退去が発生しほとんどが空室の物件となってしまいます。

これらの不動産投資詐欺を回避するには、不動産投資に関する知識を身につけたうえで信頼できる不動産会社を選ぶことが必要です。

サブリース契約

サブリース契約とは、サブリース会社がマンションなどの収益不動産を一括して借り上げる契約です。サブリース会社が一定の賃料を保証してくれるため、空室リスクを回避できるのがメリット。ただしサブリースは、以下のようなトラブルが多発しているため、注意が必要です。

■ 保証賃料を減額された
■ 契約期間中に契約を解除された
■ 修繕費を請求された

例えば「30年一括借り上げ」とうたわれていても契約書でサブリース会社から解約できる内容が記載されている場合、契約時の賃料が30年間保証されるとは限りません。不動産投資で失敗しないためには、サブリースを利用しなくても賃貸経営が成り立つ物件に投資するのが理想といえるでしょう。

不正融資

金融機関が融資審査を通すために不動産会社が自己資金のない購入希望者の預金通帳残高や源泉徴収票を改ざんする不正行為も問題となりました。また金融機関が融資条件としてカードローンや定期預金などの抱き合わせ販売をしていた事例もあったのです。融資を利用して収益不動産を取得する場合は、不動産会社任せにせず融資金額や融資内容を金融機関にしっかりと確認するようにしましょう。

購入物件の瑕疵

築年数が古い物件や適切なメンテナンスが行われていない物件を購入すると設備の故障や修繕によってまとまった出費がかかることがあります。不動産売買には、契約不適合責任(民法改正前の瑕疵担保責任)があるため、引き渡された土地や建物が契約内容に適合していなければ損害賠償などを請求することは可能です。

ただし原則として不適合を知った日から1年以内に通知する必要があり手続きには時間や手間がかかります。購入時に物件の状態を確認し瑕疵のない物件を取得できるのが理想です。

入居者の迷惑行為

不動産投資では、入居者が迷惑行為をする可能性もあります。例えば家賃を滞納された場合、オーナーとしては安定した利益を確保できず賃貸経営に支障を来しかねません。また騒音やゴミ出しなどのトラブルが発生した場合は、他の入居者の退去や空室の長期化につながる恐れがあります。入居者の迷惑行為を防ぐには、入居前の審査でしっかりと精査することが必要です。

もし迷惑行為があった場合は、賃貸管理会社を通じて早期に対応するようにしましょう。

不動産投資でトラブルを回避・解決する方法と考え方

不動産投資でトラブルを回避するには、どんなことに注意し実際にトラブルが発生したらどのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、不動産投資でトラブルを回避・解決する方法と考え方を紹介します。

不動産投資の基礎知識を身につける

不動産投資を始める前に、まず基礎知識を身につけることが大切です。基本的なルールが分からないとトラブルを回避したり解決したりすることは難しいでしょう。正しい知識を身につけることで詐欺やトラブルを事前に回避することが期待できます。また実際にトラブルが発生しても周囲と相談しながら解決することが可能です。

不動産投資の書籍を読んだり不動産会社のセミナーに参加したりして基礎知識を身につけてから業者選びや物件探しに取り組みましょう。

先輩オーナーの体験談を聞く

不動産投資をしている友人・知人がいる場合、可能であれば体験談を聞いてみましょう。「どのように不動産会社や物件を探したか」「どんなトラブルが発生してどのように対処したか」といった先輩オーナーの話は、これから不動産投資を始めるうえで参考になるはずです。ただし不動産会社からの紹介料を目的に強引な勧誘にあう可能性もゼロではないため、相談相手は慎重に選びましょう。

信頼できる不動産会社を選ぶ

不動産投資のトラブルを回避・解決するには、信頼できる不動産会社を選ぶことも重要です。インターネットを利用して創業年や管理戸数、入居率といった実績、セミナーの評判などを確認し気になる不動産会社があれば担当者と面談してみましょう。質問しても説明があいまいで契約を急がせるような不動産会社の場合、購入後にトラブルとなる可能性があるため、要注意です。

複数の不動産会社にアプローチし実績や担当者の対応などを十分に比較して自分にあった不動産会社を見極めましょう。

購入物件は現地に行って確認する

不動産会社から紹介された物件を購入するときは、契約前に現地に行って物件を確認することが大切です。物件情報を見てよい物件と感じても実際に見るとイメージが異なることも少なくありません。オーナーチェンジ物件の場合、室内に入れませんが共有部分から物件の管理状態を確認することは可能です。また最寄り駅から物件まで歩いてみることで周辺環境や最寄り駅までの所要時間などを把握できます。

不動産会社が提示する物件情報だけを鵜呑みにせず必ず自分の目で対象物件や周辺環境を確かめるよう心がけましょう。

契約書や重要事項説明書の内容を確認する

収益不動産の売買契約を締結するときは、宅地建物取引士が契約内容や重要事項説明書の内容を説明してくれます。説明の際は、宅地建物取引士証の提示が義務付けられているため、必ず確認しましょう。説明された内容に不明点や疑問点があれば遠慮せずに質問して解決しておくことも大切です。特にリスクの内容や契約解除の方法について確認しておくとトラブル回避・解決に役立ちます。

不動産投資でトラブルに巻き込まれたときの相談先

不動産投資でトラブルに巻き込まれてしまったときは、以下の相談先に速やかに相談しましょう。

免許行政庁

国土交通省の通達では「何度も電話を掛けてくる」「強引に契約を迫られる」といった悪質な勧誘を受けた場合、免許行政庁へ連絡するように促しています。相談する際、スムーズに伝達できるよう以下のような内容を記録しておくと安心です。

・ 勧誘を受けた日時
・ 会社名
・ 担当者名
・ 具体的な状況など

相談内容によっては、宅地建物取引業法に基づいて行政処分や指導が行われる可能性があります。

消費生活センター

消費生活センターでは、商品やサービスなど消費生活全般に関する相談を受け付けています。消費者ホットライン「188」に連絡すれば不動産投資に関するトラブルの相談も対応可能。また各都道府県に設置されている消費生活センターに相談することもできます。

金融サービス利用者相談室

金融サービス利用者相談室は、金融庁が提供している金融サービスの専門相談窓口です。あっせんや仲介、調停には対応していませんが論点整理や他の金融機関の紹介といったアドバイスを受けられます。不動産投資で金融機関の融資を利用するときに何らかのトラブルが発生した場合は、こちらの窓口に相談するといいでしょう。

宅地建物取引業協会

宅地建物取引業協会は、宅地建物取引業を営む不動産会社が加入できる協会です。宅地建物取引業協会では、加入する不動産会社が行った取引の苦情解決を目的に相談を受け付けています。物件購入時にトラブルが発生した場合に相談窓口の一つとして利用可能です。

弁護士

不動産投資でトラブルに巻き込まれた場合は、法律の専門家である弁護士に相談する方法もあります。自分で弁護士を探すのが難しい場合は「法テラス」を利用すると便利です。法テラスは、国によって設立された法的トラブル解決のための総合案内所のため、相談内容から適切な相談先や法制度に関する情報提供を無料で受けることができます。

不動産投資の基礎知識とトラブルシューティング力の習得で不動産投資を始めよう

不動産投資でトラブルを回避するには、基礎知識を習得して信頼できる不動産会社を見極めることが大切です。またトラブルの際の相談先を知っておくことでトラブルが発生しても周囲の協力を得て解決することが期待できます。不動産投資で失敗しないために物件の目利きだけでなくトラブルシューティング力も身につけましょう。