本間貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自主管理で賃貸経営をする不動産投資家の顔も持つ。

不動産投資において高所得者は一般のビジネスパーソンに比べて投資環境としては有利ですが失敗してしまう人も少なくありません。高所得者で不動産投資に失敗してしまう人には、典型的なパターンがあります。本記事では、5つの失敗パターンを紹介します。先輩投資家の失敗から学ぶことでマンション経営の成功確率を高めましょう。

なぜ、高所得者は不動産投資で有利なのか

マンション経営などの不動産投資は、高収入の人と相性のよい投資方法といわれています。なぜなら「給与の高い会社に勤めている」「士業に就いている」といった高所得者は、金融機関の信用評価が高いからです。不動産投資をはじめるときは、収益物件の購入費用の大半をローンでまかなうのが一般的といえるでしょう。

高所得者は、信用評価が高いため「大きな融資枠を利用しやすく低金利で借りやすい」というアドバンテージがあるのが強みです。そのため一般ビジネスパーソンではなかなか手の届かない東京都心などの好立地物件を購入・運用することが可能になります。このように高収入だと圧倒的に有利なのが不動産投資の世界なのです。

高所得者が不動産投資で失敗する5つのパターン

高所得者というアドバンテージがあるにもかかわらず不動産投資で失敗する人は後を絶ちません。そこには以下のような5つの失敗パターンがあります。

失敗パターン1:物件選定を業者に丸投げする

不動産投資は、手間のかからない資産運用といわれています。なぜなら運用(入居者管理・物件管理)を管理会社にアウトソースできるからです。オーナーの業務は、家賃の入金や管理会社の報告を時々チェックするくらいで済みます。ただしいくら不動産投資は手間がかからないといっても収益物件選びは業者任せにするべきではありません。

収益物件のセレクトは不動産会社にお願いしても「対象物件を購入するか否か」はオーナー自身が判断するべきです。収益物件選びを業者に丸投げする理由として「素人だから不動産のことはよく分からない」ということがあります。しかし第1に不動産投資のことが分からないうちは手を出すべきではありません。ウェブメディアや本などを通して不動産投資の基本を勉強してみましょう。

第2に仮に不動産の専門知識が足りなくても現地訪問すれば「多くの人がそこに住みたいか」は容易に判断できるはずです。高所得者に限らず不動産投資で失敗している人は現地訪問していないケースが目立ちます。例えば日経アーキテクチャーのインタビュー記事で2018年に世間を騒がせた「かぼちゃの馬車のオーナー(当時)」は、「購入に際して実際に現地を見ていない方もいます」と答えています。

収益物件(立地)を確認せずに千万円単位、億単位のお金を投下すれば破綻リスクがあるのは当然です。

失敗パターン2:相場を確認していない

「不動産投資 高値づかみ 失敗」のようなキーワードでネットを検索すると続々と失敗体験が表示されます。高値つかみは後から修正できません。絶対に避けたい失敗パターンです。高値づかみをしないためには「対象の不動産の相場を調べること」が効果的といえます。もし相場に比べて割高の場合、新築物件であれば価格交渉したり中古物件であれば相場に近い指し値を入れたりするべきです。

交渉が決裂したら撤退して相場で手に入る収益物件を探しましょう。ここで注意したいのは、掘り出しもの価格ではなく「相場価格にこだわるべき」ということです。不動産投資は人気が高まっているため、掘り出しものはそうそうありません。あくまでも相場で仕入れることを意識しましょう。

失敗パターン3:複数のローン金利を比較しない

不動産投資の成功のためには「ローン金利」も重要です。同じ収益物件でも金利が変われば当然ながらキャッシュフローが変わってきます。たとえ節税目的で不動産投資をする場合も低金利でローンを組むことを意識するべきです。決して「所得税の節税目的の不動産投資だからいくら損をしても構わない」ということではありません。

あくまでも健全経営をしながら節税できるのが理想的なスキームです。少しでも低金利で不動産投資をするには、複数の金融機関の金利比較が欠かせません。不動産会社であれば複数の金融機関と提携していることが多いので紹介してもらいましょう。紹介してもらった金融機関の金利に納得できないときは自身で開拓する手もあります。

ただし初心者には難易度が高いので不動産会社に紹介してもらうのが無難です。

失敗パターン4:経営シミュレーションをしていない

「節税」「私的年金づくり」「生命保険代わり」など不動産投資の目的は多岐にわたります。どの目的ではじめる場合でも「実際にどれくらい効果があるか」をシミュレーションすることが大切です。しかし不動産投資のシミュレーションは一般の人には難しいため、収益物件を扱う不動産会社に目的に応じたものを作成してもらいましょう。

・所得税の節税が目的

「どれくらいの節税が可能なのか」の具体的な額を不動産会社に計算してもらってください。1年目だけでなく2年目以降の節税額も提示してもらうと安心です。

・私的年金づくりが目的

将来の家賃下落率を織り込んだリアルな家賃収入を計算してもらいそこから諸経費や税金を除いたキャッシュフローを計算してもらいましょう。

・生命保険代わりが目的

現在の生命保険を解約したときに「どれくらい余力が生まれるか」について確認しましょう。

いずれにしてもこれらのシミュレーションはただ出してもらうのではなく疑問点があれば必ず確認してください。なぜなら業者側に都合のよいシミュレーションになっている可能性があるからです。

失敗パターン5:規模拡大を一気に狙う

高所得者は、金融機関の融資枠が大きい分、不動産投資の経営規模を拡大しやすいメリットもあります。しかし無計画に規模拡大をしていけばどこかで経営が行き詰まる可能性もあります。具体例としては、「空室リスクの高い収益物件」「相場よりも割高で購入した収益物件」などを数多く所有しているようなパターンです。

このような資産を逆に減らすような収益物件を数多く所有していると売却しようとしても多額の借金が残る結果になりかねません。あくまでも家賃収入を安定して得られる好立地の収益物件を相場価格で仕入れることで不動産投資のメリットが活きてくるのです。経営規模を拡大したい場合は、信頼できるビジネスパートナーとなる不動産会社を見つけましょう。

そのアドバイスに基づきながらリスクの少ない収益物件を着実に買い増していくのが理想です。

5つのパターンのうち特に避けるべきは?

ここでは、不動産投資で失敗する5つのパターンを解説してきました。どれも避けるべきですが特に重要なのは1つ目の「物件選定を業者に丸投げする」と2つ目の「相場を確認していない」です。しかも丸投げする人に限って相場を調べていないケースも少なくありません。「そんな適当な人がいるのだろうか」と感じる初心者もいるかもしれませんが実際にこのパターンは目立ちます。

高所得者は多忙な人が多いため「つい他人任せにしてしまった」ということが起きやすいのです。物件選定や相場、金利の確認をしっかりと行っておけば手間をかけずに資産形成ができる不動産投資のメリットを享受できます。この部分だけは、投資家自身が主体的になってしっかりと精査しておきましょう。