今回の新型コロナウイルス感染拡大により在宅勤務が増えた人は多いでしょう。在宅勤務に伴いパソコンや机、テレワーク用のWebカメラなどを新しく購入したり仕事に役立つ資格取得を始めたりした人も多いかもしれません。これらのパソコンなどの購入や資格取得の費用については、給与所得者であっても必要経費として認められるのでしょうか。

給与所得者の特定支出控除とは?

給与所得者の特定支出控除とは?メリットや注意点も合わせて解説
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

給与所得者の特定支出控除とは、以下の金額を超える部分の金額については給与所得控除額に加算することができます。

  • 給与所得者が勤務するために必要な通勤費や図書費など特定の支出で年中の額の合計額が給与所得控除額の2分の1を超える場合

ただし2020年からは以下のように給与所得控除額の変更があるため注意が必要です。

  • 給与所得控除額が10万円引き下げられる
  • 給与所得控除の上限が220万円から195万円に引き下げられる

給与所得控除額の引き下げが特定支出控除を利用する際に有利に働くことになります。例えば2019年までは220万円の2分の1、つまり110万円を超えなければ特定支出控除の適用を受けることはできませんでしたが、2020年からは195万円の2分の1となる97万5,000円を超えれば適用を受けることが可能です。

特定支出控除の対象となる支出費用項目とは?

特定支出とは、資格取得費や図書費、洋服代や交際費などが該当します。詳細については以下の通りです。

  • 通常必要であると認められる通勤のための支出
  • 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出のうち一定のもの
  • 勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅費
  • 勤務に直接必要な知識や資格を得るための研修費
  • 勤務に直接必要な資格の取得費用(弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの資格取得費を含む)
  • 単身赴任などの場合で、その人の勤務地または居所と自宅の旅行のために通常必要な支出のうち一定のもの(帰宅回数の制限なし)
  • 職務と関連のある図書の購入費、職場で着用する衣服費、職務に通常必要な交際費などの勤務必要経費(ただし65万円を限度とする)

控除の適用を受ける際のメリット

例えば2020年における勤務に関する支出が以下の通りだったとします。

支出内容 金額
パソコンなどの備品購入費用(机や椅子も含む) 50万円
消耗品費(文房具など) 5,000円
在宅勤務における水道光熱費および通信費(家事の費用と案分済み) 5,000円
インターネット有料記事購入費用 1万5,000円
通信制の資格取得費用(入学金および初年度学費) 150万円

また給与収入が1,000万円だった場合における税負担を比較してみましょう。計算における社会保険料控除については150万円とし生命保険料控除については最高額を適用するものとします。また住民税の税率については10%と仮定して計算します。

2019年の所得税および住民税

項目 計算 金額
給与所得 1,000万円-220万円(所得控除) 780万円
所得税の課税対象額 780万円(給与所得)-150万円(社会保険料控除)-12万円(生命保険料控除)-38万円(基礎控除) 580万円
2019年における所得税額 580万円×20%-42万7,500円 73万2,500円
住民税の課税対象額 780万円(給与所得)-150万円(社会保険料控除)-7万円(生命保険料控除)-33万円(基礎控除) 590万円
2019年における住民税額 590万円×10% 59万円
2019年の所得税および住民税合計額 所得税73万2,500円+住民税59万円 132万2,500円

2020年の所得税および住民税(特定支出控除の適用を受けなかった場合)

項目 計算 金額
給与所得 1,000万円-195万円(所得控除) 805万円
所得税の課税対象額 所得税の課税対象額:805万円(給与所得)-150万円(社会保険料控除)-12万円(生命保険料控除)-48万円(基礎控除) 595万円
2020年における所得税額 595万円×20%-42万7,500円 76万2,500円
住民税の課税対象額 805万円(給与所得)-150万円(社会保険料控除)-7万円(生命保険料控除)-43万円(基礎控除) 605万円
2020年における住民税額 605万円×10% 60万5,000円
2020年の所得税および住民税合計額(特定支出控除の適用なし) 所得税76万2,500円+住民税60万5,000円 136万7,500円

2020年の所得税および住民税(特定支出控除の適用を受けた場合)

項目 計算 金額
給与所得 1,000万円-195万円(所得控除)-(151万5,000円-(195万円×2分の1))(特定支出控除) 751万円
所得税の課税対象額 751万円(給与所得)-150万円(社会保険料控除)-12万円(生命保険料控除)-48万円(基礎控除) 541万円
2020年における所得税額 541万円×20%-42万7,500円 65万4,500円
住民税の課税対象額 751万円(給与所得)-150万円(社会保険料控除)-7万円(生命保険料控除)-43万円(基礎控除) 551万円
2020年における住民税額 551万円×10% 55万1,000円
2020年の所得税および住民税合計額(特定支出控除の適用あり) 所得税65万4,500円+住民税55万1,000円 120万5,500円

給与所得控除額の引き下げにより2020年の所得税および住民税額の合計は2019年と比べて4万5,000円の増税となります。しかし特定支出控除の適用を受けることで適用しない場合に比べて16万2,000円の減税です。また2019年の所得税および住民税額の合計よりも11万7,000円少なくなることが分かります。

控除の適用を受ける際の注意点

給与所得者の特定支出控除の適用を受ける際には、配偶者控除および配偶者特別控除額に影響を及ぼすことに注意する必要があります。例えば配偶者の合計所得金額が133万円以下のとき「配偶者控除および配偶者特別控除の適用を受けることができるかどうか」「その控除額はいくらになるのか」を判断する場合、夫の合計所得金額が関係してくるのです。

その際の配偶者控除および配偶者特別控除の金額については、特定支出控除の適用がある場合、特定支出控除額を差し引いた夫の合計所得金額で判定することになります。特に2020年は所得金額調整控除(子どもなど)が創設され子育て世帯などにおいて増税にならないための配慮として以下の人には、給与所得から「(給与収入金額-850万円)×10%」(ただし1,000万円を上限とする)が控除されます。

  • 本人が特別障害者
  • 年齢23歳未満の扶養親族を有する人
  • 特別障害者である同一生計配偶者や扶養親族を有する人

給与収入が850万円を超えても税負担が変わらないよう調整されているのです。そのため特定支出控除の適用を受ける際には所得金額調整も加えたうえで判定するため、配偶者控除および配偶者特別控除額の適用の有無、控除額の計算には細心の注意が必要となります。さらに特定支出控除の適用を受けるためには確定申告を行うことが必要です。

また特定支出については給与の支払者が証明したものに限られます。そのため勤務先の会社が認めてくれない場合については、特定支出控除を受けることができないことにも注意が必要です。特定支出控除の適用を受けようと思った際には、事前に会社に対して費用として認められるかどうか、確認しておくとよいでしょう。

確定申告の際には「給与の支払者の証明書」と「特定支出に関する明細書」を申告書に添付し支出した金額を証明する領収書なども合わせて添付することが必要です。そのため購入の際の領収書は確実に保管しておくようにしましょう。もしクレジットカードで購入した場合は、クレジットカード利用伝票やレシート(※)、利用明細書についても合わせて保管しておくことをおすすめします。

※「発行者」「購入内容」「購入金額」「購入日時」などの詳細が記載されているもの

新型コロナウイルス感染拡大による自粛期間、そしてそれが終わった後も依然として収束の兆しが見えないことから、在宅勤務やテレワークなどの働き方の変化もしばらくは続いていくことでしょう。またIT環境の急速な発展に伴いさらなる支出も予想されます。給与所得者における特定支出控除については、通常はそのような支出について会社が用意してくれることから経費という観念がありません。

そのため重視されていなかった経緯があります。しかし今後の働き方そしてそれに伴う自宅での環境整備の必要性によっては適用を考えてみてもいいかもしれません。その際には上述した注意点をしっかりと理解し「どれくらいのタックスメリットがあるのか」を事前にシミュレーションしたうえで適用を受け確定申告を行うようにしてください。

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